第19話
確かに聞いた
異世界の女神『アステラ』の声を
でも何を探すのだろうか
それはこのまま運命に流されながら冒険していれば見つかるものなのだろうか
……などと考えながら、俺はマリチの家でラーメンとうどんを足して二で割ったような料理をすすっていた
隣では妹の曜、日枝薫が並んで同じように麵とスープを口にしており、向かい側にはマリチが座ってこっちを見ている
「まあ事の経過をとりあえず話してもらおうか」
マリチはいつもののほほんモードよりは、ちょっとだけ真面目な顔をしている
―――少しだけ時を戻そう
―――――――――――――――――――――――――
「また違う子が増えたね!?」
扉をくぐるとそこには頭に手ぬぐいを巻いて畑作業をしていたマリチがいた
異世界から現実世界に転移するときはどこに出るかもわからないし、複数人で入るとバラバラに出るのに、現実世界から異世界に行った時は必ずマリチの家の庭に出るらしい
そう言いながら手にしていたクワのような道具を横に置き、空中にポンっと水の塊を出し、そこに手を突っ込んでじゃぶじゃぶ洗っている
「あああわわ……ここはどこ…」
意識混濁、茫然自失になっていた妹の曜がようやく口を開いた
「その娘は?」
マリチが混乱している曜に状態異常解除の魔法をかけながら話しかける
(横に、効果がない!と出ているが)
「俺の妹のヒカリ」
「ああ~なるほど」
マリチは曜を見ながらにやりとしている
曜はマリチと組んだことはない
俺が二アカウント目を作ったのは曜を引き込んだ時期よりは少し後のことだ
「お久しぶりですマリチさん!」
「こんにちはカオル!」
現実での1日はソーファン世界の24日
マリチにとってはそこそこお久しぶりなのだ
とはいえ彼女は人よりも長い時を生きる魔妖精族
(人の10倍ぐらい寿命があるらしい…)
どのように時間経過を感じているのかはわからないが、再びであった俺たちをみてにこやかな表情をしている
「単刀直入に言おう。マリチ。日枝さんと曜を鍛えてくれ」
「ほう……」
マリチの目がギラっと光った(ように見えた)
「この……孤高なる大格闘家で」
「うん」
「聡明なる大学者でもある……」
「だよな」
「さらに偉大なる大黒魔導士として比類なき魔力を持つ…」
「まったくその通り」
「博雅なる大召喚士のマリチ=マコチさんに弟子入りしたいと?」
「そういう事ですマリチさん」
後ろに腕を組みながらゆっくりと振り向いてくるマリチのセリフに、俺はきっちりと合いの手を入れて敬意を表する
「私からもお願いしたいです!」
日枝さんは目を輝かせて両手で握りこぶしを作る
「……そこのガールは?」
マリチは曜の方を見ながらやや鋭い口調で言った
「え、あ、えっと私は……」
曜は未だに自分の置かれた状況を把握できておらず目を丸くしていたが、俺は有無を言わさず答えた
「お願いしたい」
「ふむ」
マリチは何も答えず少し雲を見上げた
そして曜の方をくるっと振り向いて
「ごはん食べる?」
――――――――――――――――――――――
「強いってことは自由って事なんだよ」
俺は麺をズズズッとすすりながら言った
その言葉を聞いて、曜は少しだけ身体をぴくっと震わせる
「私は自分一人でなんでも解決できるようになりたくて」
日枝さんは音もたてずにスープを口に運んでから静かに言った
「私は……別に強くなりたいとかそういう気持ちはないんですけど…」
曜はうつむき加減に呟いた
「なるほどなー。ほいっ」
マリチは両手をパンっと叩き合わせた
すると姿を隠していたカーバンクルがぴょこっと姿を現す
そして曜の肩に駆け上がってくる
「えっ!これは何!?」
曜は自分に乗っている謎の光る動物を見て驚きをかくせない
「それはヨーイチがヒカリに付けてた守護聖獣だねぇ」
マリチはにこやかにそう話し始めた
「私は状況わかんないんだけどさ。たぶんヨーイチの親心的なやつなんじゃないかなあ」
「守護……聖獣?」
「うん。みんなだいたい食べ終わったみたいだし、ちょっと外に出よか」
全員促されたままに庭に出る
そしてエプロンとミトンをつけたまま、マリチが詠唱を開始する
「氷河」
バギャア!!!
呟きと共に、直径10mほどの巨大な氷の山が下から飛び出した
「ひっ!」
身をこわばらせる曜
「じゃあヨーイチどうぞ」
「オッケー。聖獣の守護・ミナトヒカリ」
曜の周りに輝くシェルターのようなものが出現する
「!」
「雹」
マリチの呟きと同時に氷の巨大な柱から小さな氷の粒が大量に飛来する
「!?」
ガガガガガガガ
それらはすべて光の壁に阻まれた
そしてさらに
「聖獣の攻撃・突進」
俺が命令を加えると、カーバンクルは氷塊に突撃し
バギャアアアア!!!
巨大なヒビを入れた。そして巨大な氷の柱はガラガラと崩れる
「……!」
「とまあこんな感じでさ」
マリチは曜の方を向いて笑った
「ここはこういう世界。この力があれば大抵のことは解決できちゃうよねえ」
「……」
「そして多分ヒカリに何かがあったから、ヨーイチは守護聖獣を付与してたんだと思うよ」
しかし曜はやはり言葉を発しない
その話を聞いていた日枝さんは明るい声で言った
「もしかして曜ちゃんもソーマファンタジー知ってる?」
「え?あ、はい‥‥‥」
「私もなんだ~。そんでね、信じられないだろうけど、ここはそのソーマファンタジーの世界だよ!」
日枝さんは少し大げさに両手を開いて、この世界を紹介するかのように笑った
「ゲームの話じゃ……」
「私で良ければゆっくりお話しさせていただくよ。私も最初は意味わかんなかったし」




