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英雄に憧れて  作者: 三毛実
英雄の出会い
14/28

王都へ

投稿再会です。結局連続投稿となりました。

ここからは第2章の始まりです。投稿時間を0時から18時へと変更しました。

悪魔憑き。古より災厄をもたらすものとして忌み嫌われてきた異形の者たち。残虐非道にして冷血。命持つもの全てを奈落へと引きずり落とすもの。

親から子へ、子から孫へと伝えられてきたその恐ろしさはこの世界の誰もが知っている。



獣の皮を鞣した絨毯の上で、一組の男女が膝を折り、一心に祈りを捧げていた。

そこは、古い木造の家だった。暖かな光を灯すランプに照らされて、質素だが清潔そうなベッド、木棚にはいくつかの食器が収められていて、大人用の椅子二脚とまだ真新しい、子供用と思われる小さな椅子一脚が、丸いテーブルを囲んで置いてある。そのテーブルはチェック模様の刺繍がしてある布に覆われ、上には手作りのうさぎのぬいぐるみが置いてある。一見すれば何の変哲もない、ただの民家のように見える。

その床一面に描かれた、血の召喚陣が無ければ。

男は血に濡れた両手を組んで、朗々と詠唱を続ける。

「~~~~闇の権化たる神デス・エクス・マキナスに願い奉る。我らが魂を代償に、死の使いと契約を結ばん。我らの願いに従い、具現せよ。」

その声が響くに連れて、その召喚陣は次第に光を増し、徐々に中心へと黒い光が凝縮していく。

「出てよ!悪魔!!」

そしてその言葉と共に、一際強い光が辺りを包んだ。

光が収まったとき、そこには一人の、人型をした狼のような悪魔が浮かんでいた。

全身を白い体毛が覆い、ふさふさの尻尾をゆっくりと振っている。その青い瞳は怪しく輝き、妖艶な雰囲気を身に纏っていた。


その悪魔は辺りの光が収まるにつれ、ぼんやりとしていた頭が次第にはっきりとしてきた。うっすらと目を開ける。周囲は見たことのない光景だった。

(これは・・・・。ああ、そうか。私は、召喚されたのだな。)

悪魔にとって今回が、悪魔として初めての契約だった。

悪魔とは、魔物が体内に溜め込んだ魔力によってその精神が進化し生まれた存在であり、肉体が滅んでもその精神体はこの世を彷徨う。そして精神体となった悪魔は人とある約束を結ぶ事によって人の願いを叶えてくれる。それが契約と呼ばれる儀式である。

目の前を見ると、ひと組の男女が居た。

男は血に濡れた手で胸を抑えながらも決然とした態度で、女は青ざめた顔をして震えながら、両手で体を書き抱くようにしてこちらを見ている。

「・・・・私を呼んだのは、あなたたち?」

二人の目を見て、確認を取る。

「・・・・・ああ」

男が答える。

「ご用件は?」

ひと組の男女・・・リリーとシュダは見つめ合い、頷く。

「○○○を・・・、この子を、助けてくれ。再び、人として生きられるようにしてくれ。」

シュダがそう言うと、リリーはその両手をゆっくりと広げ、その手に持っていた赤ん坊を見せてくれた。どうやらまだ生まれたばかりのようだ。息は浅く、ひと目で瀕死と分かる。このままではもう長くないだろう。

「対価は?」

「・・・・私と妻の、命だ。」

悪魔との契約の代償。それは契約者の心の底からの感情エネルギー、俗に言う魂を対価とする。精神体となった悪魔にとって人の強い感情や意思は何よりも素晴らしい供物となる。

「よろしい。あなた達の願いは叶えてあげるわ。」

その言葉に、二人は安心したようだ。リリーの持つ赤ん坊に向けて語りかける。

「○○○、勝手な親で済まない。お前には生涯の重荷を背負わせてしまうだろう。だが、それでも私達は、お前に生きていて欲しいのだ。」

「○○○、あなたはあなたの人生を送りなさい。」

二人は名残惜しそうにその頭を撫で続けていたが、悪魔には関係のないことだ。

「・・・良いかしら?それじゃ、対価をもらうわね。」

二人は怯えた顔で、しかしお互いを見合わせてしっかりと頷いた。

それを見たセシルはその手を軽く振る。その途端、二人はその場に糸が切れたように崩れ落ちた。

「確かに。あなた達の魂、頂いたわ。」

二人が動かなくなったあと、悪魔は自分の内に宿った感情に戸惑っていた。

(・・・・・この暖かさはなんだろう?)

悪魔はその正体を疑問に思いながらも、契約を果たすために残された赤ん坊の体へと入っていった。



時は流れ、ある研究所にて

「ギリザドがやられただと・・・?一体どうやってだ!?」

「それが、その少年はティアを使いこなしたというのです。」

「信じられん。」

あれはまだプロトタイプだ。普通の人間が使用した場合狂人と化してしまうはずが・・・。一体何者なのだ。

「そいつはどこへ向かった?」

「王都です」。

「王都には・・・あいつがいたな。連絡を取れ。」

「畏まりました。」


アルクとティアの二人は、王都にたどり着いていた。

「やっとついた。」

「ここが、王都・・・。」

立派な城門を通ると、そこは人や物で溢れていた。

「まるでお祭りみたいだ。」

「・・・・。」

「さて、早速だけど、まずはギルドに行って冒険者登録をして・・・・。」

今後の計画を立てているアルクの横で、ティアは街の屋台に目が釘付けになっていた。

「・・・美味しそう。」

ティアは屋台にフラフラと、まるで吸い寄せられるように歩いて行った。

「ティアはその間・・・あれ?」

そう言ってアルクが隣を見た時には、既に彼女は居なかった。


「ティアー。どこー?」

ティアの名を呼びながら、アルクは街の中を歩き回っていた。

「大丈夫かな・・・。」

ティアの心配をしていたアルクだが、ふと辺りを見渡すと、自分の知らない風景になっていたことに気づく。

「って、あれ?ここは・・・・・・・・・・・・どこ?」

ティアを探していたアルクは知らぬ間に細い路地裏に迷い込んでいた。

「まさか・・・迷子?」

道を聞こうにも人っ子一人いない。

(まいったな)

どうしようかと思案していると遠くから足音がした。

足音から察するに、段々とこちらに近づいてきているらしい。

「待てこのガキ!」

「誰が待つかよ!!」

怒鳴り声が聞こえたと思ったら、目の前に曲がり角から一人の少年が飛び出してきた。

「あ」「あ」

その少年は見た感じ同じ位の年だった。その背に旅人が使う布袋を背負っている。深めの帽子を被り、首元には装飾としては少し大きめの十字のネックレスをぶら下げていた。

半袖短パンのワイルドな格好をしていて、身長は僕より高く、体つきは細いが引き締まっている。帽子からはみ出たツンツンとした髪は見事なまでに白く、太陽の光を反射して輝いていて、その青い瞳を際立たせていた。鋭い顔つきで、切れ長の目は全体的にキリッとした印象を与えてくる。つまり、なんというか、イケメンだった。

お互いにびっくりして固まっていると、また怒鳴り声がしてきた。

「う、うわ、やばい!」

事情は知らないが、困っているようだ。

「ここに隠れて!」

すぐそばに落ちている木箱を指差してその男の子に言う。

「わ、わかった。」

男の子は戸惑いながらも僕の言葉に従い木箱に飛び込んだ。

僕はその上にもう一つ木箱を重ねると上からそばにあったぼろ布をかけて目立たなくする。

丁度僕が男の子を隠し終わった時に、曲がり角から二人の騎士が飛び出してきた。

「くそ、すばしっこい野郎だ。」

「どこいった。」

二人はキョロキョロと辺りを見渡し、近くにいた僕に気づくと駆け寄ってきた。

「おい、小僧、さっきこっちに白髪のへんな小僧は来なかったか?」

「お前と同じくらいの年だ。」

「その人ならあっちに。」

そう言って僕が反対側を指差すと、二人は礼も言わずに走っていった。

足音が遠ざかり姿が見えなくなった辺りで木箱をコンコンとノックする。

「・・・・行ったみたいだ。」

すると木箱がガタガタとなり、中から男の子が這い出てきた。

「ぶはっ。助かったぜ。」

「なんで追われてたの?」

「お前は何でこんなところにいるんだ?」

男の子は質問に答えず、そのまま気軽に話しかけてきた。

「その・・・ちょっと道に迷っちゃって。」

迷った挙句、アルクは正直に答えた。

「ハハッ。お前、その年で迷子かよ。」

アルクの返答に男の子は大きな声で笑い出す。

「面目ない。」

男の歯に衣着せぬ物言いにアルクの体は小さくなっていく。

「そこの角を曲がって、しばらく行った先のT字路を左だ。そうすれば大通りに出るぜ。」

「ありがとう。」

「どういたしまして、だ。それじゃな。」

そう言うとルシハは、更に路地の奥へと歩いて行った。

「うん、またどこかで。」

僕らはお互いに手を振って別れた。

「・・・・あ。名前、聞き忘れた。」

また今度会ったら聞こう。


「あ、名前。」

男の子はアルクと別れ、何度か道を曲がってからポツリと呟いた。

「聞き忘れちまった。」

「気になったの?」

突然、彼の脳内に声が響く。

「ああ。」

「珍しいわね。あなたが人の名を知りたがるなんて。」

「そうか?・・・まあ、そうだな。真っ直ぐそうな、良い奴だった。それに・・・」

男の子はアルクの顔を思い出し、口の端を持ち上げて薄く笑う。

「あいつからは、俺と似た匂いがしたからな。」


次の投稿は明日です。感想お待ちしています。

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