第16話 シストへ
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「やや!あれは!?」
フェラーリで地平線の続く砂利しか存在しない荒野をフェラーリで爆走していたミキトは右手前方に荷車を引いた馬であろう、荷馬を確認した。
しかし、様子が変だ。荷馬車の上に人影が二つ見える。その影は荷馬車の上で激しく動いている。そしてその後ろには馬が荷馬車を追っていた。
「なんか揉め事かな?」
「あれは盗賊ですよ!!ミキトさん!!」
知っていますよ、荷馬車を襲うのなんて盗賊ぐらいしかいませんよシーナさん。
「助けないと!!」
「シーナ、俺達は武器を持っていない、無理なのではないかな?」
チート能力も持っていません。
「この車があるじゃないですか!これで轢けばいいんですよ!」
「なるほど」
やっぱり獣人もどきって野蛮なの?人を車で轢くとか考えられない。
「上手くいくかな」
「大丈夫です。ミキトさんには召喚能力もあるじゃないですか!」
日用品・車部品・車関連商品の召喚能力ですけれどね。
女の子にここまで言われて助けないなんてできるわけがない。ミキトはハンドルを右に切り荷馬車へ車を走らせた。
”馬で追っている盗賊は七人か、多いな。全員刀を持っている。直刀か?まあ、関係ないダンプトラックになれ!!”
盗賊の戦力を把握しながらミキトはフェラーリをダンプカーに変形させる。車内が歪みだし車高がどんどん上がっていく。数秒で車の変形は終わる。
六本の大きなタイヤ、大きな荷台を備えたダンプトラックはフェラーリほどの速度は出ないもののその巨体は重戦車のごとくずっしりとしていた。
「シーナ!しっかり掴まっていろ!」
「はいっ」
アクセルを強く踏み込みダンプトラックの最高速度を出す。
「何か来たぞ!」
「魔装兵器だ!おい!早くやれ!」
「「ヴァンアロー!!」」
複数の窃盗団の詠唱によって空に無数の炎の矢が現れる。現れた炎の矢はミキトのダンプトラックに雨のように降り注ぐ。
「フハハハッ!無駄無駄ァ!無駄なんだよぉ!」
俺の車には絶対に壊れない能力が備わっている、そんな魔法意味がない。
雨のように降り注いだ魔法の矢は雨の様にダンプトラックのボディに弾かれる。
「来るぞ!避けろ!」
最強能力を持つ車の中でミキトは邪悪な笑みを浮かべながら盗賊達にダンプトラックで突っ込むが、相手は馬に乗っている為動きが不規則で攻撃が当たらない。
「くそっ」
「わわっ」
ザザッザザザ!!
ヤンキー女神通販で買った万能操縦で見事なハンドルさばきとブレーキングでドリフトする。ドリフトで切り返す時右側の車体が少し浮いた。ダンプトラックのドリフトは迫力満点だ。
「しっかり掴まってろって言ったじゃん」
「なんですかこれ~」
ドリフトの遠心力に負けてシーナは頭を打っていた。
攻撃は当たらなかったものの窃盗団の陣形を崩すことには成功したようで窃盗団達の意思伝達は難しくなったように見える。
「追い打ちかけるぞ」
アクセルを軽く踏み込む。最高速度では一直線の攻撃しかできない。
ミキトはダンプトラックを荷馬車を追っている窃盗団の後ろに着けて後ろからの攻撃で窃盗団の馬の動きを捕らえようとする。しかしこの判断はミスだった。窃盗団の馬は荷馬車に横付けになったのだ。これでは攻撃ができない。
「だったら、ハンドスピナーで!!」
ポケットからハンドスピナー型の武器を取り出し攻撃しようとしたが魔力を使うためには外の給油口に行かなければならないことに気が付いた。
「やばい、無理だ」
「私が行きます!」
「シーナ?何言ってるんだ?」
「私があの荷馬車に飛び移るのでミキトさんは車を荷馬車に近づけてください」
「……分かった、作戦がある」
ミキトはシーナの耳に作戦を伝えるため口を寄せる――
――「あの、別に耳に口を寄せなくていいんじゃないですか?」
「そうですよね。じゃあ、作戦は――」
耳に口を寄せることを拒否されながらシーナに作戦を伝える――
――「気を付けろ!」
「はいっ」
ダンプトラックの頭の上に立っているシーナに声をかける。
「よしっいくぞ!」
アクセルを踏み徐々に速度を上げてゆく、ダンプトラックは直ぐに荷馬車の右手に張り付いた。
ミキトの頭上でダンッと音が鳴りシーナが荷馬車に飛び移ったのを確認する。
「気を付けろよ、シーナ」
ミキトはそう言い残しアクセルを強く踏み荷馬車より前方へ向かう――
――「大丈夫ですか!?」
シーナは荷馬車の上で戦っていた人影の安否を確認する。
「この状況が大丈夫に見える?」
その人影は十六歳ほどの少女で銀髪にセミロングツインテール、黒目が白い色をしたやや釣り目の女の子だった。
「すみません。この後少しだけ危ないかもしれないので屈んでいてください」
「は?敵の前で屈む?馬鹿じゃないの?」
「お願いします。言うこと聞いてください」
そうこうしている内に窃盗団が荷馬車に次々と上ってくる。
「今は闘いの最中です。邪魔です!」
「私、闘えます!」
「見たところ剣も持っていないようですけど魔法を使うんですか?」
「私は魔法を使えません!」
「はぁ?どうやって戦うのよ!」
その時荷馬車の上に窃盗団の一人が上ってきた。
「殴ります!」
シーナは上がってきた窃盗団の一人の顔面に大きなスイングのパンチを食らわせる。
「な、なるほどね」
シーナの意外な戦闘スタイルに驚きながら銀髪の少女は前方から飛んでくる攻撃に気づいた――
――「ここらへんだな、」
荷馬車は約300m後方に見える。ここならば準備に邪魔が入らない。
「給油口は……ここか」
ダンプトラックの給油口を見つけミキトはハンドスピナーを給油口に近づける。給油口から青い線が出てきてハンドスピナーの三つの重りに吸収されていく、ハンドスピナーはクルックスでの戦闘の時と同じように青白く輝きだす。
「準備OK、では」
ミキトは後方の荷馬車に身体を向け右手の中指と親指で持ったハンドスピナーを薬指で軽く回転させる。ハンドスピナーはどんどん回転数を上げ青く輝く。
「いっけぇぇぇぇぇ!!」
狙うは荷馬車に横付けしている窃盗団だ。
大きな動きのスローイングでミキトは窃盗団に向かってハンドスピナーを投げた――
――「何あれ!?」
「あれはミキトさんの武器ではんどすぴなーって言うんですよ」
迫りくる攻撃に集中し銀髪の少女は警戒するがシーナはマイペースに銀髪の少女の”何あれ”という言葉に素直に回答をしていた。
「いや!そういう事じゃなくて!」
「あれ?何だかあの攻撃荷馬車に向かっているような?」
ハンドスピナーの攻撃は横付けしている窃盗団ではなく荷馬車に向いている。
「危ないです!」
「ちょっ」
シーナは軽そうな銀髪の少女の身体を抱え荷馬車を飛び降りた――
――「お前ばかだろう!?」
「ごめんなさい」
ミキトは砂利の上で正座させられ銀髪の少女にお説教プレイを強いられていた。
「私の荷馬車と家具どうしてくれんの?」
「ごめんなさい」
銀髪の少女はバラバラになった荷馬車を顎で指した。荷馬車を引いていた馬はどこかへ逃げてしまい壊れた家具が辺りに散乱していて窃盗団は退却していた。
「お前本当に馬鹿だな」
「ごめんなさい。弁償します」
ミキトは金貨3枚を銀髪の少女に渡す。
「ネーブル金貨持っていたのね、お金持ってなさそうだったからどうしてやろうと思ってたわ」
金貨を手に取りミキトとシーナの姿を一瞥する。
シーナは大きなダンプトラックのタイヤに寄りかかりミキトから奪ったお菓子を食べている。
「まったく」
銀髪の少女は車を見て少しの時間思考した後ミキトに命令する。
「お前のその魔装兵器で私をシストに送りなさい」
銀髪の女王様からの命令だ。断れない、俺達は武術の町、シストに行くことになった。




