第13話 闘い
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「オオオオッ!」
「――ッ」
村人は目の前にいる獣の皮で作った防具を付け短剣を腰に装備している窃盗団と対峙している。
やはり上の階では激しい戦闘が起きていた。血を流していない者はおらず皆、目の前の敵を殺すことに集中している。
(一気に突き抜ける!)
窃盗団が村の男達との戦闘に集中している隙に上の階につながる階段へと戦闘渦巻く部屋を一気に直進した。
ヴォォォォオオオンッ!!
ペダルを踏みエンジンが力強く音を上げる。
バイクのエンジン音は室内ではとても響き戦闘に集中していた両者はいきなり現れた音に目を向ける。
「なんだお前!」
「止まれ!」
右手に剣を持った窃盗団の二人が次の階に行く階段の前に立ちはだかり俺の進路を塞いだが問題ない、俺には新しい能力とバイクがいる。
「悪いな、退いてもらうぞ」
目の前に立ちはだかる窃盗団にバイクの前輪を上げウィリーの形で突進する。
ヴゥゥゥゥンッ!!!
「うわっ」
前輪に窃盗団の1人の身体が接触し窃盗団の1人は後ろへ跳ね飛ばされ気絶した。
「てめぇ!」
進路に立ちはだかったもう1人が手に持った剣で攻撃してくる。
「ふっ!」
一呼吸置き俺はウィリーしたままの状態のバイクの前輪で剣を受けながら前輪を倒したが敵は後ろに逸れ、逃げた。
(だったらこれだ!)
グリップを強く捻り突進!ただの前進だ。だがバイクの重量で生身の人間が轢かれるだけでも大ダメージだ。
「う、うぅ」
敵はまだ気絶していない。
「こい!フライパン!」
フライパンを右手に召喚し痛みに耐えながら上体を起こしている敵の顔に向かって思いっきり振り下ろした。
――ボッ!
「うっ」
あまり響かない鈍い音を立てて敵は崩れた。
「うわ、痛そう……ごめんね」
倒した敵を放置してミキトは上の階への階段に向かった――
――(この上は確か武器が置いてある部屋だ)
バイクで階段を駆け上がり御先祖様の武器を保管してある部屋へ入る。
「シーナ!ヤン!」
部屋の中央で窃盗団のリーダーであろう、右手に刀の刃が3つ重なった見たことのない武器を装備し、仰々しい赤いマスクしている男が左手でシーナの首を掴んで立っている。その正面にヤンが重心を落とした低姿勢で構えている。
(でかい、三メートルはありそうだ)
赤いマスクの男は180cmはあるヤンよりも大きく身体の筋肉量も多くがっしりしている。
大男、ギガンテス、怪物。
人間に思えない体躯を前に俺は瞬きを忘れていた。
「なぜ来たのですか!?」
目線は目の前の敵から反らさずに俺に投げかけてきた。
「俺にもできることがある!」
「――ッ! ミキトさん! あぶな――」
ガキッ!!ギギギギギッッ。
いきなり殴られたような音と切られた様な音がヘルメットの中の俺の左耳に響く、気づくと俺は宙を舞っていた。
「!? ぐっ!」
(なんだ?殴られたのか?)
何も分からずバイクの上から大理石の壁に吹っ飛んで背を打った俺は背中に走る鈍い痛みに驚いた。
「狙いがずれたか、ちゃんと殺さないとな」
赤いマスクの下から低い声が聞こえた。その声は禍々しく邪気を孕んでいる。
「早く教えろ、上の部屋の中に神器があるんだろ? それとも他の場所に神器を隠しているのか?」
「神器が何のことなのだか私には分からない! 神器なんてこの村にはない!」
(神器? 何かの武器か? この部屋の物が神器ではないのか?)
床に倒れながら赤いマスクの男の言葉を拾う。
部屋では飾られてた大小さまざまなデザインの武器が赤いマスクの男との戦闘によって床に散乱していてその中で昼に見たハンドスピナー型の武器もあった。
(あのハンドスピナー動いてる?)
床に落ちた衝撃で動いているとは考えられなかった、何故ならハンドスピナー型の武器は生きているように俺が乗ってきたバイクに向かって動いていたのだから。
(ガソリンタンクに向かっている?)
不思議な光景だ、ハンドスピナーがバイクのガソリンタンクに向かって動いている、頭を攻撃されたことで混乱しているのかもしれない。
(まさか……今バイクのエンジンは魔力で動いている、その魔力に反応している……?)
シーナの先祖が使っていた武器は魔力を使用する物なのだと推測する。ヤンと赤いマスクの男が睨み合っている今が最大のチャンスだ、この状況を打開できなければきっと勝ちは得られない。
(やるしかないんだ!!)
幸い武器が錯乱していることでこちらは死角になっている。
(ゆっくりと……)
壁に打ち付け痛む背中を伸ばしバイクに歩腹前進で近寄りハンドスピナー型の武器を手に取る。
「やっぱりハンドスピナーだ」
三つ葉型のプレートについた3つの穴の開いた重り、指で挟んで持つための中心にあるセンタースピンドル。ハンドスピナーとしか言い表せない。
(ガソリンタンクを開けよう)
ガソリンタンクのカバーを上げ鍵口が現れる。ミキトはバイクに挿されていたキーを回しエンジンを止め、キーを外してガソリンタンクの鍵口に挿し給油口を開いた。
給油口を開くと給油口からガソリンの代わりとして使われていた魔力がミキトが手にしていたハンドスピナー型の武器の3つの重りに吸い込まれていく。
「なんだこれは……」
三つ葉型のプレートについた3つの重りは魔力を吸い青白く輝いていた。
「回すのか?」
ハンドスピナー型の武器を左手の中指と親指で挟み右手で回す。するとハンドスピナー型の武器は回転率を上げ強い青色に輝きを変えた。
ビィィィィィィィィィィ!!!
回転率の上昇とともに音も周囲に存在を知らしめるかのように響きだしミキトは強い風圧を手に感じていた。
「おい!お前!なんだそれは!?」
赤いマスクの男はハンドスピナー型の武器に気づき俺に目を向けてくる。
その瞬間ヤンが一気に赤いマスクの男に詰め寄り剣を振った。攻撃は当たらなかったものの、赤いマスクの男はシーナを手放した。
”投げろ”
「うおおおおおぉぉぉおおおお!!りゃーーー!!!」
頭の中で声が響いたと同時に俺の身体は赤いマスクの男に向かってハンドスピナー型の武器を投げていた。
ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!
超高音でハンドスピナー型の武器は真っ直ぐ赤いマスクの男に飛んでいく。
「クッ!」
赤いマスクの男は刃が3つ重なった刀を真一文字にハンドスピナー型の武器を斬った。
ビィィィィィンッ!!!
手ごたえのある音が部屋に響き渡たる。
一瞬の出来事だ、瞬きの間に勝負は決まっていた。
赤いマスクの男は右肩に深い切り傷を作って倒れていた。
「はぁ、はぁ、倒したのか」
生死は確認していないが赤いマスクの男は気絶している様で右肩にはハンドスピナー型の武器が大理石と赤いマスクの男の肩を裂いていた。
「村長!窃盗団は!?」
下の階で戦闘をしていた村の男が遅れて上がってきた。
「大丈夫だ、片付いた、それより生きている窃盗団は捕縛し連行しろ。あと他の仲間がまだ村に潜んでいるかもしれない探すんだ」
「分かりました!」
村長の命を受け男達は赤いマスクの男を捕縛し連行していった。
「ミキトさんのおかげでシーナを助け出せました、ありがとうございます」
「いえ……この武器があったからですよ」
大理石に刺さっているハンドスピナー型の武器を見ながら村長の礼に答える。
「シーナは大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です」
シーナの顔にも身体にも目立った傷は無くただ眠っているように見える。
「一件落着……あれ……?視界が……」
シーナの安否を確認出来たからか戦闘の疲れからか視界はスローになりミキトは大理石の床に倒れた。




