共同生活(8)
「何をすれば良いんだろうな?」
彼はそう言った。
マジで考える事だろうか‥‥
出会った時から真面目な人だとは思っていたけど
「何もしないで良いんじゃない?」
私は適当に答えた。
そもそも体ボロボロだし
「成程…。君の提案を採用する」
彼はウン、と頷き立ち上がった。
「俺は人並みに訓練を受けてきたし、実戦も重ねてきた」
「何もしない。という訓練はしたことが無かったな」
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何もしない訓練?
何もしないって訓練なの?
「10日も庭に立っていれば、何か掴めるか…」
「大したもの掴めないと思うけど?常識としてサ」
彼は落胆した表情を隠さなかった。
バカだなぁ…こいつ、そんな事を言いたげな表情だった。
マジムカつく!
「常識か…学び続ける事それが人類の強さだと俺は考えている」
「俺は40歳になる…あと10年もしない内に寿命だ」
「君は若く未来が有るのに未知の可能性に興味がない」
「極めて遺憾だ」
はぁ…というため息。
って。
「って50歳が寿命なの?」
「俺は戦士層の人間では長生きしている方だ」
「あのさ~~~ウチら鬼族は大体100~200歳、フツーの人間なら80歳くらいまで生きるけど?」
「なるほど、君の軽挙な行動を理解した。感謝する」
「しかしヒロイン…人生とは驚くほど困難に満ちている、それは君自身が理解しているはずだ」
「学べる時に学ばず大きな代償を支払う、よくある事だ」
スゲー良い事言ってるけど、「何もしない訓練」とか馬鹿じゃないの?
「同じ人類で有りながら人種差というものがこれ程とはな」
「仮に一緒に過ごすことが出来ても君にとっては「たった10年」なるだろうな」
ここで一緒に10年?
意識に自分とよく似た子供たちが現れ、そんな未来を創造してしまった・
「いや…サ、言っててハズくないの?」
私は言いました。
「正確ではない。この場合「寂しい」が適切な回答だ」
何だろう…
彼の表情に悲しさによく似たものがあった。
「それに俺の事は忘れるべきだ。君の人生の中で好ましい存在ではない」
なにそれ。
「それってさ君が決める事?」
「助言に過ぎない」
「私が君の事を忘れたら嬉しいの?」
私は強気に言った。
「回答を拒否する」
「なんで?」
何か彼がこういう拒否り方をするのは珍しいと思った。
「君から学んだ。曖昧な思考は言葉にすべきではない」
「だが…俺を忘れないでいてくれたら…か」
「そうだな…好ましい」
僅かに。
微かに笑ったような気がした。
厳しい表情だが少し柔らくなったと思った
「忘れるわけないじゃん!」
「感謝する。君が生存する限り俺に墓標は必要ないな」
なんだそりゃ?
「人の心を墓場にするな‥‥」
「それにさ!まだまだ先なんてわからないじゃん!」
「信頼すべき統計だ。俺はそれを受け容れている」
トウケイ?s
そんなのぶっ壊せば良い。
そんな物差しは必要ない。
「そりゃそう!あんなマズ~~~いレーションばっか食べてたらそうなる」
「俺にとっては普通だが」
すげーガンコ。
エビデンス無いのは信用しません!
みたいなやつ。
「だったらアイツに食べれそうなものを探させたら良いじゃん」
私は言った。
「兄弟に?」
「‥‥可能だ。俺たちの状況を時空的な遭難と仮定すれば、兄弟は支援する」
「支援提案。どうだ兄弟?」
ハァン?
出来るぜ、採取用ドローンを数台回せばやれンぞ
主人公の左耳に着けたインカムを通じてAIが喋り始めた。
AIは「シエン」って単語に弱いな。
メモメモ。
私は心の中のメモ帳に、アイツの弱点を書きます。
「味は?分かる?」
ガハハハハハ
無理!
「古代人類史のアーカイブを参照して湖畔周囲を捜査」
彼が言いました。
一々難しい言葉で喋る。
オーケー、ブロ
不味くても文句は言うなよ?
「いつも兄弟の不味い支援を喰っている」
主人公がアイツとジョークを交わしている。
羨ましいけど、やり取りが基本的に下品だから嫌だなあ。
私はそう思った。
ハッ!
「兄弟の不味い支援に感謝を」
はぁ…いつもコレだ
シャアねえな…貸ひとつ。
忘れるなよ
「了解した」
主人公がいつも「感謝」を言う。
そこだけは「良い人」だなって思った。
「兄弟の偵察が終わるまで、何もしない訓練をする」
私はポコンと彼の背中を叩いた。
「そうじゃなくて!」
「湖だよ!ここ!色々やれば良いじゃん」
私は言った。
「俺は海洋国家出身だが塩水は好きじゃない」
主人公が言った。
マジで嫌って表情だ。
「ジョーシキで考えて目の前のアレ淡水でしょ?」
主人公が目を見開きます。
「は?」
「待ってくれ淡水の資源は貴重だ、あの水量が存在する訳がない」
マジで驚いてる…
「君に冗談の才能が有るとは…俺はまだまだだな」
馬鹿発見ww
「私たちの世界じゃフツーだったでしょ?周り見えてないなあ」
「君ってやっぱ大した事ないじゃん」
彼の驚いた表情が緩やかになる。
「そうだな‥‥君の指摘通りだ」
「君の表現は俺の経歴への侮辱に近い、だが…今それが心地良い」
なっ…。
なんだそれ。
不意打ち過ぎる。
彼は絶対に嘘を言えない。
フツーに茶化しただけなのに…。
私の胸の鼓動が熱く、体中に何かを送り込んでいる。




