表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Belief of Soul〜薔薇の棘〜  作者: 彗暉
第八章
38/51

三十七話

 ウィリアムは青銅の格子窓の硝子越しに、のっぺりとした曇り空を見つめていた。太陽の欠片すら感じさせない低い空に、雲が物凄い速さで駆けていた。生ぬるい風に白いリネンのカーテンが揺れている。

 視界に入ってきたマーシャルとウィオラの姿を見て、ウィリアムは身を起こすと腰の後ろに枕を置いて座った。

「やぁ、マーシャル」ウィリアムはそう言い、ちらっともう一人を見上げた。「……ウィオラさんも」

 ウィオラは怒りに近い興奮を抑えているようで、直視できなかった。傍にいるマーシャルは色濃い愁眉をつくり、そっと寝台に腰掛けてきた。

「お久しぶり、ウィリアム」

「久しぶり、マーシャル。手紙、出せなくて、ごめん」

「ううん」

 マーシャルは首を振り、口角を上げてウィリアムの手に自分の手を重ねた。

「ウィオラさんも、久しぶり」

「久しぶり」

 ウィオラはそう言ってマーシャルを見下ろした。マーシャルはその視線に背筋を伸ばすと、横目でウィリアムを見た。

「あのね、ウィリアム。ウィオラが訊きたいことことがあるんだって」

 ウィリアムは頷いた。

「なにがありましたの。ジルクートはどこにいるの? どうして貴方だけが……。いいえ、わたくしのジルクはどこにいるの?」

 ウィリアムは呼吸のたびに口を開こうとした。そのたびにあの光景が浮かび上がる。炎の剣、ベーネ、悪夢、二人の呼ぶ声。ウィリアムはぼやける視界に震えるほどの怒りを抱いた。涙が頬を伝ってシーツに音を立てて落ちると、ようやく、ぎこちなく、ウィリアムはすべてを話した。見たものすべてを。

 ウィリアムの話を聞き終えた時、病室には明かりが灯されていた。同時に、三人の間には長い沈黙が横たわった。

「話してくださり、ありがとうございました。辛い記憶だったと思います。わたくしはこれで」ウィオラは席を立ち、すっと踵を返して扉に向かった。思い出したように振り返り、「辛いことだったとは思います。ですけど、もう、あのようなことはなさらないで。貴方にはマーシャルがいる。マーシャルを悲しませないで」

 マーシャルはウィリアムの無表情の頬を伝う涙を指で拭うと、「またくるね」と言ってウィオラの後を追っていった。

 ウィリアムは二人が病室を出るの見届けてから、震える息を吐いた。杭が胸に突き刺さり沈み続けるような感覚に、寝台に横たわると堅く目を閉じて、二度と目覚めないことを願った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ