第24話
「次はどうすればいいの?」
聖獣の宝石を手に入れた曜
さてここからが大変だ……
なぜなら次に必要なクエストは、だいたいの冒険者が嫌がる
『世界中を回って順番にいろいろ集める系』だからだ
「世界中にある精霊石を巡って各属性の精霊力を集める。だな…」
「素敵だけど大変なやつだよねそれ」
この世界には様々な精霊力が働いている
世界中に精霊力の強い場所というものがあり、そこに結晶化した力が露出している
まあ具体的に言うと火山に火の精霊石とか、氷河で氷の精霊石とかだ
「私、この世界のこと好きになってきてるから結構楽しみかも……」
だんだんと変わっていく曜の態度を、マリチと日枝さんが温かい目で見守っている
「が、その前に」
俺は一つの提案を口にする
「先にサブクラスで黒魔導士を付けよう」
「そっか。召喚士になるまで少しかかるもんね」
日枝さんも同意する
「黒魔導士って?」
ファンタジーを愛するものなら共通認識である、攻撃魔法の使い手という認識が曜には無い
「攻撃魔法のエキスパートだな」
もっとも本来の黒魔法は死や呪いを扱うものだし、白魔法も回復だけではなく自然の力を扱うものなので、昨今のファンタジーにおける黒が攻撃、白が回復などという概念は本当は適切ではないのかもしれないが、我々の感覚ではもうそうなっているので、そこはそれに従う
「この世界にはいろんな種類の魔法があって、召喚士や黒魔導士の他にも回復魔法が得意な白魔導士や、白黒両方の魔法をぼちぼちで扱える私みたいな赤魔導士とかがあるよ」
「そんなに色々あるのに私は黒魔導士限定?」
日枝さんの解説を聞いて、曜は不思議そうに尋ねてくる
「だって曜は回復ってガラじゃないだろ」
「おいなんでや」
本音になると幼少期の関西弁がでてしまうのである
「まあ……ヒカリは好きなクラスをやればいいんだよ」
すべての魔法を極めしマリチがフフンと笑った
と、いうことで次に我々が向かうのはジョブマスターおじさんがいる港町である
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その港町に向かうのに一番手っ取り早いのは船である
曜も転移できる始まりの街から直通便が出ているのだが……
「うわーー!!骨!!ゾンビ!!異世界きつい!」
日が暮れてから乗っちゃうとまあまあの確率で幽霊船に遭遇するのであった
突如隣接してくる不気味な船
そこからわらわらと移ってくるアンデッドたち
定期船には結界が張ってあってモンスター達は船室にまでは入ってこれないのだが、甲板はそこそこ阿鼻叫喚の修羅場となる
いや船室に張れるんなら甲板にも張れるだろって気はするけどそこはそれ
元々のソーファン世界では乗り移ってくるモンスター達を延々と倒し続けなければならなかったのだが、もしかしたら今だともっと手っ取り早くいけるのでは
そう考えて俺はマリチに合図を出した
マリチは小さくうなずくと、片手を振り上げて呪文を呟いた
「業炎」
たちまちマリチの手のひらから灼熱の火炎が湧き起こり渦になる
渦が徐々に収束し、白く輝く球になったところで
「ほい」
マリチは幽霊船めがけてその巨大な炎の塊を投げつけた
ヒューーーーーン……
ボゴン!!!
着弾した瞬間、爆炎に包まれて燃え上がる朽ち果てかけた船
『オオオオオオ……』
多くの断末魔を残してアンデッドたちが浄化されていく
そしてそのままゆっくりと海に消えていった
こちらの船に残されていたモンスターに関しては、炎の魔法剣を振るう日枝さんと俺のエクスカリバーで処理しておいた
「ほらほら逃げてないで経験値を少しでも稼ぐんだ」
「いや無理無理。なんかここだけファンタジーじゃなくてリアルゾンビなんよ」
ふむ。少しずつ慣れてきたとは思っていたが、まだまだ修行が必要なようだな
そしてすっかり日が暮れたころに港町についた俺たち
いつものごとく女子だけの綺麗な部屋と、俺一人馬小屋みたいなところで寝た
夜明けとともに外に出ると港から日の出を眺めているおじさんがいるので、話を聞く
すると夜の砂浜に出てくる幽霊の話が聞けるので、その幽霊がドロップする血塗られた衣(怖)を手渡せば任務完了である
夜までの空き時間に後々必要になる魔導書なども準備し、ぬかりはなかった
と、いうわけでマリチの家に戻ってきた我々
「さあいよいよヒカリの初めての魔法だね」
庭に出て曜と向き合うマリチ
「今まで私を見てきただろうから、魔法なんて簡単に使えるだろうと思ってるかもしれないけど、実は大間違いなのだ!」
「え、そうなんですか?」
曜はいまいち要領を得ないといった様子である
「その意味を教えよう。カオルは精霊魔法をレベルいくつまでつかえる?」
不意にそういわれて、横で見ていた日枝さんが慌てて自分のステータス画面を光らせて確認する
「えーっと…全部レベルⅢまで使えるみたい」
「ではレベルⅢの炎魔法を使ってみて」
「了解」
そこで日枝さんは手をわきわきして、少し交差させてから詠唱を始めた
「炎の精霊よ、赤き力を集め敵を撃つ炎の槍となれ!」
ギュルルルル……ボッッ!!!
すると両手の間から渦巻く炎の槍が現れ、地面に突き刺さったあと爆発して散った
「ぱちぱちぱち。カッコいいね。ありがとうカオル。では次にヨーイチ」
「あ、俺?」
「レベルⅥの炎魔法を使うがよろし」
あーーなんとなくマリチの言いたいことが分かってきたかもしれん
俺はその意を汲んで、片手を少しだけ前にだし、ぼそっと唱えた
「獄炎」
ズドン!!!!!!!
指定を目の前の地面にしていたせいで、巨大な炎の渦がすぐ目の前で爆発する
「うむよろしい。さあヒカリ。この違い分かった?」
心の準備など全然してない状態で急に自分の番になったので、曜はしどろもどろに答える
「あ、えーと……薫先輩の方がカッコいい……?」
マリチの目がキュピンと光る
「どうカッコいい?」
「あ、なんだろう。動作とか呪文とか……?」
「それな!」
マリチが大きくうなずいた
「それだよヒカリ。才能あるな」
「えっ?えっ?」
ニュアンスでしか答えてないのにやたら褒められてかえって戸惑う曜
その様子をしばし眺めた後、マリチが再び前に進み出た
「魔法ってね。自分の魔力を放出しながらこの星の様々なところにいる精霊たちに語り掛けて作るんだ」
マリチは掌を上に向けながら少しずつ大きな炎を生みだしていく
「呪文の詠唱や、魔法を放つときの仕草に実は決まりはない」
今度は指を上に伸ばして先ほどまで作っていた炎の球をくるくると回しだす
すると炎は蛇のように形を変え、マリチの指先でうねり始める
「魔法使いはそれぞれ自分がもっとも精霊に語り掛けやすい言葉や、動きを選んで魔法を使うのさ」
今度は使っていなかったもう一つの手も同時に動かし、空中で両手を交差させながら回す
「……かけまくもかしこき偉大なる炎の精霊よ、星々を生みだした始原の力、古の眠りより覚め、すべてを焼き尽くす力となり給いますようかしこみかしこみもまをす~~」
マリチの詠唱と共に超巨大に膨れ上がった炎は輝きを増し、赤は徐々に白となる
眩しいほどの光を放つ炎はやがて完全なる球体になりマリチの上に浮かび上がった
「とうっ」
そしてそれを最後に誰もいない地面に放り投げた
白く輝く小さな太陽の様な球体は、ふわふわと数十メートルほど進み、そこでポトっと地面に落ちた
その瞬間
ドグッォオオオオオオオオオン!!!!
大爆発が起きる
『わーーーー!!!』
曜と日枝さんが叫び声をあげる
伸びてくる爆風を手のひらで押し返すように風を起こしつつ、マリチはまた元の位置に戻ってきた
「と、このように。詠唱とはあくまでも魔力を練って魔法を打ちやすくするための儀式なのである」
いつものテンションで話を続けるマリチだが、曜は眼を見開いたまま硬直している
「なのでヒカリはこれから魔法を使うにあたって、自分にとって一番しっくりくる詠唱や動作を意識しながら唱えていくのがよいぞ」
「あ、はい。師匠。よくわかりました……」
「あ、はい。じゃなくてハイ!」
突如鬼教官になって言い放つマリチ
「ハイ!!」
「いいね」
直立不動になって言いなおす曜をみてにっこりと微笑んだ




