森の中へ
手を引かれて、僕は森の中を歩いていた。森はどんどんと深く、薄暗くなっていく。
前を行くリーシャは僕の腕を引いて、迷うことなくグングンと歩いていた。この細腕のどこにこんな力があるのか。
「なんだ。魔力の濃い方に進めばいいだけじゃない。やっぱり私は天才よね。」
僕は少し足を早めて彼女の隣に並んで声をかけた。
「・・・英雄様。」
「え、英雄・・・。」
僕が英雄と呼ぶ度に彼女は感激している。そんなに嬉しいのかな。
「・・・コホン。英雄って読んでくれるのは嬉しいけど、ちょっと仰々しいかな。リーシャでいいわ。」
「それじゃリーシャ。」
「切り替え早い!」
ガンとしているリーシャを無視して僕は尋ねる。
「僕が連れて来られた意味って?」
その言葉を聞いた途端に目線を彷徨わせるリーシャ。
「・・・そ、そういえば、君の名前聞いてなかったね。おしえてくれる?」
はぐらかしたな。
じーっと不満ごと視線をぶつけるが、彼女は只管に前を向き視線は合わせない。
・・・・まあ、もうここまで来てしまったし。今更どうでもいいや。
「・・・・アルク。」
「アルクか。ならアル君だね。」
「アル君て・・・。」
子供か。
「アル君は何歳なの?」
「14だよ。」
「お!来年で成人だね。何になりたいの?」
「・・・。英雄。」
「ええ!私と一緒―――」
「になりたかった。」
「だ・・・った?何で?」
不思議そうに僕の顔を覗き込んでくる。僕はその事を考えたくないのに。
「・・・この話は嫌なんだ。リーシャは何歳なの?」
「・・・そう?まあ、いいけど。何歳だと思うー?」
いたずらっぽく笑うリーシャ。
聞かれて僕はリーシャを見る。
身長は僕と同じくらい。見た感じ僕より年上だが、そんなに離れてはいなさそうだ。
そういえばリーシャはもう冒険者なのだし、最低でも15になっているはず。
「じゃあ、15?」
そう言うとリーシャは不機嫌になって僕から顔を背けた。
「・・・・な。」
「そんなそっぽ向いてボソボソ言っても聞こえないよ。何歳だって?」
するとリーシャはキッと目尻を釣り上げて叫び返した。
「17よ!!悪かったわね!!」
「え!?僕の3つも上!?」
素で驚いてしまった僕。
「なんでそんなに驚くのー!?心外よ心外!この溢れる色気で分かるでしょ普通!」
そう言ってリーシャは胸を反らす。
つい胸の膨らみに目が行きそうになるが、慌てて逸らす。
「いやだって、リーシャはまだ色気より食い気でしょ。キーカ抱えてあんなに嬉しそうだったし。」
「ふーんだ!」
そのままプリプリと頬を膨らませて、リーシャは先に歩いていく。
「そういうところが子供っぽいんだって。」
僕の呟きは日の傾き始めた空へと吸い込まれていった。
「そろそろ野営地を見つけたいわね」。
言われて空を見上げると、日はすっかり傾き地平線へと沈み始めていた。
空は綺麗なあかね色に染まっていて綺麗だった。
次の投稿は明日です。感想お待ちしています。




