影を縫うように(4)
彼は夕食を食べなかった。
というより自室に引きこもっている‥‥
「拗ね方が子供っ!」
フォークを焼いた魚にザクっと刺した。
私はリビングで湖で手に入れた魚をオカズにレーションを食べている。
正直ハラペコの相手と話し合うのは嫌だ。
みょ~~~に気が立っていて、話し合いが上手くいった試しがない。
色々プランを考えた
①正面突破!即合体!
傷ついた彼を今すぐ抱きしめたい…
今すぐ!
全てを受け入れたい。
かれでシているのでこれが最有力候補‥‥でした。
私にもそんな時期がありました…。
日中のやりとりで、残酷な性的な行為が彼を傷つけていた‥‥
「でもさ~~~~~」
蛇の生殺しだ…
どうにかしてこの思いっ‥‥!
②妥協して添い寝
多分私は5分くらい耐えられる。
それ以降は無理。
「凄い…完璧な計画が全部破られた」
じゃあ…と考える。
③守り袋の感覚共有
これが一番現実的。
なにより私は一度彼の中に入っているので、今すぐ入れる。
彼にも対抗策はある。
私を拒絶すれば入ることは出来ても対話出来ない。
用心深いロンリテキな彼だから即対応するだろう。
何より‥‥
「感覚共有で拒否られたら耐えられン」
ぴえん‥‥
④‥‥
「やだ!だめ!拒否!却下!」
今まで何のために積み上げたンだよ~~~~
④非常に遺憾ながらセックスなしで話をする
「くっ‥‥うぅぅぅぅ…」
常識で考えて欲しい…
傷ついた相手…
今まであったハプニング…
何より不本意極まりない雑な告白…
ここまで丁寧に積み立てた利息が「お話しする」…しょ、ショボすぎる。
「ぅぅぅぅぅぅうううう」
私は声にならない苦悶を漏らす。
り、理不尽だ…。
私頑張ったでしょ?
頑張ったよね?
ダン!とテーブルを叩く。
「ひ、ヒロイン決議により…①を採用…ッ!」
私の脳裏に彼のぎこちない笑顔が何度も浮かぶ。
あの笑顔を消して良いの?
すごく不器用だけだ私は好きなんだ!
「ガアアアア④でしょ!④で満足なんでしょ!」
私は空中に悲鳴を上げる。
く…何でこうなるの。
私はノックをすると彼の部屋に入った。
居た。
何というか。
ドラマチックな感じが全くない。
彼が居ない!
探さなきゃ…など無かった。
彼はベッドに腰を掛け俯いていた。
険しく暗い表情だった。
「君か」
精気を全く感じない。
私は彼の前にツカツカと歩み寄った。
「立って」
私は言った。
「俺は‥‥」
何か口ごもっていた。
「立てっ!」
ビクッとした彼が立ち上がった。
私は渾身の力で彼の顔面を殴った。
彼が僅かに下がり、私を不思議そうな目で見ていた。
私はワナワナと拳を握り直した。
「これが①を失った私の痛み!覚えておいて!」
「ま、マルイチ?何なんだそれは?」
ふーーーーーーっと。
私は体に籠った熱気を吐き出した。
「次に殴ってゴメンね」
「ど~~~~~~~~~~~~しても仕方ない理由があるの」
「そ、そうか‥‥」
主人公がまた俯いた。
「俺は君に…」
「はあ‥‥それなら私は君でシてるし、知ってるでしょ?」
「それは…そうだが」
「もしかしてそのせいで自分が悪い奴だ!って思ってる」
「そうだ」
「悪い奴が自分より遥かに強い始祖に、私のソンゲンを懸けて立ち向かうの?」
「だが」
「うるさい!」
「君は良い人だから!私が保証する!」
彼は武骨な微笑みを見せた。
「無茶苦茶だ‥‥君は論理的じゃない」
「そのロンリテキが君を苦しめるなら私は何度だって殴るよ」
「それはやめた方が良い」
私はグッと拳を握る。
「君の方が痛い。今度体術を教えよう」
「そうよ。どんな鍛え方してんの?」
「それを教えよう」
「やっ!」
私は断言した。
「それより…寝れてないんでしょ?」
「なぜその事を」
「君の兄弟が教えてくれた「観測し推論を立てろ」って」
「兄弟が…」
彼が目頭を押さえた。
…泣いている。
大きな肩が震えていた。
彼が泣いているのを初めて見た。
「兄弟は君に俺の機密を教えることに抵抗が有ったはずだ…無茶な事を…」
「兄弟‥‥支援に感謝する」
僅かに嗚咽の混じった声で彼が言った。
「兄弟には言わないでくれ‥‥すぐにつけあがる」
「よーーーく、知ってる」
私たちは笑った。
彼は涙を拭って喋り始めた。
「ここ数年眠れていない。入眠しては悪夢にうなされ、それを繰り返す」
「治療はしなかったの?」
「する暇が無かった。俺の眠りを奪う奴らが多すぎた」
「せっかく縁を切ったのにね」
「執念深さだけは評価する…」
「じゃあそいつらと絶縁しよっか」
「出来るのか?」
「眠っている間ずっと私が傍で手を握ってあげる」
「なるほど」
「うなされたらさっきみたいに殴ってあげる」
「‥‥‥」
彼は黙って私をまじまじと見た。
「何?」
「悪夢よりはマシだと思った」




