十三話 痕跡
翌日——
進藤は火事があった高台の現場を訪れた。
そこには、火事から数ヶ月が経った今も、焼け跡の残る大きな家が残されていた。
広い敷地には荒れた庭が広がり、その一角に、燃えずに残った小さな小屋があった。
そして、その小屋の隣に一本の細い木が佇んでいた。
進藤は周囲を見渡しながら、焼け跡の残る敷地へと足を踏み入れた。
捜査が終了しているためか、警察の規制線は撤去されていた。
進藤は慎重に近づくと、焼け跡の残る家を撮影した。
次に小屋の周囲を見回しながら、何枚か写真を撮った。
「……室外機? 何でこんなところに……」
室外機が気になり、進藤は小屋の中を覗こうとした。しかし、窓は磨りガラスになっていて内部を見ることはできなかった。
進藤は写真を撮り終えると、小屋のドアノブにゆっくりと手をかけた。すると扉は意外にも、簡単に開いた。
小屋の中は六畳ほどの広さで、机と椅子、ベッド、引き出しが整然と置かれていた。
物置小屋というより、誰かが長い間ここを使っていたような雰囲気があった。
「誰かがここで暮らしていたのか……?」
しばらく小屋の中を見回したが、家具が置かれているだけで、他に目立ったものは何も置かれていなかった。
進藤は窓際に置かれた机に近づくと、引き出しを開けてみた。
しかし、中には文房具が入っているだけだった。
「何だこの丸い染みは」
ふと机の上を見ると、茶色く変色した染みが残っていた。
「……何か食べ物をこぼした跡か?」
机の染みを触りながら進藤は呟いた。
(やっぱりここで誰かが暮らしていたのか……)
そして手を伸ばすと、目の前の窓を開けた。
そこからは、燃え落ちた家が見えた。
(あそこで三人が……葵はどこで助けられたんだろうか?)
疑問を残したまま進藤は高台を後にした。
帰り道、近くの何軒かの家で神谷家のことを聞いて回った。
インターフォン越しに記者だと名乗ると、何も話すことはないと断られてしまった。
しかし、何軒目かで、一人の女性が話を聞かせてくれた。
女性によると、神谷家の父親・悟は医師で、母親のさやかは以前から病院に通っていたという。
そして、最後に訪ねた家で、火事の日に少女が発見されたことを聞いた。
「庭の小屋の近くで見つかったらしい」と、年配の男性が話してくれた。
進藤は家に戻ると、高台で撮った写真をパソコンに取り込んだ。何枚か見ているうちに、進藤の手が止まった。
「……この小屋、エアコンまで付いてたんだよな……」
進藤は手帳を取り出して開き、今日メモしたことを見返した。
・神谷悟=医師
・神谷さやか=病院に通院
・神谷家=火災
・葵=小屋の近くで発見
・小屋=生活していた形跡
もし、ここが葵さんにとって何か思い出のある場所なら……
何かを思い出すきっかけになるかもしれないな。
「……一度、葵さんに来てもらうか」
そう呟くと、進藤は携帯を手に取った。
いや、でもな……葵さんに、過去を本当に思い出させていいのだろうか。
進藤はしばらく考えていた。その時ふと、先日葵が言っていた言葉を思い出した。
———たとえつらくても、自分の過去と向き合いたい。
「……俺が勝手に決めていいことじゃないよな」
しばらく迷ったあと、進藤は蓮に連絡をした。




