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座標を睨む(5)

「じゃあ騙されてるね怨霊」

「ワッザ?!」

ピクッと始祖が反応した。

「私って始祖が憑依してるじゃん」

「それって始祖がいるから成立する話だよ?「あの人」ってどこに居るの?」

彼女が始祖を見る。

始祖の表情は厳しい。

この無言は肯定…だろう。

しかし…これが事実なら極めて残酷だ。

人の心を弄んでいる…。

兄弟から表情が消えている。

あいつに魂はない。

まして心も人類が感じる錯覚だ。

それでもこの精神チャンネルの中で感じる怒りは義憤を錯覚させた。

「仮定と推論の会議だが一つ確認したい」

俺は言った。

「始祖このヒロインの推論をどう感じている」

「俺は他人の気持ちが分かるとは言えない」

彼女が首を振って「違う」と言う。

俺は頷いて彼女を見た。

「だがヒロインが死んだらその復活を考えないとは言い切れない」

フン、と始祖が鼻を鳴らした。

「見て分からぬか…」

俺を折檻した時の比ではない…感情が微細な粒子として漂っている。

超越者…。

その表現以外相応しい評価が存在しなかった。

人類と同じ心を持ちながら、隔絶した脅威を感じる。

俺にはそう見えた。

「始祖聞いてあげて、多分もう少し言いたいことあるから」

彼女は言った。

「力量の差を弁えず…失礼を承知で言うが、あなたは深く傷つき、深く苦しんでいる。」

「あなたはは無辜の民というには強すぎる…俺程度がどうにかできる存在ではない」

「だが強いからと言って心が無いわけではない」

俺は言い切った。

始祖には人と変わらぬ心がある。

いや…俺と同じ心を持っている。

だからこそ俺に戦友達の誓いを思い出させた。

彼女には俺が失いかけていた祈りが見えていたのだろう。

そうだ、始祖の極めて残酷なあの教育が無ければ…

俺は「人類のために」この祈りの真の意味を知ることが出来なかった。

心の中に神殿を作る

戦友、まだ居るな?

始祖は俺に俺たちの誓約を「共に果たしている」そう言った。

…やろう。

この地には主の御威光が届かない…

だが俺たちが居る。

俺たちの誓約は迷える誰かのために存在している。

背後に確かな気配を感じる。

俺は振り返らないぞ。

それで良いな?

共に祈ってくれ。

この愛する者を失って苦しむ者を俺は見捨てられない。

「その者は…然るべき代償を支払うべきだ」

俺は始祖を見据えて言った。

それが俺たち東方聖騎士団の答えだ。

「あなたの愛する者を思う気持ちは何者も侵す事はできない」

「その祈りを踏にじる行為…俺はそういった存在を許せない」

始祖が立ち上がろうした。

どうなっても仕方ない。

俺は彼女を侮辱しているに等しい…。

「アネゴ…抑えてくだせえ‥」

兄弟が言う。

「ブロの意見には俺も賛成しやす」

「俺も生まれは機械でありますが、教団の産湯を飲んだ身…苦しむ者の救済を義務と感じておりやす」

俺たちにとって教義とは何なのか。

兄弟と俺は嫌と言うほど知っている。

背信者を抹殺するための口実に過ぎない…。

その残酷さを継続できたのは、無辜の民を脅威から守り続けるという祈りがあるからだ。

俺と兄弟には同じ「祈り」がある…そう思えた。

「お人好しの宗教もあったものだ」

始祖は目を閉じて椅子に深く座った。

「アネゴをどうするかは今の状況では決められない、情報が少なすぎる」

「どう思うブロ」

俺は頷いた。

「すまない傷つけるつもりはなかった。謝罪を受け取って欲しい」

「アッシも申し訳ありやせんアネゴ」

俺たち兄弟は深く頭を下げた。

触れてはいけない傷に触ってしまった。

俺はそう思った。

「よい」

始祖は俺の背後を見ながら小さく頷いた。


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