第12話 新しい能力
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墓に続く細い道をバイクで走っていると道端の木の根元に背をよりかけてうずくまっている男がいた。太い腕から血が出ている。
「大丈夫ですか!?」
ヘルメットを脱ぎ捨て負傷した男に呼び掛ける。
「うぅ……逃げろ、まだここには敵がいる……」
意識が朦朧として弱々しい声で俺の声に答えた。
(どうしよう、一旦バイクを車にしてこの人を運ぶか?)
敵がいるのであれば早くここから離れなければ、シーナは見つかっていないが仕方がない。
――「ミキトさん!なぜここにいるんですか!?」
「ヤン!シーナは先祖の墓に居るかもしれない!早く見つけないと!」
長剣を持った男達を引き連れたヤンがミキトの元にやってくる、男達は皆いつものダボ着いたズボンに脛、動体を甲冑で包んでいて戦闘態勢だがヤンを含め十三人しかいない。
「シーナは御先祖様の寝室にいます。此処は私達に任せてミキトさんは早く逃げてください」
「俺にもできることはあります!シーナを助けたい」
「これは私達の問題です、こちらで解決します。心配はいりませんよ、ミキトさんは安全な所で身を隠していてください」
「わかりました…… 」
そうだ、俺が窃盗団と戦えるわけがない。高い身体能力があるわけでもない、チート能力を持っているわけでもない。元世界では碌に勉強もせずパチンコ・スロットで遊び大学の単位を落としてしまう始末だ。こんな俺がヤン達と一緒に行ったって何にもできない。
――「窃盗団は御先祖様の寝室にいる!途中で窃盗団の仲間が待ち伏せしているかもしれない。注意して進むぞ!」
俺に話しかける時の優しく丁寧な言葉から力強い村長としての男の声でヤンは男達を連れ御先祖様の玄関に入っていく姿を俺は只、立って見ていた。
「行きましょう……」
出来ることをしよう……ミキトは木にもたれている負傷した男に肩を貸して止めていたバイクへ運ぶ。
「肩を貸してもらわなくて結構だ……腕を怪我しているだけだ……」
意識がはっきりしてきたのか怪我をしていない腕に力が入った。
「奴らは窃盗団じゃないかもしれない……」
「窃盗団じゃない?」
男の推測に耳を傾ける。
「身体の使い方、武器の種類、体術、どれも見たことのないものだ、王都の国技でもなかった。奴らはただの窃盗団じゃない」
「……」
何が目的なんだ?
「まさか、クルックスの先祖が扱っていた武器が狙いか!?」
(あの部屋に飾られていた武器だ、きっと奴らはそれを狙っているんだ!あの人影はそいつらの一味だったのか……?)
シーナに案内してもらい御先祖様の玄関から出た時にみた人影の正体が頭の中で結びついた。きっとシーナは気づいていたんだ、だから確かめる為にまた此処にきて……
(くそっあの時からもう奴らは村に侵入していたのか!)
だが人影の正体が分かったからといって今の自分が何かできるわけでもない。後悔した、人影の正体をあの時確かめなかったことを。何もできない自分を。
「また後悔するのか?」
「え?」
「どんな結果になろうと行動しないときっと後悔するぞ」
男は俺の目を見て諭す。
失敗して後悔したことは多かったがやらないで後悔した事の方が多かった。後悔はしたくない。
「そうだよな、一度は死んでんだ、やらないと始まらない……!」
俺は脱ぎ捨てたヘルメットを拾い上げバイクへ歩き出す。
「ありがとうございます」
一言だけ男に礼を言いヘルメットを被りバイクに跨る。
ヴゥゥンッヴゥゥゥンンッ!!
魔力で回るエンジンが唸りをあげエンジンの力がバイクの車体全体に伝わる。俺の身体にも力が流れ込んできたように感じられた。
ミキトはグリップを捻りバイクを力強く発進させる。
ヴゥゥゥゥゥンッ!!
「シーナ、待ってろよ」
目指すは遥か上階の御先祖様の寝室だ――
「さて、こっちはお目当ての物を探すか」ミキトを送り出した男は墓に向かったミキトとは逆方向に歩き始めた。
――ミキトは御先祖様の玄関にバイクで侵入し辺りを見回す。
「誰もいないか」
この階には窃盗団はいないようだ。
「神様!聞こえますか!?」
大きな声で求めるように神を呼ぶ。
”聞こえてるわ”
「俺に、万能操縦の能力をください!!」
”まいどあり。アンタの財布からお金は抜いといたから。んじゃね”
ヤンキー女神の一言で虹色の光や身体が光り輝いたりなどはせずに能力を付与されたようだ。
「操縦に関しては万能なんだよな……?」
ヴゥゥゥ……ヴォォォンッ!!
バイクに乗りながら部屋の右隅にある階段に侵入する。バイクは足で上るよりも早く階段を駆け上がる。
(階段をバイクで上れるなんてプロでもないとできないぞ)
神の恩恵を初めて感じながらバイクで階段を上っていった――
――「―!血か!?」
階を上がるごとに白い大理石に血が飛び散り赤く染め、武器が所々に落ちていた。
「――!」
「――ォォラッ!」
”上の階が騒がしい、上で戦闘が起こっているんだ”
上の階に進む階段から響いてくる声、金属質な音、全てがリアルだ。元世界のゲームとは訳が違う。この先にあるのは生と死の闘い、10分後には自分は死んでいる可能性だってある。
ハァーー。フゥーー。
「行くぞ」
呼吸を整え高鳴る心臓を胸に感じながら上の階で起こっているリアルの戦闘にミキトはバイクで乗り込んでいった。




