第15話 王都へ
第二章入りました。車の表現など難しいですが頑張っています。
どんどん感想、評価お願いします。
9/17 修正
「なんもない」
異世界に来て何回なんもないと言っただろうか。それほどクルックスを出た後、動物も人も見ていない。
「まあ、クルックスの周りは殆ど草原や林といったものしかないですね」
運転席の隣の助手席に座る薄着の獣人もどきの女の子、シーナは車のシートに姿勢よく座り前方を見つめながら話す。
「王都まではとても長い距離ですので多分、三日はかかるかと思います」
「三日!?」
三日間俺はシーナと二人っきりか、悪くない。
”もう少し車のスピード落として運転してもいいかも”
そう考えながらハンドルを握り直す。
「明日にはシストに着きますね」
「シストか、どんな町?」
ヤンから貰った地図には王都に行く道の途中で確かにシストと書かれた場所があった。
”今更だが異世界の言葉も読めるし、話せているな”
ヤンキー女神の恩恵は意外とあったんだな。ヤンキー女神に感謝しているミキトにシーナがシストについて説明する。
「シストは殺人術や暗殺術、剛術、剣術、柔術など様々な格闘技の武者修行に多くの人が集まる街だと聞いた事があります」
「さ、殺人術……」
嫌な予感しかしない。
「シストには行かないでこのまま車で泊まって王都に行こうよ。その方が早く王都に行けるし、安全だし」
「え、この車の中で、ですか?いいですがミキトさんは外で寝てくださいね?」
「死んでしまう……!」
「ふふっ冗談ですよ」
絶対に死んでしまう。しかしシーナが冗談を言ってくれるなんて、初めて会った時は会話が続かなくて困ったけどそれだけ心を開いてくれたんだな。
――「ちょっと休憩しよう」
「はい」
クルックスから出発して五時間程たちクルックスを覆う林から抜け草が辛うじて存在するような平野の真ん中にミキト達はいた。
「平野、平野、地平線全て平野だ。王都はまだこの地平線の先か」
車のパワーウィンドウから顔を出し地平線を見つめるが王都は見えそうにない。
「う~んっ背中痛い~」
シーナは車のドアを開け助手席から降りて外に出る。長時間のドライブで背中が凝り固まったのだろう大きく伸びをしている。そこから膝下の丈のワンピースのスカート部分が上がる。
”おおっおお!!”
ワンピースタイプの薄い服から健康的な白い太もも裏が見えた。
何見ているんですか?」
「いえ、見てません。」
車の中からシーナの太もも裏を見ているのが気づかれミキトはとっさに目を反らし言い訳する。
「見てましたよね?見てましたよね?」
「見てません。見てません」
大事な事なので二人揃って二回言った。
「まあ、いいです」
シーナは車内の俺から目を離し砂利しか落ちていない広く広がった大地に目を向ける。
え?いいの!?いっぱい見よ。もしスマートフォンを持ってきてたら写真撮ったのに。残念だ。
いつもスマートフォンを入れているポケットにはパチンコ玉とハンドスピナー型の武器が仲良く入っている。
”このハンドスピナーのホルダーが欲しいな、一応これでも武器だし”
ポケットからハンドスピナー型の武器を引き出し指で回転させる。あの時の闘いの様に魔力が吸収されていないからか回転数は上がらず徐々に減速していった。
「それは御先祖様の武器じゃないですか!ミキトさん盗んできたんですか!?」
「ヤンから貰ったんだよ、盗んでない」
車外で外の空気を吸って休憩していたシーナが前かがみになりながら聞いてくる。ミキトの目線は問いただすようなシーナの目ではなくシーナの大きくもなく小さくもない胸に向いていた。
「見てましたよね?見てましたよね?」
「見てません。見てません」
大事な事なので二人揃って二回言った。
「今見てますよね!?」
不思議な万乳引力によって俺の目線はシーナの胸から離れられなかった。
「ごめんなさい!見てます!」
パァンッ!
高い音が水平線に轟いた。
「お菓子あげるから許して……」
「……」
助手席でむくれっ面のシーナにお菓子で示談交渉を試みる。
「今足見てますよね」
「見てない」
少しだけだ、仕方ないじゃないか、そんな薄着を着ているお前が悪い。
「お菓子で許しはしませんから、あとこっち見ないでください」
「御意」
印なしのビニール袋からお菓子を渡そうとするとビニール袋ごとシーナに奪われた。
俺の最後の食料は無くなった。
「じゃあ、出発するか」
「……」
シーナは車の外を向いてしまいこっちに顔を向けない
「仕方ない」
”フェラーリになれ!”
ミキトは強く念じフェラーリの全体像を頭の中でイメージする。
車の天井が大きく開き車幅も広がり外国仕様の為かミキトの座っていた運転席は助手席になりシーナが座っていた助手席が運転席になる。
「え?え?ミキトさん!何が起きているんですか!?」
「大丈夫、座っていろ」
初めての車の変形にシーナは驚いている。無理もない、今の状況は大きな動物の内臓の中にいる様に思える。
「きゃああああ!」
シーナの驚きが収まるのよりも早く車の変形が終わった。
「おおっ!おおおおおお!!!」
一番驚いたのはシーナではなくミキトだった。
「すごい、何だこの高級感あふれるハンドルは!」
高級感溢れるのはハンドルだけではなく座席までもが艶を出し高級感を醸し出している。車のシートもグロリアの時よりかすごく柔らかくお尻全体を優しく包み込むかのようにフィットしている。
「シーナ、これをあげるよ」
フェラーリの内装に目を奪われシーナの事を忘れていた。
”こい!ブランケット!”
ミキトはピンク色のブランケットを召喚しシーナに渡す。
「ブランケットですか?」
「それで足隠せばいいだろ」
綺麗な足を隠されるのは残念だがこれでシーナの機嫌が直ればそれでいいだろう。
「じゃあ、席変わろうか」
ミキトは助手席になった車からドアを開け車外に出る。フェラーリになったグロリアは黄色いスポーツカータイプに変形していてボディは流線を描く様なデザイン、フェラーリのバックにはマフラーが4つありフェラーリのエンブレムが中心に付いていた。
「かっけえ」
俺の愛車はグロリアだがフェラーリに浮気してしまいそうだ。
「車が変わった?変装魔法ですか?」
「変装魔法?そうそれだよ」
車が変形する理由を説明できないので話を合わせる。
「あと、ブランケット、ありがとうございます」
「どういたしまして」
シーナはミキトがプレゼントした正方形のブランケットを三角形に折って腰に巻いていた。左足は隠せているが右足は隠せていない。薄く飾り気のないワンピースタイプの服にピンクのブランケットの組み合わせは不格好だった。
”王都で服でも買ってあげるか”
流石に王都でこの服はダメだろう靴も布で巻いただけのような靴の為靴も買わなければならない。
”いや、俺も服買わないといけないな”
異世界に来てヤンに一回しか洗濯してもらっていない、心なしか自分の身体が臭い始めた。お金はヤンから貰った金貨があるので使わせていただくことにしよう。
ミキトはシーナと席を変わり運転席に着く。
ヴンッヴンッ!ヴゥゥゥンッ!!
鋭いエンジン音が唸る、12気筒のエンジンは普通の車なんか比にならない。それに加え魔力で動く、こんなの本当のモンスターマシンだ。
「シートベルトは締めたか?行こう、王都へ!」
「はい!」
ヴンッヴンッ!ヴゥゥゥンッ!!ヴゥゥゥゥゥゥゥゥンンッ!!
アクセルを軽く踏んだだけでフェラーリはどんどん加速する。
「ふおおおおおおおっ!?」
「わあああ!?」
初めての感覚に二人揃って声を上げた。




