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第14話 旅立ち

9/17 修正

――「んっ、ん~あ?」

「きゃあ!」


目が覚めると視界にシーナが映り俺を心配そうな顔で覗き込んでいて俺の頭は気持ちがいいほどシャキッとしていた。


(何かデジャヴ)


覗き込まれることに既視感を覚える。

 もしかして、ヤンの家で寝ている時誰かに起こされたような気がしたがあれはシーナだったのか?

気になったが聞いても正直には答えてくれなさそうなので違う質問をする。


「窃盗団は何とかなったのか?」

「はい、捕縛、殺害したそうです」

「さ、殺害……」


この世界は物騒だ、ヤンは大胸筋を使って殺したのかな?


窃盗団のその後をシーナの口から聞いて窃盗団の対処方法に戦慄する。


「あの……助けていただいてありがとうございました!」


話の腰を折りいきなりシーナはミキトに深々と頭を下げた。


「ど、どういたしまして」


感謝の言葉を真っ直に伝えられ、整い過ぎている顔が近くて少したじろいだ。


「体調の方は大丈夫ですか?」

「何処も怪我していないよ。それより俺の車!いや、バイクは大丈夫か!?」

「ばいくは家に運ばれてますよ」

「良かった~……ちょっと点検してくる!」

「私も行きます」


車の所在を確認し、寝かされていた体を起こしバイクの元へと向かいだすミキトにシーナも付いてくる。


「傷無いよな? 良かった!」


バイクのままの愛車はヤンの家の壁に立てかけられていた。


「このばいくカッコいいですね」

「バイクもいいが俺の愛車はグロリアなんだ」


シーナはバイクの方が好きなのかもしれないが俺は車派だ。


「グロリアに戻れ!」


バイクの車体は歪みだしガソリンタンクが真横に引き伸ばされバイクの表面積がどんどん大きくなってゆく。車体カラーは白くなりバイクの前輪と後輪は四つのタイヤとなった。

バイクから車に変形したグロリアはミキト達の前で停まっていた。


「あ~~~~ん!!やっぱり車が一番!」

「……」


愛車を愛でる時の俺はいつも変なテンションになってしまいそのテンションを隣のシーナに見られてしまった。


あ、やべ、はずかしっ


シーナの反応を見るために目線をシーナの顔に向けるとシーナは驚きの表情をしていた。


「え?え?なんでばいくが?」


そういえば変形するところを見せたの初めてだった。それは驚くよな。


「これは俺の魔術の一種さ。いろんな乗り物に変形できるんだ」

「他の乗り物にもですか!?」

「まあね、取りあえず乗ってみない?」


バイクの時は失敗に終わったが今回は助手席に座らせるくらいなので逃げてしまうことはないだろう。

ミキトは運転席のドアを開け運転席に着いた。

それに続いてシーナもミキトの座っている運転席に着いた。


「ちょっ!?おおっ!!」

「?」


柔らかい感触が太ももに当たる。


「隣の席に座るんだよ」

「え?///すみません」


正直このまま運転してもよかったがドライバーとして事故を起こしてしまうのは避けなければならない、残念だ。

シーナは隣の助手席に座り直し初めての車のシートの感触に驚いている。


「柔らかい、なにこれ」


柔らかそうなお尻を柔らかいシートの上で踊らせている。


(ありがとうございます。ありがとうございます)


大切な事なので二回言った。


「その帯を締めてもらえるかな?そこの赤い所に差すんだけど、やろうか?」

「ここですね」


カチッっと一発で決めた、シーナは器用なのかな?残念。しかし、神はいた。(※ヤンキー女神は神に含まれません)シートベルトによってシーナの薄い服が圧迫され綺麗な双丘が現れていた。


(本当にありがとうございます。)


この村は女性が多いし可愛い村長の娘とかいるしこの村で異世界を過ごそう。

 

そう心の中で決心したミキトだったが車内のラジオから出てきた声によってその決心は無に帰る。


『お~い、聞こえるよな~?』

「あ、神様、ご無沙汰しております。何か御用ですか?」


また何かの能力の通販ですか?もうお金持ってないよ(;_:)


『本当はあんたみたいなノーマル適当にそっちの世界に落としておけばいいかと思ったんだけどちょっとゲーム、いやこっちの都合であんたには働いてもらうことになったから』

「何をすればいいのでしょうか?」


俺の仕事は魔術で人を喜ばせる仕事だ!それでこの村で生きていくんだ!!


『王都に行きなさい』

「王都?ですか?」


この村に来てちょくちょく王都という単語を耳にしたのを思い出す。


『取りあえず王都に行きなさい!以上!絶対に行きなさい!』

「あの、まってください俺は『『ブツッ』』


やはり一方的にラジオは切られた。どうやら絶対に王都に行かなければならないようだ。ヤンキー女神の命は絶対、逆らえば死、あるのみ。


「ミキトさん王都に行くんですか?」

「行きたくないけどね……」


この村を離れるのはとても心苦しい、優しくしてくれたヤン、絡んできた村の子供達ガキ、そしてたわわなお姉さん、この村から離れたくない気持ちがいっぱいだった。


「私も王都に連れて行ってください!!!」

「え!?」


突然のシーナのお願いに俺は驚いた――



――「――と、いう事で王都に行きたいのですが……」


「娘さんを僕にください!!」なんて言えるわけもなく俺はヤンにツッパリ棒を初めて召喚して見せた部屋で正座していた。


「ミキトさん」

「は、はい」


重い空気が部屋に充満していて呼吸するのが辛い。拍動が強くなっているのが分かった。


「あなたには御先祖様の武器を扱えました、きっと何か意味があるのでしょう。祖父が生きていればあの武器の事を詳しく話せたのですが…」


ヤンはシーナの王都へ行くという主張の否定でなく御先祖様の武器について話し始めた。


「祖父は御先祖様の武器について長年研究をしていました。私は祖父に御先祖様の武器についてこう言っておりました、”この武器はこの世界の物ではないかもしれない。”と」

「この世界の武器ではない……」


頭の中で元世界とハンドスピナー型の武器がよぎる。


「詳しいことが書かれている資料があったのですが残りの窃盗団に盗まれたのでしょう。全て消えていました」

「そうですか、窃盗団の目的は?」

「マスクの男を尋問していますが口を割りません。ですが御先祖様の神器が目的でしょう」

「あの部屋にあった武器ですか?」

「いえ、あの武器は違います。神器は御先祖様の寝室に保管されているようです。ですが御先祖様の寝室に入る方法も本当に神器という物があるのか私には分かりません。」


あの部屋で飾られていた大小様々なデザインの武器は神器ではないらしい。


「これはミキトさんが使った御先祖様の武器ですがミキトさんにお渡しします」

「ですがこれは御先祖様の武器なのでクルックスにとっては大切な物なのではないのですか?」


ヤンに手渡されたハンドスピナー型の武器をヤンに押し返すがヤンは受け取らない。


「私達には扱えない代物です。ミキトさんが持っていた方が良いでしょう、それにシーナをその武器で守ってやってください」

「え?はい!」


シーナの王都行きを承諾し、強く手を握られシーナとハンドスピナー型の武器を任されたミキトは強く返事をした。


「ミキトさんの歓迎会を催したかったのですが窃盗団の件もあり今立て込んでいるので歓迎会は一週間後でいいですか?」

「すみません。今日出発します。」


ヤンの申し入れを受けたかったが残念ながら速く王都に行かなければならない。ヤンの申し入れは断った。


「突然ですね、分かりました。今回の件お世話になりました」


ヤンは俺に頭を下げた。


「いえ、こちらこそありがとうございました」


俺もヤンに頭を下げお礼を言う。食事に寝床、ヤンが俺に与えてくれたものはいっぱいある。感謝しても感謝しきれない。


「くれぐれもシーナには手を出さないように」

「はい……」


最後に釘を刺されミキトは出発の準備をする為に部屋を後にした――


――「準備は出来ましたか?」

ヤンと村人が見送りの為に集まってくれた。


「少ないですが王都のお金と地図です」


王都のお金と王都までの道が書かれた地図をヤンから受け取る。


「ネーブル金貨十枚だけですが王都に着くまで持つはずです」

「ありがとうございます」


どうやら王都の金貨はネーブル金貨というらしい、クルックスではお金を見ていなかったが物々交換だったのだろうか。

渡された地図には王都への道筋が分かりやすく記されている。


「シーナはまだですか?」

「もう乗っていますよ」


シーナの姿が見えずシーナを探そうとすると車内からシーナの声が聞こえてきた。いつの間にか乗車していたようだ。丁寧にシートベルトもしている。


「もう乗っていたのか、なんでヘルメット被っているの?」

「乗り物に乗るときはこのアーマーを被るんじゃないんですか?」


俺がバイクに乗っている時の姿を見て学習したんだろうが車では必要ない、「どうですか?すごいでしょう」とでも言いたそうな顔がヘルメットの中で見えた気がした。


「車ではヘルメットは被らなくていいんだよ」

「え……そうなんですか」


車に乗りながらシーナに教えてあげる。

シーナは少し恥ずかしそうな顔でヘルメットを脱いだ。


「荷物は……ヘルメットだけ?」

「はい」


クルックスの村人は着替えとかないのか?シーナの持ち物は俺が召喚した白いヘルメットのみだった。


「じゃあ、出発するか。ヤンありがとう!」

「いえ、ではお気を付けて」


車のドアガラスを開きお礼をした。


「さあ!王都へ!」


興奮気味のシーナが声を上げる。シーナさん?テンション高くないですか!?どうした?


ドウゥゥゥンッ


キーを回しエンジンをかけアクセルを軽く踏み低速で車を発進させる。


「行ってきます!」


シーナは村人とヤンにパワーウィンドウから顔を出し別れの挨拶をした。


「とりあえず王都へ行こう」

「はいっ」


シーナは白いヘルメットを抱え目の前の景色に目を向けている。俺のポケットにはパチンコ玉とハンドスピナー型の武器が仲良く入っていてポケットの中にしまったハンドスピナー型の武器は思ったよりも重く感じなかった。


「馬よりも揺れませんね」

「いいだろ?そういえば初めて会った時に追われていたけどもしかして王都に行こうとしていたの?」

「ええ、まあ」

「王都に何しに行くの?」

「探し物です」

「ふ~ん」


軽い会話を二人で交し合いながらクルックスを出る、クルックスからでた先は辺り一面林で車が一台通れるくらいの広さの道があった。


「……バイクで行かない?」


今度こそバイクの二人乗りで……ひひっ


「このまま行けるでしょう?」


俺の邪な考えを感じ取ったのかシーナは声は低い声で返答した。


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