第33話 ずっと友だった君へ
「無明拳……からの無明拳」
ガン!……ガン!!
必殺拳を二連続で発動させることにより、連携空間「極光」が発生する
俺はそこにすかさず聖球の魔法をぶちこむ
龍の頭部が大きく後ろに揺らめき、側頭部の結晶がはじけ飛ぶ
が、大きくのけぞった頭部は再び遠心力をつけて攻撃してくる
口を大きく開いて噛みついてくるのを、すかさず割り込んだ俺が受けた
マリチはそれを当然のことのように感じているのか、感謝をすることもないし
そもそも最初から回避をする気もないようだ
龍は相変わらずレーザーを撃ってくる
たまにマリチをかすめることもあるが、武術家の膨大なHPで致命傷には至らない
しっぽや噛みつきといった特大物理攻撃に関しては俺が先読みして受ける
「無限羅刹衝」
マリチの両手から放つ衝撃波が、龍の腹部を大きくへこませた
その衝撃で最後まで残っていた星核結晶に大きなひびが入り、バラバラと剥がれ落ちる
「ああ……やっぱり蛇だったんだなあ」
虹色の結晶核をすべて剥ぎ取られた龍は、もはや『龍』とは呼べない
翼は捥がれ、たくさんの角のように伸びていた結晶は全部砕かれ、全身は光沢のある白い鱗でおおわれている
かろうじて残っている小さな四肢が、蛇をまだ龍だと思わせる
「極大雷撃槍」
マリチが腕を振り上げて、巨大な雷魔法の槍を放った
バリバリバリバリ…!!
電撃が龍に当たるか当たらないかのところで謎の障壁に阻まれる
「結晶の鎧がなくとも、そもそも星核の力を吸い取ってるからやっぱ魔法は効かないか」
俺は冷静に敵の動きを見ながら、何が効いて何が効いていないかを記憶していく
が、そんなことは一向にお構いなしの奴がいる
「流星群」
マリチが両手を大きく広げ、すぐさまその手を上にあげる
と、同時に龍の上空に無数の魔法陣が現れて巨大な隕石が落ちてくる
龍の身体に無数に現れる障壁で辺りはまるで昼のように輝く
「漆黒の闇を統べし者、我が求めに応じ疾くきたれ。いでよ冥王」
素早く両手を回して魔法陣を生みだすと、そこから黒い巨大な人型の闇が現れる
「世界を律する滅びの律動。審判!!」
黒いイバラの様なイカヅチがアメノミカヅチに襲い掛かった
それに反応して、龍の全身を包むように虹色の輝きが発生しイカヅチに抵抗する
その最中、龍は上空を見上げて口を大きく開け、そこから大きく首を伸ばしながら振り下ろし、マリチに極大の星核粒子レーザー放射する
「…!!!」
俺はすかさず飛び込み、星核大剣をもって正面に構える
そこに強大な圧力っとエネルギーをもったブレスが襲い掛かる
「おお…!」
左手で柄は持ったまま、その圧力に負けぬよう右手は刀身に添える
ポンポン
俺の肩を後ろから叩くマリチ
今はそれどころじゃないのだが、俺は腕に力を込めたまま必死に振り返る
するとそこにはニヤニヤしたマリチの顔
いや、何。
何の表情なのそれ
次の瞬間
マリチはタタタタっと極大レーザーの攻撃範囲から横に出て、龍の頭部の方に向かっていき‥‥‥
ゴンッ!!
顎を下から殴った
龍の頭部がグンっと真上に伸び上がり、そのままゆっくりと倒れてきて
ズンッツツ……
……落ちた
そのまま動かない
「勝ったのか…?」
だが龍に渾身の一撃を入れたマリチの背中はまだピタッと構えたまま動かない
「お、おいマリチどうなっ……」
俺はゆっくりと近づきながら声かけようとした
するとマリチが倒れた龍から目を離さないまま
左手の人差し指を口に当て、しーーー!っとしている
「……?」
なんかよく分からないが、俺はそのまま黙って龍の姿をみつめる
ホワ
あ、なんか青白く仄かに光った
そして……
少しずつ小さくなっていく……?
シュルシュルと縮んでいき、ついに龍の姿は完全な蛇になり、俺の身長(175cm)とさほど変わらないサイズにまでコンパクトになってしまった
だが小さくなるにつれて青白い発行は強くなっていき
光ながら蛇は空中に浮かび上がった
俺の目線の高さよりもだいぶ高く浮かび上がり、少し見上げるぐらいにまでなった時
キン!
蛇の頭部辺りに白く輝く円盤のような光が現れ、青白い光はまるで輝く太陽の様な白に変化する!!
「綺麗だね」
マリチは腰を低く落とし構えたまま、ぼそっと呟いた
「確かに……」
俺も思わず賛同する
なんせその輝きはとてつもなく、まるでそこだけ昼の様な明るさなのだ
「これがもしかしてアメノミカヅチの本来の姿なのかも……」
「真理知流奥義……無双破滅……」
あきらかに今までと違う神々しい姿を顕した蛇神を前に
俺も聞いたことのない適当な名前をぶつぶつ呟きながら拳にエネルギを溜めていくマリチ
明らかに創作技だがその拳に宿るエネルギーは本物だ
それに呼応して、アメノミカヅチの頭部に輝いている円盤の様な部分に
パリパリとエネルギーが宿り始めたのが見える
「ここで決めよう。……インフィニティフィールド」
30秒間の絶対防御だ。今から繰り出される攻撃をこれで受ける
……タメが長すぎて30秒以上経つとかマジでやめてくれよ…?
マリチの拳が黒く輝くのと、蛇神が輝く光線を出すのと、俺がその間に飛び込むのは同時だった
ブオオオオオォォン
転移魔法の音
「え?」
ブオオオオオォォン
その瞬間。転移魔法の音
「え?」
普段の黒い渦の様な転移空間ではない、白く光る様な渦
「えええーーー?!?!?」
俺たちはどこかに転移されていった
―――――――――――――――――――
そこは以前に一度だけ来たことがある光り輝く空間だった
あの、神獣たちが小さな光となって存在していた場所……
すなわち神界である
[ようやくここまで参りましたね]
この多いなる神獣たちも人間も姿を持たず漂う世界
そこに、いた
「女神…さま?」
あのどこから聞こえてくるか分からない柔らかい音ではない
目の前の女神は、俺に、声を、かけている
[陽一。今までご苦労様でした]
あの時の様な概念のような大いなる存在ではなく
まるで人間を静かに慈しむ存在……
「アステラさまですか……」
俺の言葉に女神はこたえるではなく、少し笑ったように見えた
[この者はわたしの大切なものです。そう、ともだちのような]
女神は自分の手の上に在る小さな蛇を微笑ましく見つめていた
そこら辺で俺はふと思った
ああ……やっぱり女神は言葉を話しているのではないんだ
大いなる意思を伝えてくれているのだ
それを俺が自分の中で勝手に言葉に変えているのだ
[あなたなら成し遂げられると思いました。ありがとう]
ポロっと涙が出た
今の俺には身体がない、魂のようなもの?
……ただ概念として存在している湊陽一だ
泣くという表現は適切ではないかもしれない
それでも……大いなる摂理に報われた気がしたのだ
[還りますか?]
女神は微笑んでいるような気がした
……ん?
還りなさい。
じゃなくて疑問形?
それって……
もしかして……
俺は迷わず言った
「まだ、帰りたくないです」
もうその時には姿は見えなかったが、アステラは確かに笑った
その瞬間、白い光が世界に満ち溢れた
俺の存在はその空間から柔らかく押し出される
光の中に意識が混ざる
そしてどこかに押し流されていくような……
―――――――――――――――――――
「はっ!!」
光の奔流を抜けた瞬間、俺は目が覚めた
そこには澄んだ青い空と、三人の女性の顔
「あ、起きた」
「お兄生きとう?」
「きっとまたどこかに行ってたんだろうね」
『おかえりなさい』




