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共同生活(6)

俺は全身の激痛で目覚めた。

体は動く。

まだ…いけるな。

地面のから起き上がると、黒いインカムが落ちていた。

「支援要請‥‥」


良い目覚めとは言えねぇな


兄弟がそう言った。

「支払った代償分は取り戻したい」

「脅威度を更新してくれ」


測定不能‥‥

暫定的にウォーマシンクラスの脅威度って事にしてる


「兄弟‥‥気が合うな、しかも殺さないように手加減された」


こっちは手数が同じなら勝ち筋はある。

それはあり得ない前提だから放棄するぜ…

ポイだよ


「今日は‥‥良い日だ」

俺は軋む体を起こす。


ポジティブだね~~~

人類のそういう所だけ見習いてぇ


「ションベンの色を見る楽しみが‥‥増えた…ぐっ」


後で結果を教えてくれよ

赤飯でも炊くか?

サッサと詫び入れて始祖に下った方が得だぜ


「そうもいかん…あいつは嫌いだ」

「なにもかも暴力的だ…俺を見下している」

器用な事だ。

徹底的に痛めつけておき、骨は折っていない。

‥‥あの存在と仲良くする?

断固拒否する。

文明的な対話を否定する存在と和解などあり得ない。

「ん?」

痛みは残るものの、体が動く。

マッスルスーツに馴染みのあるアシストを感じる。


ブロ…支援いるだろ?


「支援に感謝する」

「くそ…体中が痛い」

痛いのは体だけではない。

俺と戦友たちの何が分かる‥‥。

彼らは間違いなく教義のために死んだ。

でなければ東方聖騎士団序列10位の俺が生き延びている事の説明がつかない。

彼らが俺の傍で見守っているだと‥‥

彼らは責務を終え、主の御許で待っている。

だが…俺はそこに行かない。

まだ終わらない…。

終わってはいけない。

人類のために、この誓約をまだ果たしていない。

「兄弟…分かるだろ、俺には語彙が少ない」

「今の気分を言ってくれ‥‥」


ファッキンシット!

あんのクソアマ覚悟しやがれ!

これで良いかい?


「そうだ…良い支援だ。感謝する」

まだ…やれる。

彼女を自由にしなくてはいけない。

不当な‥‥

「‥‥」

一瞬意識が途切れる。

そうだ…ふとうな…

「…」

「支援要請。拠点まで運んでくれ」


良いぜ。

寝てろよ。


なんだ…。

そうだ、彼女の顔だ。

明るいひょうじょう‥‥

取り戻す。

始祖じゃない。

駄目だ‥‥思考が断片的で。

体が勝手に拠点に向かっている。

もう一戦持つか‥‥

そんな事はどうでも良い。

深く呼吸を整える、内臓を痛めているのか激痛が走る。

「ん…ぎ」

脳に酸素を送り込み、思考を明瞭化させる。

激しい痛みが全身を襲っている。

それら全てをねじ伏せる。

自分の意志で歩く。

兄弟の支援はパワーアシストに切り替わった。

「視野内の対象物に対するキネシスという線は切っている、推論で良い情報が欲しい」


座標…じゃねえか?

ブロの座標に対して干渉しているように思った。

打つ手がねえな


「そうでもない」

「相手は殺さないように出力を絞っている」

「それを逆手に取る」


相手の認識より先に動き続けるって事かよ

相変わらずゴリ押し好きだね


「俺は平和的に交渉するつもりだ」

「避けながら情報を集める」

「殺さないなら意識の有る間は情報が抜き放題だ」


俺の演算では3秒持てば良い

そんなとこだぜ


「20回の交渉で1分確保出来る」

「奴が折れるまで続けてやる」


馬鹿だね~~~


「人類はそうやってしぶとく生き延びてきた」

「俺は諦める事を教育されていない」

「何より…」

「何より…彼女を日常に返そう兄弟」


俺はリビングに入ると始祖が椅子に座っていた。

「交渉の続きだ…俺を暴力で支配するという方針は捨てた方が良い」

「俺は彼女を取り戻すまで、お前との交渉を続ける」

俺は椅子に座る。

「お前がテーブルに着くという文明的な姿勢を俺は評価している」

「要求を言え」

始祖が明らかなため息を吐いた。

「あのさあ。私ヒロインなんだけど」

俺は一瞬で欺瞞工作を看破した。

極めて幼稚だ。

「‥‥‥成程効果的だ。だが相手を選んだ方が良い」

「俺は今まで執行し」

スコーン!と俺の額にに陶器のマグカップが当たる。

「?????」

「君か?」

ヒロインが頷く。

「戻ってきたついで、今の私の気持ち分かる?」

ヒロインが言った。

「‥‥ふむ」

「分かるぞ。今の気持ちは、凄く 悲しい だ」

ズルっとヒロインが背もたれに倒れる。

確かにヒロインの反応だ。

「じゃあ君は、凄く痛い、だね」

「ああ、正確で心地よい表現だ」

俺はそう言った。

「私さ…全部見てた」

「そうか」

「ごめん…」

「そうか」

「‥‥‥あのサァ!「そうか」しか言えないわけ!」

俺は彼女の豹変に驚く。

同意しているのに、なぜ怒るのか?

「元々は私が悪いンだけどさ…勝手にハンストして心配かけて…ごめん」

「君のような一般人には仕方のない事だ」

再び体中に激痛が走る。

感覚の麻痺から味覚が戻り、口の中に鉄臭さを感じる。

俺はそれを飲み込んだ。

「私、昨日まで世界で一番自分が可哀想だと思ってた」

「 両親を失って、理不尽に怨霊につけまわされて」

「でも昨日のあなたをみて、あなたはきっと戦友だけじゃない」

「本当に多くのものを知らない誰かに差し出しているんだって思った」

「それはあなたに助けられた人間だから分かる」

「見返りを求めないあなたは凄い人なんだって思ってた」

「でも違った」

「自分には何もないのに、本当に大切な人たちが大切にした思いを消さないためだけに」

「誰かを助けているんだって思った」

「それは凄いことだって思う」

「始祖はさ、ああ言ったけど、あなたに恥ずべきところはない」

バンバンとテーブル越しに俺の肩をヒロインが叩いた。

凄く痛い。

痛いのだが…違う。

「だからこそ何もないあなたに頼り切るのは、私があなたから奪い続けることだと思った」

「俺は何も奪われていない」

「君にはそう見えるのか?」

俺は聞いた。

彼女は笑ったような悲しい顔をした。

「今の自分をどう思う?」

「甚大な脅威に対して極めて適切な対処をしたと思う」


ハッ!これだよ

ブロ人の善意は素直に受け取るもんだぜ


「兄弟‥‥俺は真面目なつもりだ」

「そのインカムの兄弟さん?でいいの」

ヒロインが俺の左耳を見ながら言った。


やあヒロインちゃん!

初めまして!

ブロのイケメンAIです!


「兄弟‥‥さすがに疲れた」

「穏便な支援を要請する」


気が抜けたトタンこれだぜ!

クソして寝りゃあ治るだろ


「それ…やめたら?」

「あなたって無理やり主人公を戦わせようとしてない?」


だって僕戦闘支援人工知能だし…

主人公の支援するの役目だモン!


「誰と戦うの?」

ヒロインが言った。


そりゃ…ね?

ブロ!なんか言って!


「‥‥検討する」

「俺は目的を達成した‥‥」


おま!検討って!

マイフレンズ!そりゃねえよ!

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