ギルドへ
18時投稿にしたら閲覧数が5倍になりました。ビックリです。
「ここが、ギルドか。」
そこは落ち着いた木造の建物だった。古いがしっかりとした作りで、歴史を感じさせる。
「いよいよだ。」
アルクは姿勢を正し、呼吸を整えると、扉をノックした。
「こんにちは。アルクと申します。リーシャロッテ・アルドラドの紹介で、冒険者になりたくて来ました。どなたかいらっしゃいますか?」
少しして、扉の内側でパタパタと歩いてくる音がして、軽い音を立てながら扉が開けられた。
「・・・いらっしゃい。」
「・・・なんでティアがここに?」
アルクを出迎えたのは、アプル飴を片手に持ったティアだった。
「私が保護しました。」
事態がつかめずにティアと見つめ合っていると、その声と共に奥から人が歩いてきた。
「初めまして。君がアルク君ですね。リーシャから話は聞いています。私はルネ・ディアス。ここの副ギルド長をしています。」
そう挨拶をしてきたのは糸目で優しそうな顔をしたエルフの男性だった。美麗衆目という言葉がぴったりだ。その鼻に小さなメガネをかけていて理知的な雰囲気を感じさせる。
「は、初めまして。」
僕は再び姿勢を正して深く礼を返した。
彼の名は僕でも知っている。ルネはギルドの創始者の一人であり、生ける伝説とも言われている高名な魔法使いだ。彼は精霊付きであり、デュアルスペルが使える数少ない一人でもある。
「はは、そう固くならなくても良いですよ。随分と早かったですね。」
手を振りアルクの緊張を解かせると、静かに笑いかける。
「その、急いで来たもので・・・。それより、ティアを保護してくれたそうですが。」
その言葉に、ルネは思い出したようにティアを見た。
「ああ。私が街を散策していたら、アプル飴の屋台に彼女が齧り付いているのを見かけましてね。聞けばアルク君の連れだというから、後でアルク君も来るだろうと思ってここに連れてきてしまいました。勝手なことをして迷惑だったかな?」
ルネはそう言うと視線をアルクへと戻した。
「いえ、とんでもないです。・・・その飴は?」
アルクは両手を振って否定すると、さっきから気になっていたティアの飴の事を尋ねた。
「お金を持っていないようだったので。」
「買ってもらった。」
飴を舐めているティアは相変わらず無表情だが、若干嬉しそうな顔をしている。
しかしご機嫌なティアとは裏腹に、アルクの胃はキリキリと傷んだ。
「す、すみません!あの、代金、払います。いくらでしたか?」
生ける伝説にお菓子を奢らせるなど、小心者のアルクにとってはとても出来ない蛮勇だ。
「いいからいいから。本当に気にしないで。嬉しそうな彼女を見て私も嬉しいし。」
財布を取り出したアルクをルネは押しとどめた。
「あ、ありがとうございます。」
アルクはペコリと頭を下げた。
「長旅で疲れているでしょう。とりあえず中に入ったらどうですか?」
ルネに笑顔で誘われて、アルクはギルドの中へと入っていった。
受付の職員に挨拶して中に入ると、アルクはティアと共にルネの部屋に案内された。
「少しここで待っていて下さい。」
そう言ってルネは部屋を出て行った。
アルクはとりあえず近くにあったソファに座ってみる。
部屋は落ち着いた雰囲気で無駄な飾り付けはなかったが、その造りの丁寧さを感じさせた。並んでいる調度品の細工は細やかで、窓から注ぐ光を艶やかに照らし返していた。
今座っているソファも有り得ない程にフカフカだ。ここで寝たらどんなに気持ちがいいだろう。その欲望に耐えつつ座っていると、好奇心を抑えきれなかったティアが飴を持ってそこら中を歩き回りだした。
「あ、ちょっと。」
そう言ってアルクも立ち上がり、ティアの後を追いかける。
「綺麗・・・・。」
そう言ってティアは壁にかけられた絵画の前で立ち止まった。
「ああ、もう。気をつけないと・・・・ティア?」
今にもティアの持つ飴が絵画にひっつきそうでヒヤヒヤと彼女に近づいたアルクだったが、ティアの見ていた絵を見て目が釘づけになった。
その絵には朝日が登る海の絵が描かれていた。
「海の・・・・・絵?」
それはあまりに雄大で、美しかった。
アルクは海を見たことが無い。内陸の森の近くの農村に生まれたアルクは、時々村に立ち寄る大道芸人や商人たちから海の存在を聞かされてはいたが、それはただとても大きな水たまりだという認識でしかなかった。
「いつかそのうち、見に行ってみようか。」
アルクは隣に立つ少女に興奮のままに提案する。
「・・・うん。」
ティアの返事はいつも通りだったがその顔は少し浮き浮きとして、楽しそうだった。
二人はしばらくそのまま、海の絵を眺めていた。
ルネがその手に紅茶の乗ったお盆を持って返ってきた。
「二人共、お茶にしませんか?紅茶を用意しました。」
絵に夢中になっていたアルクは背中からかけられた声にびっくりして振り返る。
「あ!す、すみません。」
「私の趣味でして」
ルネに手ずから紅茶まで用意されて思わず謝ったアルクを、ルネは気にしないようにと言って絵の近くに歩いてくる。
「二人は、海を見たことがありませんか?」
「ええ・・。恥ずかしながら。」
コクンと静かにティアも頷く。
「ふふ。別に恥ずかしいことでもないですよ。私も森の生まれですから。この絵は、私がこの街に来てから初めて買ったものなのです。」
「素晴らしいでしょう?」と言って笑うルネは自慢げだった。
「この街の東にある山脈を超えた先にあるそうです。実は私もまだ見たことがないのです。」
「本当ですか?」
「ええ。中々、仕事が忙しくってね。」
「私たち、今度行くの。・・・・ルネも一緒に行かない?」
「良いですね。その時はぜひご一緒させて下さい。」
ルネさんはそう言って優しく微笑むのだった。
次の投稿は明日です。感想お待ちしています。




