第23話
-魔石峡谷-
入口の荒れ地から少し奥に入ると、そこはまるで迷路のように入り組む巨大な峡谷になっている
ここら辺になると徐々に魔力をもつ鉱石が採掘可能となっており、鍛冶ギルドの依頼でここに何度も足を運ぶ者も多い
が、ここには低レベルの冒険者の侵入を困難にする大きな理由があった
それは……
「なんか地面に穴がいっぱい開いてる」
曜はなんとなく穴を避けながら恐る恐る歩いていた
「それな。メタルイーターっていう巨大ミミズの通った跡」
「えっ」
そう。この辺りの地中には鉱物を好んで採食するモンスターが潜んでおり、採掘に夢中になっている冒険者の付近に突如現れ、攻撃してくるのだ
ちなみに彼らはカルシウムもそこそこ好物なようで、冒険者を魔法で屠ったあとしばらく放置して、骨になった頃合いを見計らって食べると言われている
「異世界こわ……」
「ま、まあそこまでレベルの高いモンスターじゃないから」
日枝さんがそう呟いた瞬間
ヌルッ
曜のすぐ目の前に1メートルはあろうかという巨大な触手が突き出てきた
「ぎゃーーーーでたーーー!!」
反射的にトゲ棍棒を振りかざす曜
しかしメタルイーターはその攻撃をぬるっとかわす
意外に俊敏な動きだ
そしてそのかわした反動でタメを作り、一気に曜の方に身体を伸ばして攻撃を
ガシッ
しようとしたが出来なかった。
何故なら一瞬にして間合いを詰めていたマリチが触手の首をむんずと掴んでいたからだ
本来ウナギのようにぬめぬめとしている厄介な生物だが、彼女の小さな剛腕は一切ミミズの自由を許さない
そして
「とりゃ」
ミミズを地面から一気に引きずり出し、空中にブンッっと放り投げる
物凄い遠心力で引きずり出されたミミズの胴体は5~6メートルはありそうだ
「風刃」
投げ飛ばした手から小さな竜巻のように風魔法が放たれ、メタルイーターは細切れになって地面に散らばった
ボタボタボタボタボタ
「か……かっこいい!師匠ーーー!!!」
あ。曜がマリチに懐いた
「と、こんなふうに外には危険がいっぱいなので、気を付けようね」
マリチは水魔法で手を洗いながら笑った
洗った後は極小のつむじ風を生みだして手に付いた水を飛ばしている
「はあ……魔法ってかっこいいですね」
「お。曜ちゃんもやっぱりそっち系?」
マリチの細かい魔法操作を感嘆の目で見ている曜
それに対して日枝さんがうんうんと頷く
「そういうの出来るようになりたいですね…」
女子会パーティーになって会話で徐々に蚊帳の外に置かれつつある俺はすかさず横槍を入れる
「召喚士は自分で魔法は使えないけど、サブに何か魔法系をつければいけるな」
ソーファン世界の冒険者は『クラス』という職業の力で戦っている
通常は一つのクラスしか付けられないが、特定のクエストをこなすとサブクラスという二個目のクラスを付けることができる
通常サブクラスはメインクラスの半分の力しか発揮できないが、メイン、サブともにマスターレベルまで極めると、サブでもメインと同じ力を発揮できる
俺やマリチがなんでもありに見えるのはそのせいだ
「と、いうことは、召喚士のつぎはサブクラス習得が目標だね」
「そこからレベル上げと装備集めだな」
「やることが多い……」
俺と日枝さんはそれを聞いてにやにやする
ゲーマーにとってやらなきゃいけないことが大量に増えることは供給過多による嬉しい悲鳴だからだ
「あ。」
「お。」
マリチがバラバラのボタボタにしたメタルイーターの一部にキラッと光るものが見えた
「聖獣の宝石だ」
俺の呟きに対して、本来の目的を思い出した曜は嬉しそうに声を上げる
「あ、これで解決!?」
「うーー…ん」
それに対して厳つい顔をしている腕を組んだマリチ
「本当はヒカリが自ら倒した奴から出るのが望ましかったけど……」
「え、ダメですか…」
「まあいいか。持ってこ!」
「あ、よかった」
ゲーマーにとってアイテムドロップは死活問題だ
一戦目で出ることもあれば、何日かけても出ないこともある
これらは確率の神のいたずらによって左右されている、もはや天命だ
物欲センサー(出て欲しい時に出ない)などという概念もある
「せっかくドロップしたアイテムを放棄するのもあり得んしな」
俺はねちょっとした液体のついた宝石を拾い上げ、ん。っと渡した
「いや、なんかついてて、汚……」
「現代人め……」




