共同生活(12)
夕方…私はベッドからむくりと起き上がり、ベッドの惨状を見た。
皺になり私の体液で汚れたシーツ。
枕は部屋の入り口に転がっていた。
「‥‥」
やってしまった。
自分の手がぬらぬらと汚れている。
「‥‥‥」
我慢が出来なかった。
湖畔からここに戻るまでAIと何かを言い合ったのだが覚えていない。
家に戻るとリビングのテーブルにスペアのインカムを叩きつけ…
していた。
手には日中に握った彼の感触が残っている。
最低以下の告白をされたが嬉しかった。
気持ちが通じ合っていた。
手を洗えばスッキリするだろう。
「本当にマズった‥‥」
~~~~~~~~~~~~~~っ!
『警告する。一度だけだ』
『俺は彼女の尊厳を損なう行為を断じて許さん』
あれは卑怯すぎるッ!
フツーーーーに結ばれる流れだった!
何より始祖が私に体を返したのが全ての発端ッ!
二度とアレは頼らない。
砂浜での興奮は残っている‥‥
「私は冷静…わた…」
右手を凝視してしまう…。
ヤバい…スイッチが入ったままだ。
違和感がある。
何で彼は始祖と人格が入れ替わった私に反応しなかったのか?
そもそも訓練前私に反応しなければ辻褄が合わない。
おかしい…
彼に性欲はある。
私のソンゲン?を損なうのが気に食わないわけだ。
一々言い回しが難しい。
「彼…なんか有るな」
多分彼はあれ‥‥を前の世界で見ている。
しかも誰かのソンゲンを傷つける形で。
彼のアホさには慣れているが、あそこまで怒るのは今まで記憶にない。
まして相手は始祖だ、勝てない相手に敵意を剥き出しにするのもおかしい。
「~~~~~っ!」
「ジョーシキで考えたら今日以外ないのに!」
ぐぎぎぎぎ。
静まれ‥‥静まりたまへ…
今回の一件で彼から私への接触はまず期待できない。
ロンリテキってウザいやつが邪魔する。
邪魔‥‥邪魔といえばあいつだ。
AI。
自称主人公の兄弟。
アイツと主人公は近すぎる。
何かあるたびにママに相談する‥‥。
大体予想できる。
なによりあの小賢しいクソボケAIは、私に合わせていた。
主人公の訓練を眺めていた時、下品な事をあまり喋らなかった。
つまりあのポンコツの中の優先順位は
①始祖関係(勝てない)
②主人公
③ダンゴムシ
超えられない壁がいくつもあって
⑨ヒロイン
くらいに考えているだろう。
ホンネを見せてるようで見せてないって事はそういう事だと思う。
「あの狂育ママをなんとかしなきゃ始まらない…」
仮に主人公への接触が成功しても。
全部見られる。
「耐えられない…全部ママ同伴は嫌」
なんか良く分からないけどアイツは耳が良い。
カンが良いんじゃない。
どこかで盗み聞ぎをしているような印象がある。
そもそもカンが良いなら、私たち鬼族は「察する」事が出来る。
今でこそ始祖が憑依したときに角が折られ、相手の心が分からなくなっているが、それだけは分かる。
私は自分の頭を触った。
再生した角はもう感覚器官として使い物にならない。
あったらいいタイミングで‥‥
「ハグくらいな…ら」
嫌って気持ちが分かったら、すぐに離れれば良いし。
これさえあれば…
私はツノを触る。
「ん?」
閃きがあった。
私はベッドから飛び降りると、バックパックの中を漁る。
あったはずだ。
あれは鬼族の爺さんたちが、折れても奪われるな、欠けたツノは隠せ。
と私が子供の頃に言っていた記憶があった。
どこだ?
バックパックの中身がどんどん部屋に散らばる。
「あった!」
小さな二つの守り袋に包まれたソレを私は見つけた。
ニマっと笑いが零れる。
爺さんたちの言っていた「絶対に使ってはいけない方法」を私は思い出すのだった。




