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第22話


「いやまてマリチ」

「え?」

「曜ははじまりの街しか行ったことがないから転移できないんだ」

「あっ!てことは……」

「マリチの家の庭に一人でとりのこされとる」


てことで再びマリチ家に戻って、途方に暮れる曜をまず街に案内

そこから飛空艇に乗って辺境の街に移動

さらにそこから馬車に乗って、最寄りの村まで移動

そこから馬を借りてようやく目的地に到着した(5時間)


「ここが水晶渓谷……?空飛ぶ船も、というか馬車も、馬も……全部初めてすぎて……」

「さすがに疲れたか」

「私はなんかけっこう慣れてきたかも」

日枝さんは小柄で体力があるようには見えないが、あまり疲れを滲ませてはいない


「ほいっと」

マリチは曜の胸のあたりに手を伸ばすと、回復魔法をかけた

緑色の淡い光が曜の身体を包み込む


「あ、すごい楽。異世界便利すぎる」

「んじゃ準備おけ?では改めて……この場所のどこかにある赤い宝石を探すよ!」

仁王立ちになって渓谷の奥を力強く指さす


「どこか……なんだ?曖昧過ぎない?」

「具体的にはモンスターが飲み込んでいるので、片っ端から倒します」

「最悪なんだけど!」


俺の抑揚のない呟きに曜が毒づく

「あ、でも奥にいる強い個体ほど落とす確率が高いから、皆でやればきっとすぐだよ」


「カオル。それはダメだ」

マリチは割と真面目な顔をしていった


「これはヒカリのレベル上げも兼ねている。戦いながら少しずつ奥に行く」

「なるほど……あ、でも」


そこでふと日枝さんが何かに気づいたようだった

「レベル差補正だね」

俺はおもむろに言った


ソーファンの世界ではレベルがあまりにも違うもの同士が一緒に戦うと、低いレベルの者には経験値が入りにくいという補正がある


俺とマリチのレベルは120


日枝さんが75


(ちなみに世間の最高レベルは初期のソーファン上限から推察するに50だろう)


曜は1


俺たちと組んだら曜には経験値が0か1しか入らないし、日枝さんと組んでも微々たる量になってしまう


実際に戦う方が強くなる実感もあると思うし、とてもいいシステムだなと俺は思う


「だからヒカリは一人で戦いながら進むのだ」

「え!!」

「もちろん手伝いは惜しまないし、なんなら死んでも生き返らせるから大丈夫」

「あ、でもさ……」


日枝さんは曜の格好を上から下まで眺めて見てぼそっと言った

「ヒカリちゃんって制服だけで防具着てなくて、武器も素手では」


ほんまや。


自分たちの重装備に慣れすぎて忘れていた

今の曜は制服という名の『ぬののふく』しか装備していなかった


「すっかり忘れてたね」

マリチはそう言って舌を出しつつ、右手から凶悪なトゲトゲのついた片手棍を取り出し手渡した

「これもあれもそれも。強さだけじゃなくて可愛さも大事」

半透明の謎の物質で出来た兜、謎の文様が刺繍されたローブ、常に淡いオーラが放たれているスカート……ドラゴンの被膜で作られたグローブ……

「ふう……これぐらいでいいかな」


いや過保護すぎるだろ

元々のステータス値は全部7前後なのに、装備補正で100ぐらいになっとるがな

厳しいのか甘いのかわからん感じになっとる


「試しにそこで飛び跳ねてるスライム的なやつをそのギガトゲハンマーで殴ってみよっか」

「赤いのは強いから青いのがいいよ…って」


日枝さんがそれを言い終わるか終わらないぐらいのタイミングで曜は一番手前にいたバレーボールほどの赤いぷよぷよの物体を、スリッパで虫を叩くぐらいのぎこちない動きでぺしっと叩いた



ドギャバスバゴンン!!


叩く動作からは想像できない轟音がしてスライムのような生物は消滅した

というか地面ごとえぐれた


そして……

シュワ~ン


曜の身体が微かに光に包まれる


「あ、曜ちゃんレベル2になった」

日枝さんが拍手をする

「な、なんかわからないけど嬉しいです。ありがとうございます」


「ちなみにソーファンの世界では魔法は勝手には覚えない。魔導書を読むんだ」

「魔導書はどこに?」

「レベルが上がったら街に戻って買いあさる」

「魔法って私もつかえるようになるんだ?」


それを聞いて日枝さんがニヤリとしながら指先にボッと炎をともした

「この前まで一般人だった私も今やこれだよ」


なかなか新しい価値観を受け入れられてなかった曜も少し目が輝く

「異世界、強すぎる」


「さあどんどん行くよー!」


スパルタと見せかけたマリチの超過保護により曜のレベルはサクサク上がった

小一時間ほど戦ってようやく叩い方も様になってきたころ


「レベル30か」


曜のステータスを『調べる』しながら俺は呟く


「やっぱ弱いやつからは宝石はなかなか出ないね。そろそろ奥に行こうか」

「枯れ谷から峡谷を抜けて、荒れ地を通って最深部にある鍾乳洞に入ろう」

マップを開きながらルートをチェックする俺


「ここは?」

その横に日枝さんが立ち、最深部よりさらに奥のマップの、道の描かれていないところにある?マークを指さす



「星核の結晶があるところだね」

「へえ」

「始原武器に星核の光を集めていけば星核武器をつくれるよ」

「そうなんだ!私もそれ作れるかな」


日枝さんは目をキラキラさせて俺を見上げてくる


日枝さんは小柄だ

たぶん身長150センチとかだと思う

それに対して俺は身長175センチ

(ついでにいうとマリチはもっと小さくて、多分130ぐらい)

なんというかこう……もしかしたら俺って小柄な女性が好きだったりするのか?


いやいやそんなんどうでもいいんだ今は

俺は顎に手を当てつつ、作成の手順を思い出す


「まず材料のプロトナイト鉱石を探して、それをハイゴブリンの長老に渡して武器を作成し、それを持って世界中の星核結晶を巡り歩く」

「あー……結構手間かかるねえ……」

「まあでも星核結晶の場所を記録しとくだけでも後で回りやすいしちょうどいいと思うよ」

「なるほどね。ありがとう」

だいぶソーファン世界に染まってるな

とてもいいことだ

一人で考えを巡らせてうんうん頷いてたりしてるし


「せいかくぶきって何?」

身長がスラっと165センチぐらいある曜が話に入ってきた

「いや、背がね……じゃないわ、この星のエネルギーを抽出したハイエンドコンテンツの最強武器群」

「なんでゲーマーとかってわざわざ分かりにくく言うんだろうね……」


マリチが横で笑いながら言った

「私もわからん。でもヨーイチについて行っとけば大丈夫」



そう言うとマリチは、奥に向かって歩き始めた俺に続く

曜は小さく鼻を鳴らすと、仕方なさそうについてきた

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