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かぐや姫のリベリオン  作者: 茅野ちよ
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3/6

望月輝夜の偽物

「おはよー、輝夜」

「おっは! かぐ」

「よう、望月」

「はよ、もっちー」


 学校に着くなりいろんな人から挨拶される。この時間が大好きだ。ま(・)だ(・)ありのままの自分でいられる。


 いつからこんな、偽物を飼うようになったのか。はっきりと覚えていない。嫌ならやめればいい、そう思うかもしれないが、みんなが好きなのは偽物の私で、みんなが知っているのも偽物の私だ。


 なにか、面白いことを言わなければならない。この場の空気を変えなければならない。みんなを、笑わせなければならない。いつしかそんな、「勝手な責任」に抗うことができなくなった。


 今日も、今日という何の変哲もない一日が過ぎてゆく。

 私はただ、時間に身を任せ、ありのままの自分を隠し通す。


「輝夜って面白いよね」

「ね! あと、なんか一緒にいて安心するってゆーか。包容力?」

「うわ、めっちゃわかる」


 友人たちが私を褒め出した。普通は喜ぶべきところ。でも、この時間、私はいつも罪悪感で押し潰されそうになる。騙してごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい。


「えー! やだ嬉しい〜! あたしもみんなが大好きだよん」

「大好きなんて言ってないしなあ!」

「キャー! 私も大好きだよんっ」


 わざとこういう反応を見せてもらえるように、変なことを言う。私なんかが大好きなんて言って、ごめんなさい。


 もしも私が魔法を使えるならば、偽物の自分を消したい。でも、どうせ消せない。素の自分の方が、大嫌いだから。


 こんな、いちいち自分の言動にイラついて、ムカついて、また自分を大嫌いになって。

 そんな、変わり映えのない一日の終わりに、私の人生という名の物語の起承転結、「起」が起こ(・)っ(・)た(・)。




「さあ、わたくしたちと月の世界へ戻りましょう」


 いや、いやいやいや何この人。というか「さあ」ってなに? 何が「さあ」なん? というか誰。というか「月の世界」? 「戻る」? 大人でも厨二病っておるんや。

 これが私の最初の感想。


「えっと、貴方は?」

「わたくしは月からの使者。貴方をお迎えに参りました」

「……迎え?」

「えぇ、貴方はかぐや姫。いずれは月に戻るのが約束」


 確かに私の名前は「輝夜」だ。間違ってはいない。だが、怪しすぎるだろう。何を言っているのか理解できないし、なぜ私に「姫」をつけるのかもわからない。

 

 それではまるで、竹取物語のようではないか。確かにそう考えれば目の前の老人が言っていることにも説明がつく。だが、私は月には行かない。いや、正確には行けない。宇宙飛行士ではないのだから。


「竹取物語」の中のかぐや姫。かぐや姫が下界、地球へ来た理由は、月の世界でなんらかの罪を犯したから。


「私が、何の罪を犯したんですか」


 私は少し、ほんの少しの遊びのような気持ちだった。まさかこれで、目の前の老人を怒らせるなんて考えてもいなかった。



 今は昔、竹取の翁といふものありけり……。これは、中学一年生で誰もが習う、「竹取物語」の初めの文。


 確かクライマックスは罪を償う時間が過ぎたため、天人たちがかぐや姫を連れ戻しにやってくる。おじいさんやおばあさんはそれに抗うが、虚しく。かぐや姫は帝に不死の薬を渡し、月へ帰って行く。……といった感じだった。


 私はただ、興味本位だった。かぐや姫がどのような罪を犯したのか、それは明記されていない。そう、だから、気になっただけだった。

竹取物語、みなさん覚えていますか?

かぐや姫のお話、と言うことはわかっても、

微妙に思い出せないですよね? ……私だけじゃないですよね!? (大暴露)

も、もしも私と同じような方がいらっしゃたならば、一緒に学んでいきましょう!

次回は「望月輝夜は怒られる」です。お楽しみに!

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