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第二部の第3話


基本的に留学生も授業の内容は同じです


マリチさんは日本語も普通に堪能なので(もともと何度も来日はしていた設定です)

教科書も借りて、皆と一緒に授業を受けています


はっきりいって座学は退屈そうです


でも1時間の授業を集中して受けることは苦ではないらしく

なんでもそつなくこなす姿はカッコよく、なんだか誇らしくもあります


しかし次の授業は私が最も恐れているもの科目なのです


それは……柔道!


ここ白鳳高校は体育とは別に週に一回、柔道の授業が必須なのです


北欧から来た留学生なんだから、日本の武道を体験してみよう!

みたいに絶対になりますよね?


やばすぎひん?


中学からやっている私たちは、下手なりになんだかんだ道着を身に着けて柔道所へ向かいます

マリチさんは道着も持っていないので、体操服です


けど私は知っているんですよね


マリチさんは見た目には反映していないだけで、普通に今も神龍鱗道着を身に着けてるってことを……


かくして柔道の授業は始まりました


そして案の定柔道担当の先生から

「マリチさんも良かったら体験してみますか!」

の声


ちゃんとSサイズの道着も用意されていてさっそく着付けるマリチさんなのですけど…


スッスッス…

パンッ(襟をきっちり伸ばす音


あっ…あっ…

着付けを手伝ってる私はあまりにも慣れすぎているマリチさんにぼそっと

「もうちょっと下手なふりをした方が……学生生活しやすいかも……」

「ふむ?」


不思議な表情を浮かべるも、わざと帯を下に落としてもう一回最初から着直すマリチ


そして完成


うーん。なんだろう

明らかな体幹の良さと着付けの達人感……


「あれ。マリチさんなかなか着こなし上手ですね」

笑いながらそう声をかける柔道の先生


これは……動きも入れたら絶対すぐにばれる!

そう思った私はすかさずフォローをしておきます

「あ、マリチさんは日本の武道にも興味があって、あちらでもいろいろ稽古されてるそうです!」

「ほーそうなんですね?ならさっそく皆に混ざって受け身の練習からやってみてください」


よし。なんとかなった

受け身の練習ならそこまで目立つことも無いだろう……


マリチさんの武術に受け身などの概念はないようです

ガードか、回避してのカウンターなどがメインなようなので


なので見様見真似で畳を叩くマリチさんの動きは案外自然で

ふつうに運動神経の良い外国の美少女です


っていうか、ほんと可愛いなこの人

一切の陰のオーラがないし……


美女って造形の問題だけではないと思うんですよね

態度とかしゃべり方とか姿勢とか、そういうの全て含めて構成されていると思うんです


マリチさんには華があると思います

さすがは魔妖精族の英雄……


「じゃあ、軽く乱取りしてみようか」


突如、先生の無慈悲な指示が響き渡りました

乱取りというのは、二人一組になって技をかけあう稽古です


マリチさんの武術には投げ技は無いように思います

しかし、山を砕く拳の威力で投げたらおそらく人間は爆散します


でも……少しでも生存する確率が高いのはおそらく私です


「あ、じゃあマリチさん、私と……!」


すかさず名乗りを上げたのですが、そこに先生の無慈悲な一言が


「あー。湊は背が高いからダメ。あー……鈴村すずむら、組んであげて」


確かに身長130センチちょいのマリチさんと、身長165の私では無理がありすぎる!

先生はクラスで最も小柄な女子生徒、鈴村栞スズムラ シオリさんを指定してしまいました


鈴村さんは確かに小柄で、身長は145センチぐらいです

それよりも私が気になったのは、彼女は図書委員の文芸部で運動をしているイメージが一切ないことです


しかもシルバーブロンドの美少女を前に明らかに委縮しています


後ろに倒す技は後頭部を打つ可能性があって危ないので、背負い投げを先生から指導されます


「よし始め!」

号令と同時に道場内に散らばった二人一組がわちゃわちゃと技をかけあいます

スペース的に男子と女子に分かれて交互にやる感じですね


といっても私は基本的にマリチさんしか見ていません

何が起きるか分からないからというのが勿論メインですが、どんな美技をみせてくれるんだろうという期待もちょっとだけあったりして


あ、でもマリチさんはちゃんと空気を読んでか、受けに徹しています

あまり柔道の得意ではなさそうな鈴村さんが一生懸命技をかけようとしてますが、まるで巨木のように安定した足さばきのマリチさんには技がかかる気配がありませんね……


チラッ


ん。マリチさんが一瞬こっちを見ました

もしかして……何かのサイン?

私は思わず小さくうなずいてしまいました


その瞬間


フォン


一瞬の風切り音とともに、一回転する鈴村さん


「え?」


先生も、周りで注目していた学生たちも、そして投げられた本人すらも

その迅さに、何が起きたのか分からなかったようです


しかもちゃんと引き手を固定し、相手にはダメージがいかないよう配慮しています


ざわ…


「留学生のマリチさん…ちょっと上手すぎない?」

「ちっちゃいのに…」

「かわいい…」


ダメだ。元々が色々と良すぎるから何やっても注目度が半端ない

これはもうはやく時間になって何かがバレる前に終わってほしい


「よーしじゃあ男女入れ替え~」


先生が合図を入れ、一瞬道場の中心部に人の居ない時間ができる


「ん?」

「ん?」


私とマリチさんが思わず小さい声を上げた


なんか生えとる。


道場の真ん中に何かぴょこっと草のようなものが生えているのだ


あれは……もしかして……


「マンドラ?」


そうだ。マリチさんの家の周りにちらほら生えてたマンドラゴラの頭だ…!


兄から聞いていました

ソーファン世界のモンスターは転移の歪みから、たまにこっちにも出ると

しかも近づかなければ敵対行動をとらないが、向こうの世界に行ったことのある私たちと出会うと実体化して襲ってくると


そして今目の前に生えているマンドラゴラは既に知覚範囲内


ただ、マンドラゴラは引き抜かない限り襲ってこない…?

とはいえ、頭の草はずっと見えてるんだよね……!

知覚されてないから大丈夫なのか、それとも自分で出てきてしまうこともあるのか


もう気が気じゃない…


はやく時間が来てほしいーー!


キーンコーン……


遠くの校舎からチャイムが聞こえてきました!


「あ、もう時間か。じゃあ今日はここまで~」


皆がストレッチしながらゆっくり解散していったり、先生に挨拶したりと時間がゆるゆる流れます

けど、私の目はマンドラゴラに釘付け

ずっと道場の床をガン見してる変なやつですけど仕方ないですよね


少しずつ生徒たちが道場から出て行き始めました


が、そのときクラスのお話し好きな女子たちが


「マリチさんすごいね~!」

「私なにしたかわからなかった!」

「かわいい~」


マリチさんを取り囲んでキャッキャウフフし始めたのです


いやいや、気持ちはわかるけど今はそれどころちゃうねん!

道場の真ん中に草生えとんねん!!


ああ~もう~!

それどころじゃないのに!


でもなんかマリチさんは皆にチヤホヤされてニヤニヤしている!


私はこんなにもハラハラドキドキしているというのに…


道場の出口でおろおろしている私を見て、何か察したのでしょうか

「あ、ヒカルー!」

マリチさんが急に私の名前を呼んで手を振りました


「え!あ、うん!」


私も思わず声を上げて片手を挙げます

当然ながらマリチさんを囲んでいた女子グループも一斉にこっちに視線を向けます


その次の瞬間の動きを私は見逃しませんでした


皆が私の方を向いた瞬間

一瞬にしてマンドラの草を引き抜きながら手刀でその胴体を真っ二つにしたのを


「着替えもあるからそろそろ戻らないと!」

私は光となって消えていくマンドラゴラを見ながらマリチさんに言いました


手を振り振りしながらニヤリとするマリチさん


この人……やっぱりすごいのかも


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