表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/95

092●フロアの呼び名

「ブラッド、どうした?ため息なんかついて。」

「・・・いや、島に残してきた海賊の爺さんたちのことを思い出してたんだ。」

「首領や年寄り連中か。どうしてるかな・・・。」

「若気の至りで反発して飛び出したけど、もう1年だ。ちょっと心配だ。」

「まがりなりにも、育ての親だからな。」

 

えっ、王虎さん、いいんですか?一週間も休みを?

船も自由に使っていいって?


俺たちは帆船を操り、自分たちのかつての根城、

通称「パイレーツ・オブ・トレビアン」へ向かった。

入り江に静かに入ると、懐かしさで胸がいっぱいになる。

「投錨!帆をたため!上陸準備!」

仲間たちは伯爵領海軍で鍛えた動きで、素早く対応する。

 

「おーい!首領ー!爺さんたち、いるかー!」

茂みの中から、にょっきりと顔が現れる。

「なんだ、ブラッドか。驚かすなよ。海軍の討伐隊かと思ったじゃねえか。」

「ガブリエルじいちゃん、久しぶり!・・・あれ、痩せた?」


あちこちから年寄りたちが集まってくる。

持参した食糧を渡すと、すぐに食べ始める。

「喉、詰まるぞ。ゆっくり食べてくれ。まだたっぷりあるからな。」

「いやあ、ちゃんと食べるのは、ゴホッ、久しぶりでな・・・ゲフッ・・・。」

「首領はどうした?姿がみえねえ。」

「食べるもんがなくて、無理して漁に出たんだ。嵐に巻き込まれて、それっきりだ・・・。」

「お前らが出てったあと、だんだん海軍の見回りが厳しくなってな。海賊はどの一家も捕まった。みんな縛り首だったろうな。俺たちは魚を獲って暮らしていたけどよ、もうこの歳じゃ漁もままならん。」

いや、捕まった海賊たちは、各地で転職して元気に暮らしてる。

この島、小さすぎて見落とされたんだな。

 

「だからさ、みんな元気にやってる。俺たちもそうだ。どうだ、一緒に来ないか?ちゃんと食べて、飲んで、寝て、みんなで暮らそうや!」

爺さんたちはぽかんとした顔をしていたが、

やがてガブリエルじいちゃんが言った。

「できねえよ、ブラッド。俺たちはお前らの世話になるわけにはいかん。」

「遠慮するなよ。子どもの頃から面倒見てくれたじゃないか。今度は俺たちが面倒見る番だ」

「・・・いや、そうじゃねえ。そうじゃねえんだ・・・。」

 

爺さんたちは重い口を開いた。

そうか・・・俺たちは、海賊が奪った船の乗客の子どもだったのか。

他の一家が皆殺しって言ったのを、連れてきたのか。

この島に着いたら、流行り病で海賊も親たちも次々命を落としていって、

生き残ったのが爺さんたちと俺たちなのか・・・。

 

「お前らの親は、裕福な暮らしをしてたんだろうな。この島じゃ、すべてが違いすぎたんだ。俺たちはお前らの親を奪ったんだ・・・。」

 

幼い頃の記憶がよみがえる。

釣りを教えてくれた。

舟の漕ぎ方、帆の張り方、風の読み方。

肩車、虫取り、怪我をした時に手当てしてくれた優しい手。

爺さんたちが泣いている。

爺さんたちは、貧しさや社会的偏見から、この道に入ったんだな。

悪いことと分かっていたのか。

でも、命はとらないっていうのは、鉄則だったんだよな。

俺たちも声が詰まる・・・。

いや、言わなくちゃ。

 

「じゃあ、まあ、ともかくだ、爺さんたち、乗船してくれ!」

「・・・話が見えねえ。俺たちは仇なんだぞ!」

「それがどうした?育ててくれたのは、間違いなくあんたたちだ。行こう。伯爵領の飯は、もっと旨いぜ。」


 

えっ、首領?!この施設にいたの?

漂着して、高齢者施設に入れてもらった?

なんで連絡しないんだよ!

毎日が楽しくて、すっかり忘れてた?!


まあ、しょうがねえなあ。じゃあ、ここで暮らそう。

俺たちも来るからさ。

全員、個室で三食付き。介助員とメディカルチームも常駐。

安心だ。ホールでいろいろできるし、舟やヨットだって使えるぞ。


えっ、このフロア、爺さんたち専用にしてくれるの?

フロアの通称名も決めていい?そ

れじゃあ、お願いします!

ぜひ‘パイレーツ・オブ・トレビアン’で!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ