第13話
ソーファンの世界では星の持つエネルギー『星核』が鍵になっている
その力が様々な場所で力の結晶となり人々に恵みをもたらしている
古代王国はその力を意のままに操り繁栄したが、やがて巨大なエネルギーの暴走により滅びた
俺が最後に追加コンテンツで倒した『カオスドラゴン』は、暴走した星のエネルギーを喰わせて鎮めるために作り出した人造の神獣である
もちろん星のエネルギーは喰らいつくせなかったし、限界までそれを吸収したせいで神獣も暴走したというファンタジーあるあるなのだが
天空都市『トュリーヤ』には、超古代文明時代の王宮や、星核の力を取り出したり制御するための研究所などが多く残されている
なおこの世界には暴走したカオスドラゴン(暴走する前はそんな名前ではなかった)を倒すために開発された武器がいくつか残されており、それがこの世界における最強の装備になっている
俺の持っている片手剣、両手剣、マリチの持っている両手拳、両手杖はすべてその『星核装備』だ
なお、この世界だとまだ実装されていない段階だと考えられるので、俺たちと他の冒険者たちの間には越えられない壁があることになる
「以前ミッションで来た宮殿とはまた違う場所だね」
俺はリアルのマリチに会ってからそんなにまだ冒険を共にはしていない
にもかかわらずミッションを一緒にクリアした記憶があるという事は、やっぱりずっと二アカウント目でプレイしていたマリチなのだ
この世界すべてが分からないことだらけではあるが、マリチの存在はその中でも一番の不思議だ
「ほんとに空の上にあるんだね……こっちの世界に来てから感動の連続だ」
「ね」
「最初ここに来た時は戻れない可能性を考えて絶望しかけたけど、今は好奇心がそれを上回ってる……」
日枝さんが眼下に見える雲を眺めながら言った時、横にいたマリチが小さく呟いた
「わたしはヨーイチたちの世界を見られないのかな」
え?
俺は思わずマリチの顔をみつめた
マリチは遠くの空に浮かぶ雲を見つめたままだ
「マリチさんも私たちの世界に来れたら面白いのにね」
マリチが何者か知らない日枝さんは無邪気に言った
だが異世界の住人であるオークや、様々なモンスターたちが現実世界に来たのであれば同じく異世界の存在であるマリチがあちらに行くこともあり得る
もしそうなったら……
妹?ってことにする?('ω')
冷静に考えて、マリチが現実世界に来られるぐらいならば、俺のこの力も失われないだろう
きっとそれらはつながっているからだ
てことは何が起きても対処ができるだろう
例えば警察沙汰とかになっても、世界ごと滅ぼせるだろう
それならほぼ俺の分身でもある最大の理解者と冒険しながら生きていけたらそれはそれで……
「ミナトくん?」
おっと
俺は堅実に生きている
けど心のどこかで非日常を求めてゲーマーもしている
俺にとってファンタジーゲームはただの時間つぶしではなくもう一つの人生だ
「なんかボーっとしてる……というか集中しすぎて危ないよ」
「うお!!」
無意識のうちに歩き進んでいたらしい
目の前には足場がなく空が広がっていた
「危なかった…」
何故ならソーファンの世界には飛行手段がない
もしかしたら召喚した霊獣に乗ったりできるかもしれないが、もともとシステム的にできなかったことを行うには検証実験がいる
俺は神話や昔話や伝奇が好きだ
古今東西、運よく強大な力を授かるも欲にまみれ、調子に乗って身を崩したり不幸になっていく物語はたくさんある。そしてそれは後世の人々の教訓となっている
なので今のこの無双状態でも決して浮かれたり油断したりしない
それが俺という人間だ
「落ちても転移魔法で飛べばいいから大丈夫だよ」
「それもそうだね~」
女子二人が笑い合っている
多分元々の性格が二人ともポジティブなんだろう
とその時
「お三方ーーーー!!」
遠くから俺たちを呼ぶ声がした
見ると共和国技師団の隊長の人がこちらに向かってきている
今更だがこの世界にはいくつかの国家がある
その中でも中央に位置する三国があり、ソーファンの世界ではプレイヤーたちが出発地点を選択できる国でもある
それが騎士団を擁するファース王国
魔導士団を擁するセカド連邦
技師団を擁するサルド共和国
の3つの国家だ
ちなみに俺とマリチは魔法連邦の出身である
理由は単純に魔法とかカッコいい。だったのだが
そして今走ってきているのはサルド共和国技師団の副団長だ
「お三方は古代文明にも精通しているとお見受けしました。しばし待機したのですが戻ってこられる様子がないので我々冒険団も転移装置を使い、この伝説の天空都市トュリーヤに到着した次第です」
技師団副隊長は眼鏡のおじさんなのだが、物腰柔らかく丁寧な人だ
肩でぜーぜー息をしつつも丁寧に説明してくれる
「転移装置の周辺の建物を調べていたところ、文献に合致する記載を見つけて報告に上がりました」
「ありがとうございます。お聞かせ願いますか?」
まあまあ社会不適合者の俺
ひっそりと小人数で古代樹の森に住んでいたマリチ
現代生活で様々な人間とコミュニケーションをとっていた日枝さん
当然政治的な交渉や話し合いの適任者は彼女なわけで、俺にとってはとてもありがたい
「はい。天空都市はいくつかの区画に分かれていて、多くの転移装置でつながった複雑な構造になっています。そして我々がきたこの場所はどうやら……古代の超兵器のようです」
「兵器?」
「はい。古代王国の時代にも獣人や蛮族はたくさんいました。もちろんモンスターも。ここは地上にいるそれらを攻撃するための兵器が備わった区画のようです」
おおー……天空都市が地上攻撃用の武器を備えているのはお約束だよな
「それって……いまでも機能しているんですか?」
日枝さんの質問に、副団長は静かに答えた
「わかりません。が、いまだにこの都市が天空に浮かび、転移装置が防衛システムに護られて機能していたことを考えると、その能力も失われていないと考えるほうが妥当かと」
「ふむ。てことは、ぶっ壊すってことだね」
マリチは一瞬空……いや、ここにいるのがすでに空の上なので、天を見上げて考えるような仕草をした後、当たり前のように言った
「おー……さすがマリチ」
「確かにそんな兵器があるのなら、破壊したほうが世界のバランスは保たれる…」
ゲーマーとして異世界を長らく冒険してきた俺の本能も同じ回答だ
俺より常識人で冷静な日枝さんもそれに賛同している
が、副団長の表情はやや曇っていた
「そうしたいのはやまやまですが……我々はこの件を本国に報告し、指示を受けなくてはならないんです。なのでとりあえずは兵器の中枢や操作区画を探すのに再び探索活動に入りたいと思いますのでよろしくお願いできますでしょうか」
口調は丁寧だが、有無を言わせない圧力がある
「うーん。まあいっか。んじゃ行こう」
マリチはすたすたと歩きだした
追いかけるように日枝さんもついていく
なるほど面白いことになった
実はこの世界がまだ経験していない未来のミッションにおいて、天空都市トュリーヤは古代王国の生き残りによって地上に破壊光線をぶっ放すことが分かっている
そのミッションではこの場所に来ることができないのでそれを阻止することはできず、結局その古代人を倒して決着をつけるのであるが……
もし今その兵器を破壊できるのであれば、本来ソーファンに存在するミッションが改変され、未来が変わることになる
……それはいいことなんだろうか
それとも何かしらの理由でそれは止めることができず、本来のミッションが遂行されるのだろうか
だんだんとわからないことが増えてきた
そういえばここに来た時に俺はこの世界の理である『創世の女神 アステラ』に会った
会った瞬間にソーファンの最終ミッションでも邂逅した『女神アステラ』その人だと瞬間的に悟った
明らかに人知を越えた存在だという実感があったからだ
なのでそこに大いなる力が働いてることに疑いの余地はない
女神は現実世界とソーファン世界をつなぐ何かしら重要な存在なのだ
うん。やっぱりそうだな
俺のとりあえずの目標は創世の女神に再び会う事。だ
そうすればこの異世界と現実世界がまざりあっている秘密も解ける




