第二部の第4話
一方その頃
公国の主導ではあるが、四国連合の最高審議会という最も重要な問題を扱う裁判に呼び出された俺
正面には公国の宰相が審議官として壇上に立っている
だがそれだけではない
右に王国騎士団団長
左に連邦魔法団団長
後ろに共和国軍強化機動部隊長
つまりそれぞれの国家最高『戦力』が俺を囲んでいるのだ
しかも強化魔法などは厳重にチェックされて、今はなんの魔法もアビリティの効果も受けていない状態
とはいえ装備はそのままなので、もともと装備についている恩恵は常時オートで受けられており割と気は楽である
ただ冒険者以外の、本来はNPCのような存在は強さを『調べる』ことができない
そのため実際戦ったらどういうアビリティや魔法を使うのかなどは少し興味はある
いや、戦わないけどね……
「Bランク冒険者、ミナト・ヨーイチ。この罪状に関し、何か異議申し立てはあるか?」
審議官の低い声が、天井の高いホールに響き渡る
「ありません」
俺は特に気にすることもなくそう答えた。実際当たってるしなあ
「……ただ」
「何か付け加える点があるのかね?」
審議官の声と共に、周囲を固める人々の警戒心がわずかに高まるのを感じる
「私は異国から来たばかりなのでこちらの大陸のルールに疎く、それが違反になると分かってやっていたわけではありません」
ざわ……
周囲からひそひそ声がする…
「確かに噂の腕前にしてはランクが低い……」
「最近急に名を聞くようになったし……」
「というか地味だし……」
最後のはただの悪口だろ
「3国の代表団の長の意見は如何かな?」
王国騎士団長がすっと手を挙げて言った
「死刑」
判断早すぎるだろ
連邦魔法団の団長はマリチと同じ魔妖精族だ
おそらくかなりの長命だろうが、身長はやはり小柄である
手を挙げても目立たないと思ったのか、椅子から少し浮かび上がって答えた
「一理はある。よって無限回廊送りが妥当かと」
それも聞いたことのない場所だけど、絶対無期懲役的なやつだろ
最後に共和国の起動部隊隊長。なんかパワードスーツみたいな鎧を着た人がスッと立ち上がって言った
「この者の経歴的に一考の余地あり。あと、これまで悪意のある発言や攻撃的な行動を取っていないのも評価できる」
おお……。
すごく冷静に判断してくれてありがとうございます
「ふむ……。本来国際法に照らし合わせるとすれば48年の禁固刑となるが、汝は冒険者である。条件付きではあるが、刑を減免するために特殊クエストの攻略を以てそれに変えるという手もあるが如何かな」
「ではそれで」
俺は内容を聞かずに即答した
この状況で平和的に解決するにはそれしかないだろうし
「判断が早くてよろしい。では貴殿の処遇は一時保留とし、特殊任務を攻略するまでの期間限定で一時釈放とする!!」
緊張に包まれていたホール内の空気が少しだけ綻んだ
騎士団長の目が余計に鋭くなっていることや、魔法団長の目が好奇に輝いていることなどは多少気になるが、とりあえず悪くないところに落ち着いただろう
「後の指示は冒険者ギルドにて手続きを行うので、明日早朝に向かうがよい」
かくして俺は無事に公宮を破壊せずに街に戻ることができた
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スーツにケープを羽織った様なスタイルのいつもの受付嬢(名前は知らない)が
少し声を潜めて俺におずおずと依頼書を差し出してきた
「なんかマル秘って書いてあるんですけど……何されたんですか……」
受け取った紙切れを見ると、びっしりと細かい文字で書きこまれた上に、丸で囲まれた大きな記号が赤い判子でおしてある
文字を見ると日本語ではないのだが、日本語と同じように理解はできる不思議
「いや、ちょっといろいろ誤解を受けてて」
俺は淡々とそう答えながら、頭の中では静かに考える
……やはり強いということは大事だなと思う
弱かったら多分向こうも代替措置としての強制クエストなど提示してこなかっただろう
どこの世の中でもきっとそうなんだ。強いが故に、選べる選択肢が多くなるのだ
だから体力はあるに越したことないし、資格はあるに越したことないし、友達は多い方がいいんだ
でもそう思ってる俺が一番全部持ってないという事実には目を背けておこう
異世界転生や異世界転移のテーマって、本当は実現したかった自分をやり直すことなのかもなー
でもそれはチート性能があるから実現できるのでなく、それに気づいたことによる自らの人間性で行わないと意味がない気もするねん
「ヨーイチさーん!大丈夫ですかー?説明は以上ですよー!」
はっ
自らとの対話でつい我を失っていた
全然聞いてなかったけどまあ何とかなるだろ
「今回の任務はめちゃくちゃ危険なうえにソロですので、十分準備してから行ってくださいね…」
名前も知らないいつものお姉さんが気をつかってくれている
いまだに名前も憶えていないのはどうかしてると思われるかもしれないが、冷静になって考えてみたら、常連客だからと言って店員さんの固有名詞を勝手に覚えるとか怖くないか?
これが人口のあふれた現代人の感覚で正しいのだ
「そういえば今日はあの最強アイドル魔妖精さんは一緒じゃないんですね」
「え?」
マリチの事か。
確かにずっとパーティで登録しているから、ギルドの担当者からすればいないのは珍しく感じられるだろう
「今度いっしょにランチでも行きましょうって話になってるんですよね!」
いやどういう社交性なんだよアイツ。ほんと俺とは正反対だな‥‥‥
しかもいつの間に一緒に飯食う関係になったんだ
「無事に戻ってこられた暁には、ヨーイチさんも是非ご一緒に!」
「あ、はい……」
俺はその時初めて受付嬢の名札をチラッと見た
そこにはルシィと書いてある
そしてその一瞬の視線の動きを見破られてしまった
「あ、以前も自己紹介したはずですけど忘れちゃいました?」
そう言ってやや意地悪そうな顔で笑みを浮かべる
「ギルドの窓口担当を始めて早一年。みんなの癒しの受付嬢、ルシィ・アップフィールドですよ~」
「あ、はい……」
挨拶をされるということはとても大事なことだ。おはようとかありがとうは大事だ
でもそこで急に、そうなんすね!よろしくっす!!ってアゲれるようなタイプでもないんだよなあ…
「反応うすっ!」
「いえ、普通にお気づかいありがたいっす。マリチにも言っときますね。行ってきます」
そういって俺は依頼用紙をそっと掴み取ると、そこに書かれている内容を改めて黙読しながら受付カウンターを後にした
後ろからご無事でー!とかなんとか聞こえてくるので、斜め四十五度振り向いて会釈しておいた
―特級・マル秘依頼書0009―
50年ほど前に、連合国軍VS獣人軍団の大きな戦争があった
獣人たちは本来お互いに協力などできない思考回路、協調性であるがそれが実現した理由こそが
『魔王』の存在である
そう。ソーファン世界には勇者はいないが、魔王はいたのだ
何処から現れたかわからない魔王と崇められた存在が3つの獣人族を束ね、戦争になったのだ
戦争が50年前。ではなく50年ほど前というのには意味がある
たしか57年前から47年前までの10年ほど続いたからだ
その時は各国連合の精鋭たちと、当時の冒険者たちの活躍で魔王は倒したのだが……
最近、封印され誰も入れなくなっているはずの魔王城に誰かが侵入した気配があるというのだ
はっきり言って国家を揺るがす重大ミッションだ
それをこんな容疑者の贖罪に使ってええんかい。って気もするが
魔晶石にいろんな情報を記録したり、戦闘記録を詳細に報告したりと
色々と制限も課せられてるからまあこんなものなのかもな
まあたまには一人も気楽でいい
しかも魔王城を制圧した過去の冒険者ってのも、俺だし。
ソーファンで過去に遡って魔王を倒すミッションってやったことあんのよな!!!
ただ、この魔王再来?みたいな依頼は初めてのミッションなので普通にワクワクするやん?
俺は少しだけテンションを上げて指をワキワキすると、転移魔法で封印されし魔王城の門前まで飛んだ




