予感
満を持して、リーシャちゃん登場!の巻
「英雄の、リーシャロッテ・アルドラドです!」
突然、風が吹いたように感じた。
「ふふん。」
彼女の顔はキラキラと、まるで星が瞬いているように輝いて見えた。
得意気なその人の顔を見て僕はー
「・・・さて、牛の様子を見てこようかな。」
「無視!?」
何も見なかった事にした。
自称英雄なんて、怪しいにも程がある。危ないところだった。僕も一歩間違えればこんな人になっていたのか・・・。
立ち上がり、背を向けて歩き出した僕の首根っこを、後ろから伸びてきた手に掴まれた。
「ちょっと、ちょーっと待って。待ちなさい!」
逃走失敗。
「えーっとですね・・・。」
どうしようか。
僕はとりあえず、適当にあしらう事にした。
「・・・ここは、あっちですね。」
そう言って適当な森の獣道を指差す。
「あっちね。ありがと!」
彼女は勢い込んで頷くと、そのままその方向へ歩いて行った。
僕はそのまま、そこで昼寝を続けた。
10分後、彼女は帰ってきた。何やら額を赤くしている。
「お帰りなさい。額が赤いですけど、どうしました?」
「こ、これは悪魔の罠が仕掛けてあって・・・。そ、それより!向こうは行き止まりだったわよ。どういうこと?」
「あー・・・、ごめんなさい。間違えたみたいです。そっちですね。」
そう言って今度は適当な藪の方を指差す。
「なんだ、間違えたのね。それなら仕方ないわ。ありがと、今度こそ行ってくるわ。」
「行ってらっしゃい。」
僕はまた、昼寝を始めた。
その更に10分後、また彼女は帰ってきた。体のあちこちを木の枝やら葉っぱ塗れにして、何やら両手にはいっぱいのキーカを抱えている。
「へへーん。いいでしょ。偶然見つけた木に、沢山実ってたの。」
「それ、渋キーカですよ。」
「えええ!!」
信じられないという顔で両手に抱えたキーカを見つめている。
「そ、そんな・・・。」
「残念でしたね。それでは僕はこれで失礼します。」
「待て。」
再び逃亡失敗。
「あなた・・・。」
(流石に嘘がばれた?)
「私と一緒に来なさい。」
「へ?」
「あなたの言ったとおりに行っても私1人じゃ迷っちゃうもの。だから、あなたも来れば問題解決じゃない?さすが私!発想の逆転ね。」
ヤバい。このままじゃ僕まで連れて行かれる!?
「で、でも英雄様、僕なんかが一緒に行ったら、それこそ足手まといにー」
「え、英雄・・・。大丈夫!この私にかかればあなた1人守ることなんて簡単よ。だから安心して付いて来なさい!」
なんかツボ入っちゃった!?ヤブヘビだ!!
彼女は嬉しそうに僕の手をとった。
「さ、行くわよ?」
僕は一瞬迷った。ここでまた適当にごまかして彼女から逃げることは可能だろう。
(でも)
何故か僕は、この英雄を自称する彼女に付いていけば、自分の中の何かが変わる予感がしていた。
「・・・はい。」
「よし!」
そうして僕は、リーシャに引きずられて、魔境へと向かうことになった。
次の投稿は明日です。感想お待ちしています。




