共同生活(1)
穏やかな朝。
俺はゆっくりと体をベッドから起こした。
10年以上続けた執行者としての粛清。
その中でも最悪の夢だった。
「‥‥あれだな」
ヒロインに精神アンプルを刺そうとした事がきっかけだろう。
当時の俺は教皇の審理を終え、ある組織の粛清に向かった。
そこでは女性に精神アンプルを投与し兵士や性奴隷として操る集団だった。
組織への奇襲は成功し、皆殺しにした。
淫らなサバトの最中で奴らを殺す事は容易かったが、参加する者たちは快楽を貪り、陰惨の限りを尽くしていた。
人類の繁殖と言う教義そして人類社会に於いても聖なる行為を穢した行為は深く記憶に刻まれた。
時折許可なく俺の夢に侵入する。
忘れたくても忘れられない、人の醜さを凝縮したような事件だった。
ここには何もない。
執行者としての責務を果たす方法が何もなかった。
グッモ!兄弟
いい夢見たか!
兄弟の遅すぎるモーニングコールだった。
「兄弟。夢の中までは索敵出来ないのか?」
俺は言った。
胸糞悪ぃ夢なんざクソと一緒に流せよ
「肯定する」
俺はベッドから立つと、テーブルに置いた水を飲み干した。
それは温く、不快な味がした。
「始祖はどうしている」
ああ、アネゴか
飯食って湖の上を散歩してる
どういう物理エンジンしてんだあれ?
「アネゴ?なんだそれは」
知らない語彙だった。
古代の語彙で「お姉さん」って意味だ。
こっえ~~~~お人だよあれ
ブロが手も足も出ねぇンだからよ
「あれは始祖でいい。俺には姉など居ない」
「そもそも旧文明は血縁という旧弊が滅びの一端となっている」
「くだらん考えだ」
へいへい
今日はどうする?
支援は必要か?
「粛清する相手でも探しててくれ、その方が助かる」
「俺はこの施設に電力を通す」
俺はそう言った。
「俺は食事の前に主に祈りを捧げる」
「黙っていろ」
俺は目を閉じ、心の中で主に祈りを捧げる。
(人類のために‥‥)
相変わらず人類のために、か
ここにゃあブロとヒロインしかいねえ
救う相手が少ないのは楽でいいぜ
俺は机に置いたインカムを付け、リビングに向かった。
始祖の言う泥のような食事をするために。




