表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一魂一体  作者: Kioh
PR
3/15

第3話 悪魔狩り

一魂一体――いっこんいったい。

ひとつの魂に、ひとつの身体。

「やあ、如月だ。


たぶん、君はこう思っているんじゃないか。


悪魔狩りって、どうやってやるんだ――って。


答えは、案外単純だ。


俺には匂う。


欲望の匂い。

興奮の匂い。

そして何より、人を殺したくてたまらないという意思の匂い。


長い間、檻の中に閉じ込められていた獣が、ようやく外へ放たれた時のような――そんな匂いだ。


悪魔は、現世を歩くために“媒介”を必要とする。


宿主を探す。

自分の器となる肉体を探す。

そして、その奥にある魂を縛りつけ、肉体の主導権を奪う。


薬物、欲望、殺人。


それらは、人間が自らの罪を深めていくための道だ。


生きている者が自分自身の罪に溺れ、周囲の人間からも見捨てられ、無防備になった時――

悪魔はその魂を肉体の奥深くへ閉じ込め、その身体を乗っ取ることができる。


その魂を解放する方法は、ただ一つ。


悪魔そのものを、永遠に消し去ること。


だが、当然代償はある。


肉体は失われる。

そして元の魂は、自らの罪を償うため、地獄へ導かれなければならない。


悪人の魂や肉体を悪魔が弄ぶこと自体は、正直どうでもいい。


だが、悪魔が無関係な人間に手を出すなら、話は別だ。


俺には力がある。


俺には、それができる。


そして中学生の頃から、その力は俺の人生の裏側にある秘密になった」


雨の夜だった。


街は重く沈み、薄暗い街灯だけが濡れた道をぼんやりと照らしている。

家々はすでに静まり返り、誰もが明日のために身体を休めているような、そんな時間だった。


その静寂を破るように、公園の奥から声がした。


ひび割れた、暗い声。

喋るたびに、抑えきれない笑いが混じる。


「そうだ……そうだよ……これだ……。たまらない。楽しすぎる。全然足りない。もっとだ。あと一人……あと一人だけ人間を……」


雨の中、一人の男が立っていた。


その瞳は赤く染まり、口元からは獣のような犬歯が覗いている。

両手からは血が滴り、その足元には、もう動かない人間が倒れていた。


男が言葉を終えた、その時。


すぐ近くから、別の声が聞こえた。


「楽しかったか?」


そこにいたのは、如月だった。


公園のベンチの上にしゃがみ込み、片手で頬杖をついている。

視線は地面に落としたままだった。


それでも、怒りに燃える悪魔の赤い目だけは、はっきりと見えていた。


悪魔は如月に気づくと、自信たっぷりに口角を吊り上げた。


「ちょうどいい! あまり苦しまないように殺してやるよ。俺が――」


悪魔が言い終える前に、如月はゆっくりと顔を上げた。


そして、その目を真正面から見た。


その瞬間、悪魔の言葉が止まった。


恐怖が脳に広がるよりも早く、如月はすでに悪魔の目の前にいた。

次の瞬間、如月の手が悪魔の顔全体を掴んでいた。


如月は悪魔の耳元へ顔を寄せ、静かに言った。


「人を殺すのは、最低の罪だ」


そして、少しだけ間を置いて続ける。


「それと――」


如月の指に、力がこもる。


「お前は喋りすぎだ」


雨音の中に、骨の軋む音が混じった。


ミシリ、と。


悪魔の顔を掴む如月の指に、さらに力がこもる。

ミシ、ミシ、と嫌な音が続いた。


悪魔が初めて、本当の恐怖を理解した瞬間――


その頭は、如月の手の中で弾け飛んだ。


その直後、残された肉体がびくりと大きく震えた。


雨は、まだ降り続いている。


それなのに、男の身体は内側から燃え始めていた。

炎というより、肉体そのものが限界を迎え、崩れていくようだった。


一つの身体に、二つの魂。


本来ありえない状態に耐え続けた肉体は、悪魔が消えた瞬間、その反動に耐えきれなくなったのだ。


皮膚が黒く焼け、指先から灰のように崩れていく。

雨粒がその身体を叩いても、燃え広がる崩壊は止まらない。


やがて男の肉体は、煙すら残さず、夜の空気に溶けるように消えていった。


如月は、その場に立ったまま、しばらく雨を浴びていた。


「……これで終わりか」


誰に向けた言葉でもない。


そう呟いてから、如月はゆっくりと踵を返した。


雨音だけが、公園に残っていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


今回は、如月の“悪魔狩り”としての一面を書きました。

次話では、その力が美月との関係にどう影響していくのかを描いていきます。


今後は、できれば週に二話ほど更新していきたいと思っています。


ただし、作者のテンション、睡眠時間、そして現実世界からの攻撃次第では、なぜかそれ以上投稿されることもあるかもしれません。


とはいえ、最低でも週に一話は更新できるように頑張ります。

そこだけは、作者と読者様との小さな約束ということで……!


少しでも続きが気になっていただけたら、次話もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ