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英雄に憧れて  作者: 三毛実
英雄の出会い
17/28

遭遇

アルク達が宿へと向かう頃、リーシャは森の中を歩いていた。既に陽が傾き、空は赤くなっていた。

(なんだかアル君と出会った時みたい。)

彼は元気にやっているだろうか。あれから一年半が経った。まだまだ王都に着くのは先の話だろうが、リーシャはウズウズして彼に会うのが待ちきれなかった。

(早く来ないかなー。)


そんなことを考えつつ、リーシャは一人、噂の男を追っていた。

噂によれば、男は冒険者を狙って犯行に及ぶという。それならば、他の冒険者を追っていれば自ずと姿を現すだろう。そう当たりをつけていたリーシャは、適当にギルドで目に付いた依頼を受けていた4人組を追っていた。


(追いかける・・・か。そういえばアル君が「リーシャを追いかけて英雄になる」なんて言ってたっけ。もう、アル君たらおませなんだから)

頭の中でどこか細部が変更された台詞を思い返しながらリーシャがニヤついていると、唐突に広い空間に出た。


「なんなのここは。」

そこでは辺りの木が全て何か強い力を受けたように無理矢理になぎ倒されていた。辺りを見渡せば追っていた冒険者たちがバラバラに倒れている。かろうじて息はあるようだが皆一様に衰弱し身動きすらしない。そんな全てが静止した空間の中、その中心に一人の男が立っていた。頭に帽子を被り、その両手に闇に溶け込むような黒いグローブをはめている。

(・・・当たりね。さっすが私。冴えてるわ。)

それを見て、リーシャは静かに救援要請を飛ばした。

再度辺りを注意深く見渡す。伏兵がいないか、罠はないか。

(どうやら・・・一人のようね)

二度三度、その場で深呼吸をしてからリーシャは木陰から飛び出して告げた。

「あなたが噂の犯人ね。」

その男はリーシャに気づくと振り向いた。

「ああ、そうだぜ。」

男の返事は楽しげであると同時に、どこか誇らしげだった。

その声にリーシャは違和感を感じた。

(・・・・少年?)

リーシャにはその返事と男の雰囲気から未だ未熟な、幼さを感じたのだ。

「・・・・あなたの目的は何?」

リーシャは問いかける。

「任務だ。」

答える男は嬉しそうだ。親に初めてのお使いを任されたような、そんな感じだ。

「任務って?」

「ある男を探している。」

「男?」

「丁度いい。お前、アルクという名に聞き覚えはないか?」

「!」

ピクリ、とリーシャの肩が動く。

それを見た男の口がニヤリと釣り上がる。

「知っているな?」

「・・・どうしてアル君を狙うの?」

「その男はマスターから大事なものを盗んだ。それを奪い返す。」

「盗んだ?アル君が?そんなはずない。何かの間違いよ。大体マスターって誰のこと?」

「もういいだろう。十分質問には答えた。次はお前が質問に答える番だ。」

男はリーシャの質問を制すと、その青い目で睨みつけて言う。

「アルクはどこにいる?」

「教える気はないわ。」

答えるリーシャはにべもない。

「だったら・・・。」

男は一歩踏み出すと、リーシャを指差して言った。

「お前を倒して口を割らせるまでだ。」

(随分と自信があるのね。)

「あなたにできるかしら?」

言い返したリーシャも負ける気はない。

「たった一人でやる気かよ。」

男は辺りに倒れた冒険者達を見渡してから問いかける。

「あなたも一人よ。」

リーシャは動じない。

「違いない。」

くくっと男は楽しげに笑う。

「本気で行くぜ?」

「あら奇遇ね。私も、ちょっと手加減出来そうにないわ。」

リーシャの感情を抑えた、平坦だが怒気を孕んだ声に場の空気が静まり返る。

「関係のない人をこんなに巻き込んで・・・。私、こう見えて本気で頭に来てるから。」

そう呟くと、リーシャは男を睨みつけて呪文を唱えた。

「ディガウト」

その体から虹色の光が溢れ、やがてその手に収束する。光が収まったとき、その手にはオレンジ色に輝くサーベルがあった。

「お仕置きの時間よ。」

その瞳に怒りの炎を燃やして、リーシャは手に持つ『迷い戸惑う者に力を(ハートフルエール)』を力の限り握りしめる。

「へえ?」

その様子を眺めていた男は珍しげに声を上げた。

「お前もディガウトを使うのか。なるほど。お前の心は太陽みたいな色をしてるんだな。」

「そういうあんたはドス黒い心してんのね。そのグローブ、ディガウトでしょ。」

「ハハッ、その通り。だから俺はお前が妬ましく恨めしい。英雄気取って人のため皆のため、光り輝いてるお前がな。」

答えた男の青い瞳に昏い影が差す。

リーシャはそれに構わずサーベルを胸の前に構え、言い放つ。

「英雄リーシャちゃんの大活躍、心に刻みつけてあげる!」

「あんたに俺が倒せるかな?」

応え、男もゆっくりと構えを取る。

にらみ合った両者は一瞬の空白の後、互いに撃ち合いながら夕暮れの森の中へとその身を躍らせていった。


次の投稿は明日です。感想お待ちしています。

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