共同生活(14)
私は自室に戻った。
「ぬわ~~~~」
彼は一枚上手どころの話ではない。
見せてもいいココロって何?!
聞いてない!
(対策済みだ)という幻聴すら聞こえる。
だが‥‥
「くくくくくく」
(読ませているに過ぎない)だって?
「馬鹿め!こっちは致命傷でも!」
恋カツ!だとは思うまい!
バーーーカ!
ううっ…
致命傷だよぉ‥‥主人公でシタことバレてる‥‥
ふ、フツーもっと動揺しない?
(君の精神的抑圧の解消に俺が貢献できた事に喜びを感じる)
な?
なんだそりゃ!
もっとこう!ないか?
いや‥‥でも
凄い安心感だった。
私はあの時…彼の心に一直線で進んだ。
ドン…と大きくて硬い、凄く頼もしい…そんな存在がぶつかった。
絶対に揺るぎようもない大きな木だ。
「凄いな…凄いと思ってたけどゼンゼン違う」
圧倒されるなジブン!
だったらキツツキみたいにコンコンしてやる!
「だって~~~~コッチにはぁ~~」
コレっ!
胸元の守り袋を見る。
思わずニマッとなる。
「15歳を舐めンなよ~~~オ・ジ・サ・ン」
始祖が初めて憑依した際に叩き折られて。
すごく不便だったけど。
ありがと~~~~。
でも出しゃばるなっ!
いやマジで。
これ以上アレには頼らない!
地雷原で踊られ続けたらこっちの身が持たない。
だって~~~彼の事は私が一番よく分かってるモン!
彼のアレ握ってバトンタッチとか…私は動物か!
動物レベルでは正解でも、彼みたいな論理モンスターには絶対にダメ!
「くくくく」
あとAIはこの守り袋を知らない。
だけど‥‥
「精神共有ってこんな疲れたっけ?」
私はベッドに横になる…。
いつの間にか意識は無くなっていた。
私はよく分からない場所に居た。
薄暗い石を積み上げて作られた場所だ。
遺跡?
そんなとこだ。
‥‥‥夢か。
好みじゃないのでチェンジ!
‥‥いや待て。
私は眠る前をよく思い出す。
やべ‥‥守り袋付けたままだ。
「お前誰だ?」
薄暗い遺跡の奥から、青い軍服を着た少年が歩いてきた。
私よりも背が小さい。
ケッコー可愛い子だ。
「お前誰だ?」
少年が言う。
前言撤回‥‥。
可愛げのないクソガキ‥‥
「わ、私ヒロインだけど」
「そうか知ってる」
少年は言う。
私をジロジロと見ている。
全く遠慮がない。
ここまでのクソガキは見たことが無い。
「主人公だ」
少年は言った。
つーーーーーーことは、彼の夢に侵入してるってことか!
ッシャ!
私はガッツポーズを小さくします
「お前敵か?」
マジでなにこれ?
愛想の欠片もない。
「違うよ!私の事覚えてないの?」
「知ってる」
「だったら!」
「最近あいつが見てる女だな」
「帰れ」
ははっ‥‥帰れときたか。
何か言いそう。
でもショック…。
「帰り方分からないのか?」
少年は言った。
ぶっきらぼうな言い方しかしないが、敵意はないな。
「そうそう」
「そうか」
は、話にならね~~~~~。
しかも何?
周りを見る。
薄暗い遺跡、不愛想なクソガキ。
これ悪夢じゃん…
ぴえん…。
もっとあるだろ!
夢だぞ!夢!
言いたくないけどさ!日中の私見てるじゃん!
裸の私と湖畔を追いかけっことか‥‥
駄目だ‥‥マッパのオジサンとJKが追いかけっこなんて地獄そのもの…
で…妥協点がこれ?
か~~~~~~~~~~っ!
有り得ない!
ジタバタ動く私を少年は観察していた。
あ…そこは同じね。
「これ食べる?」
私はポケットの中に飴を作った。
夢なんだしあるだろ。
「なんだ?」
「飴だけど」
飴知らないの?
「甘いのか?」
「お前良い奴だ」
少年が甘さに驚き、ガリガリと齧り始めた。
「もっとないのか?」
少年が小さい手を出します。
私はポケットの中に「飴でろ~~~」と念じます
「はい」
「お前良い奴だな」
二個目の飴をガリガリと食べ始めている。
可愛いんだか可愛くないんだか分からない。
「つーか本当に主人公?今より話し方が酷いンだけど」
私は、もう良いやと思って素直に言った。
「俺はあいつの昔だ。俺以外は全部消した」
「俺も消すつもりだったらしい」
「消せなかったようだ」
齧りながら喋るな…マジで行儀悪すぎ。
「甘いの渡せ。もっと話してやる」
少年が両手を出す。
一個二個じゃ満足しないらしい…
「はい」
私は彼の両手にドサドサと飴玉を出現させた。
「お前良い奴だ」
少年はポケットに一つ残らず詰め込んだ。
じっと私を見るとポケットの周りをバンバン叩く
「おま!図々しいぞ!」
「もうないのか」
そうか。
そう言うと少年はトコトコ歩き出しました。
「ちょっと待ってよ!」
「おまえ一人で歩けないのか?」
少年が小さな手を差し出しました。
私は手を引かれるまま、少年と遺跡を歩く。
「あいつはお前の事を消すつもりだった」
当然のように言われてゾワッとするものがある。
「殺すってこと?」
私は聞いた。
「記憶から消す。あいつはそうやって生きてきた」
「悲しくないの?」
「それは要らない」
「飴は欲しいのに?」
「そうだ」
私は飴玉製造機か?
少年はポケットの飴をじっと見ると私に一つくれた。
「君は何してるの?」
私は飴を舐めながら聞いた
「カレンを探している」
「ん?前カノ?」
彼…そういうの絶対に引きずるタイプだ。
まっずいな。
「カレンは俺の家族だ。けど死んだ」
少年は振り返らない。
「探すの?」
私は聞いた。
「あいつは生きてる」
「俺の中に生きてる」
「だから探してる」
この少年は…
きっと家族を探し続けてる。
「私が死んだら…探す?」
「やらない」
即答だった。
「めっちゃ冷たいじゃん」
「お前は死なない。あいつはそう言っている」
「もしかしたらってあるじゃん」
少年は首を振る。
「そんなものはない」
ぐっと少年が私を引く。
「甘いのくれ」
「良いけど飴好きなんだ?」
「甘いの好きだ」
「じゃあじゃあ私は?」
少年が振り返る。
めっちゃ怪訝な目だ。
「お前甘いのか?」
「な、舐めてみる」
少年が握った手をぺろりと舐める。
ぺっと唾を地面に吐いた。
「おまえ甘くない」
「甘いの出せ」
私の裾をだせだせと言いながら引く。
「ないよ。あげたでしょ」
私は彼のポケットを叩く。
「そうだったな。お前は良い奴」
少年が手を引いて薄暗い遺跡の中を先導する。
私たちは薄暗い迷宮を彷徨う。
動物の息遣いが近づいてきた。
「くぅ~~~ん」
真っ黒い犬が私目掛けて駆け寄る。
大きな体で私の周りをグルグル回り、お尻の匂いを嗅いでくる。
「お!犬じゃん!私好き」
私はワシャワシャとその子の背中を撫でてやる。
首筋に頭を寄せ、頭を擦ってくる。
めっちゃ可愛い。
「噛むぞ」
少年は言った。
「めっちゃいい子じゃん」
私がお腹を撫でても吠えない。
スゲーいい子、
「こいつが噛むと死ぬ」
「ちょっと前に出てきたやつだ」
少年が私を見る。
「お前いいやつだな」
「こいつは悪い奴全部殺す」
ひゃっと私は手を放すが、この子はもっと撫でろと私の周りをグルグル回る
「あぶな!」
黒い犬は全く危なそうには見えない
愛嬌しかない。
「こいつ昔は白かった」
「俺はこいつが嫌いだ」
遊んでもらって満足したのか、あの子はダッと駆け出す。
一度だけ振り返り。
ウォン!と吠えた。
彼に手を引かれるまま、私は異様な部屋の前で立ち止まった。
「これなに?」
扉一面を無造作に木片が打ち付けられていた。
「色々しまってる」
少年は行こうと言いながら手を引くが、私は立ち止まった。
「開けられない?」
「お前ここに入るのか?」
少年は聞いた
「だめ?」
「ここに入ったやつ全部出られない」
少年がやめておけ、と言いながら首を振る。
「何が入ってるの?」
「大切なもの全部だ」
「それって何?」
「分からない、全部だ」
私は少年の手を離す。
木片を取り除く。
釘で執拗に打ち付けているが、ベリベりと剥がした。
どうせ夢ならやりたい放題だ
木片を取り除くと、扉の内側から衝撃が走る。
「ぐえっ‥‥」
私は衝撃で壁に打ち付けられた。
とは言っても、夢の中なら痛いものか!
蹴破られた内側に主人公が立っている。
「入れてよ」
容赦ない前蹴りが私を弾き飛ばす。
「門番だ、こいつは強い」
感情の全くない目だった。
始祖に立ち向かった彼に比べたら大した事はない。
怖い?
いやいや。
こんな主人公は空っぽの出来損ないだ。
とは言っても‥‥。
彼は見たことのない武器を持っている
ヤバ…
私は一刀両断される
問答無用だ。
左右に分かれた体を私はギュッと押した。
ほ~~~ら元通り。
「効くかば~~~か、ここは夢だぞ!」
「入れそうか?」
少年は聞いた。
感情のない目が私を見ている。
背後の何かを守ろうとしている。
それだけが分かった。
センユーとかいう主人公が大事にしているものだ。
あれに触られると彼は怒る。
でも私には怒らない。
だったら入れてよ!
「彼と話しできないの?」
私は少年に聞いた。
「無理だ。こいつ話聞かない」
知ってる。
彼は人の話を聞く前に、ロンリテキってやつで考える。
「今はね」
私は唇をぺろりと舐める。
「入れてもらえるまで再トライだ~」
念入りに細切れにされた‥‥
くそ…学習能力は据え置きじゃん
私は、えい!と体を集める。
「でもさ…忘れてるよね。私って鬼族なんだよ?」
(そこっ!)
彼の思考を読んで刺突を避ける。
「いや~~ツノが折れてから忘れてた」
「心読むの私トクイだって」
主人公が間合いを取る。
「ぷ。やっぱ出来損ない」
私は右手に彼と同じ光る剣を作り出した。
「使い方全部教えてくれてアリガト☆」
剣の刀身を伸縮させる。
彼の攻撃を難なく避ける。
初めて彼と決闘した時は手玉に取られた。
今なら彼の心は分かる…。
私の心は彼のモノで‥‥
「君の心は私のモノだからね」
私は光剣の刀身を柄の中に仕舞う。
体一つで彼に肉薄する。
彼の心をトレースする。
ここは夢。
現実なら対格差で押されても、ここならそれは無い。
ぱっと距離を開ける。
「さっすが!鍔迫り合いなら反射で対応かあ」
「次はどうするの?」
分かってる‥‥。
彼なら‥‥
光剣の先端が何度も目の前で交錯する。
「読み合いをさせない‥‥」
主人公が光剣を捨てる。
「すっご‥‥全部反射神経で避ける」
「ここまで追い詰めてホンキって事は‥‥私との決闘なんて遊びだね」
私も光剣を捨てる。
「なんだっけ?君の言葉」
うーーーん、と旅の途中の会話を思い出す。
「そう!ゼンテーを崩せ!だった」
彼が認識できない速度で私にぶつかる。
笑っちゃう。
ゼンテー崩せてないじゃん。
私は彼の背後に回り込むと、しがみついた。
「どうだ!そこに入れろ!」
彼がのたうち回る。
夢の私に痛みはない。
壁にぶつかろうと意味がない。
諦めるまで絶対に離さない。
私は悪夢の疲労で瞼を擦りながらリビングに入った。
「おは‥‥よう」
椅子の背もたれに寄りかかりながら彼が言った。
「悪夢を見た‥‥何度追い払っても絶滅した「鳥」がまとわりついてきた」
やっぱ同じ夢見てンじゃん。
ふわ~~っと私の欠伸が漏れる。
「で?」
結局「大事な部屋」には入れなかったけど。
彼はどう感じたんだろう。
「衛生的観念から追い払い続けた‥‥彼らに罪は無いにしても、彼らは病疫を人類にまき散らす…」
不本意だ…そう言いながら彼は両手で顔を覆った。
彼の中ではそーーーゆーーー夢だったのね。
「一羽くらい良いじゃん」
私はニコッと笑って覗き込む。
彼はむう…と腕を組んでいた。
「だって夢の話でしょ?」
私はそう言った。




