スポ根魔法
ふかふかになった寝床に満足したモモは、それはもうぐっすりとおねんねしてくれた。お股おっぴろげて後ろ足がピクピクしてるのを見つけた時には、もうー…
悶絶した。
大きくなって可愛さ百倍増しである。鼻血出るかと思った。スマホがあったらムービー撮ったのに…!なんで散歩中に来ちゃったんだろう…!神様の仕業か知らないけど神様の意地悪!…違ったら、ごめんなさいだけど。
相変わらず美味しい朝食をいただいた後は、ジルコットさんとミアさんを除いた三人によるー…戦闘訓練である。二人は従魔騎士団の仕事で留守なのだ。何をしてるかは、少しでも戦えるようになってから教えてもらう事になっている。
さぁ、気合い入れて頑張るぞーっ!今日はみんな従魔を連れているから私もやる気いっぱいだ!
「さて、昨日弓を買っているが…先に魔法訓練をしようと思う!」
「え、そうなんですか?てっきり弓からかと…」
「いやなに、お前は戦う必要のない場所で生きてたんだろう?先に魔法で守りを固めた方がいいんじゃないかって、ベルがな!」
団長の隣でピースするベルさんが菩薩か何かに見えた。もうっ、ベルさん…!どこまで優しいんですか!
「そういう事っス!魔法が使えりゃ守りが出来る…仮に弓が使えなくてもなんとかなるっス」
「魔法が使えなかったら、嫌でも弓は練習しなきゃいけないから…その場合は僕がしっかり見るからね!」
私は喜んでその提案を受け入れた。…使えれば、いいんだけれど。
「まずー…魔法をどうやって使うか、知ってるか?」
「いいえ、…実は、見た事もなくて」
「おっ、そうか!ならいっちょ俺が見せるか!」
腕をブンブン回しはじめた団長にビビり一歩下がれば、いつの間にか隣にいたらしいオッド君がボソッと。
「ガイリス団長、脳筋だけどうちで一番魔力量が多くていろんな魔法が使えるんだ」
なるほど、本当に戦闘に特化した人なのね。ただの脳筋じゃないのね。
「よーく見てろよ」
団長が人差し指を空に向ける。
「火球」
ボッ!と指の先端に火が灯り、ユラユラと揺らめいた。蝋燭程の炎だが、何もないところから火が出るなんて……これが、魔法…!
「危ないから威力は一番小さくしたが、もっとでかいのも出せるぞ!そして俺はこれを投げる!」
「…えっ!結果物理なんですか?!」
「対象に向かって放つのが普通だが俺は、投げる。その方がよく当たるんだよなぁ」
身震いする。あのムキムキの腕が投げる火の玉……いや普通に怖い!何この人!やっぱり脳筋だったわ!
「団長は特殊っスから。普通は、発動したい方向に手を向ける。そして詠唱する。込めた魔力量によって威力も変わるんス」
「魔力は身体中を巡っているから、それを手に集めるイメージをすると発動させやすいんだ。魔力を扱うのが上手い人は見た先に発動させる事が出来るんだよ」
「ちなみに詠唱がなくても出来る人もいる。だが集中力がいるから、俺は出来ない!声に出せば絶対だからな!」
みんなの言ってる事は理解出来るのだが、いざやるとなると怖い。魔力量なんてわからないし、もしすごいのが出ちゃったら大変な事になってしまう。
「んで属性だな。発動出来りゃ適正があり、出来なきゃない。簡単だろ?やってみろ」
「ちょ、そんないきなり無理ですよ!大体詠唱って、」
「ん?んなの適当だよ、決まった言葉なんてないからな。自分のイメージしやすいものが好ましいが、…たまに無駄に長くかっこつけた事を言う奴もいる。あれはオススメしないな、隙だらけだ」
団長はとことん無駄を省きたいらしい。
しかし、そうか…大体わかった。イメージしやすい言葉が良いなら、単純に小さい火、とかでもいいわけだ。ちょっと…いやかなりダサいけど。
いずれ自分の中でのイメージが固まれば言葉は変えれるだろう。
「…小さい、火」
手の平を上に向け、ただそこを見つめる。すると足の爪先から頭のてっぺんにまで暖かい何かを感じた。ぼわぁってする。これが魔力かな?
集まれー、集まれー、と念じていればやがて手の平に現れた小さな火に、私は感動して涙が出そうになった。
「出たっ…!出ましたよ、火!!!」
「…………うん、出たは…出たなぁ」
「小さすぎっスけどね」
それは自分でも思いました。小さすぎてパチンコ玉のようだ。でも出ただけすごいじゃないか!それに確かに火なのに熱くない!すごい!
「ま、まぁ、魔法は魔力量とイメージが大事だし…イメージ出来ても、自分の許容量を越えれば発動しないから」
「そうっス。だからもっと大きくても多分大丈夫っスよ」
「そ、そうですか。わかりました。ちなみになんで熱くないんですかね?」
「自分の魔力が元っスからね。手元を離れるまでは熱くないっスよ」
という事は、離れたら熱いわけだ。それは当然か。とりあえず炎属性はあったから、良しとしよう…うん。
その後三人に指導されながら適正属性をチェックした結果、私が使えるのは五属性。炎、雷、水、風、土だった。聞けば聖、闇、無は希少だそうで、国内でも使える人は僅かだそうだ。
五属性も使えるとなって私は喜んだのだがみんなは微妙な表情に。何故かというと、
属性が多いとあれもこれもと欲張りになり、大技ばかりを使ってしまう傾向にあるそうだ。その結果魔力が枯渇し何も出来なくなる、という人が多い。
戦闘中に自分の魔力量を考えながら戦える程器用な人間は、全員魔術師団にいるそうだ。あぁ、なるほど…私そんなに器用そうには見えないしね…事実だけど。
「ちなみに団長は炎、雷、風、土の四属性。それで雷属性だけの俺と常に同威力が出せるっス。意外と器用なんスよ、この人。魔力量も馬鹿みたいに多いし」
「僕は風、水、土だけど、やっぱり団長程の威力は…」
「なるほど…魔力量の把握と調節が大事なんですね」
そういうわけだ!といきなり団長に肩を組まれ思わずよろける。うっ、見せかけじゃない筋肉…!圧が!圧がすごい!
「今日は午前の残りで魔法連発して魔力量の把握!午後は弓の特訓に決定!」
「…えっ、そういう確認方法なんですか?!もし魔力全部なくなったら、…?!」
「死にはしない!なに、ちょっと体がだるくて動けなくなるくらいだ!自然に回復するしな!努力と根性で強くなれ!」
全然信用出来ないのは、何故だろう…。それにどっかで聞いたセリフだ。とてもじゃないが魔法の訓練とは思えない。
けれどこうなったらやるしかない。努力なくして強くはなれない。私はそこまで天才ではないし、自惚れてもいない。
動けなくなるのは怖かったが、近くでじゃれてるもふもふ達を見てなんとかやる気を出した。やばいトトが小さすぎて超可愛っ…!




