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第31話

――――――――――――――――――――――



渦から出たところ、そこはいつも俺たちを迎え入れててくれた古代樹の森

ほんの少しだけカビ臭く、爽やかな風が吹くその場所は

まるで田舎のおばあちゃんちの様な安心感がある


「マリチさん……!」

「マリチは!?」

俺たち二人は庭を駆け抜けて、木造平屋のログハウスへ向かった


「ん?」

「なんか張り紙してある!?」  


『しばらくキノコ集めに出かけてます('ω')b』


「マリチィーーーーーー!!!」


だが、光る扉は向こうに見えているのだ

龍がどこに転移したのか、俺たちにそれを知る術はない

が、扉があるということはそういうことなのだろう


もしこちらの世界のどこかに転移したのなら、マリチが‥‥‥

とは思ったが、今は一秒でも早く龍を止めなくてはならない


「行くしかない」

「はい!」


俺たちはこれで最後になるかもしれない、光の扉をくぐった



―――――――――――――――


淡い光の道を駆け抜けたその直後


……夜か


辺りは闇に包まれていた

眼がまだ慣れていないためほとんど何も見えないが、ここがどこかは予想がつく


転移魔法は一度行ったことのある場所しか行けない

龍が現世でゆかりのある場所はあの奥宮のあった場所しかないはずだ



……だが妙だ。静かすぎる

あんな巨体、境内に隠れる場所などほとんどないはず

さらに言えば黒竜が現れた際に、ほとんどの木が吹き飛んだ

何処にいても剥き出しになるはずだ


いくら夜の闇の中だとは言え、まったく見えないということは…

ここではない別の場所に現れているのか……?


俺は戸惑いの中、一瞬だけ後ろを振り返ってみた


遠くには町の小さな光が綺麗に見えている


やはりここはあの奥宮のあった高台

そして扉がつながったということは……


はっと気が付いた


暗すぎる


昨日はちゃんと月が出ていた

今日の月齢はわからないが、満月に近い頃合いではなかろうか


なのにこの闇の深さ

俺は本来あるべき月を見上げた



ある程度想像していた通り、そこにはいた

異世界と現実世界を結ぶ伝説のモンスターが


ただ……その姿が


「カオスドラゴンになっとる…」


星の核の上で戦っていた時は長い身体をくゆらせる蛇体だった

今はそこにドラゴンの様な翼膜を備えた巨大な翼を持っている


もしかして単純に、飛ぶ必要がない時は収納可能?


元々ソーファン世界で戦った時は無駄にホバリングしていた

ゲームだとバトルフィールドは閉鎖空間なので、その飛行能力にさほど意味はなかった


が、ここは何でもありの現実世界


「マズすぎるよな…」


小さな蛇神様だったときのアメノミカヅチがどういう神さまで、どういう経緯でここに祀られていたのかは分からない


だが無理やり召喚されて暴走するほどのエネルギーを与えられてモンスターに成ってしまった状態で、ここに戻ってきたのだ


女神さまの意思でもあり、異世界の精霊たちの意思でもある

そして俺の意思としても今の両方の世界の変革は望まない


二つの世界のバランスを取る者(自称)として

大変申し訳ないのだが、龍の神さまにはもう一度お鎮まりいただこう



俺が負けたら、この龍はこの世界を滅ぼすかもしれないしな……

あ、でもそうなったら次は別の世界からたくさんの勇者たちがやってきて

アメノミカヅチを倒すという第二章が始まるかもしれないな


それはそれで面白そう……


とかいって、負けてやる気もないけど


さあやるか


クラスはソードマスター。基本的に攻撃に全振りだ

サブクラスにルーンナイト。時間制限のある絶対防御アビの保険用


右手に星核剣(星核を破壊する力)、左手にエクスカリバー(回復付き)


星核結晶を纏うこいつに魔法は基本効かない

圧倒的物理攻撃で速攻をかける


『瞑想』

しばし貯めることにより定期的に力が溜まり、武器スキルによる剣技を発動できる


さあ、アイツがここから動き出す前に始めるか

「覇剣・真空斬」


俺の剣から放たれた闘気の刃が、白く輝き闇の中を駆け上った


んー……


飛んでいく光がだいぶ小さくなっていく……

いや結構離れた距離のとこにいるな……


ボォン


かなりの上空で着弾したのが見えた


キョロ


空に突然二つの星が現れた

青白い星の光はまっすぐにこちらを向いている

龍の目の輝きが、攻撃した俺を認識したことを知らしめる


よし。これでいい


一番恐ろしいのは俺のことを歯牙にもかけず、どこかに飛び去られることだ


まあ……あれだけの巨体……何処にいてもすぐ見つけられそうだけど


何にせよ理想は朝までに誰にも知られずに決着をつけることだな

と、思ったのだが


ドシュ


はるか上空から光線が照射された


もちろん避ける


が、相手は固定砲台ではなく空にぷかぷか浮いている

しかも全身がくねくねと動き回る龍体

空の上で1センチ動いても、地上では数メートルのズレになる


俺は走りながら光線を避け、剣気を飛ばして攻撃する


さほど俺を細かく狙う気はないらしい

元が蛇だったら、知覚器官は赤外線探知かもしれないな

なら暗闇は向こうに有利だし、かなり正確に位置を把握はしてそうだが


……まあ向こうは神話の存在だ

人間など取るに足らぬ小さな存在とでも思っているのかもしれない


光線は俺のいる周辺をでたらめに蹂躙し始めた


向こうで戦った時にも思ったが、光線のように見えているこれは、どうやら星核結晶から放たれる謎の粒子の放出らしい

結晶に魔力を流すと、少しずつ結晶は分解しながら大量のエネルギーを、しかも様々な形状で放出できる

これこそが古代王国を支えていた力だ


いまのこのレーザーはただただ高出力の物理攻撃として放出されていて

それが通過した後の地面には深い亀裂が入っている


そしてでたらめの発射されているせいで、周囲を縦横無尽に切り裂いているのだ


これ、山が崩れるぞ…



そしてなんというか……

ぜんぜん……降りてこない!!

これがもしゲームのイベントバトルだったらクソゲー過ぎるだろ!


飛行能力があって飛び道具もあるのだから当然と言えば当然なんだが

このままでは時間ばかりが過ぎてどうにもならない

ある程度時間がたたないと撃てない闘気斬ぐらいでは、あの龍は墜とせない


マズいな……


龍は俺を倒すことにはまったく執着のない、ヘイト無視モンスターだ


このまま朝になったらおそらく町中に光線をぶっ放すぞ


魔導士クラスに切り替えて、流星群であいつを墜とすか?

だがさすがにクラス切り替えや、大魔法の詠唱時には隙ができる

一瞬とはいえ、あのレーザー攻撃を喰らった場合、耐えられる保証はない


やるしかないか……


俺が覚悟を決めたその時だった





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