093●‘サイコロ’
わたしたち調査艦隊は、新たな任務を受け、
連邦宙域外へと航行している。
現在、目標に向かって航行中である。
「艦長、また、あの超磁性体ですか。ちょっと怖いですな。」とクドー。
「まあ、今回は推進力も強化してもらいましたから。」と‘操舵手’。
「外殻に流す電流も強化してるし、バッテリー量も多いですから。」と‘その他’。
「そうですよ。いざとなれば、ぬるい飲み物でがまん、がまん。」と‘おまけ’。
だが、問題は超磁性体が、今どこにあるかだ。
「このあたりの可能性が高い。探索機能、全艦全開。」
修理・改修・改装されたエンターサプライズ号が帰ってきた。
だいじょうぶだよな?
やっぱり代替艦では、勝手がわからんかった。
天井に鉄分が入っていたというのは、驚いたからな。
銀河連邦宙域に帰還、報告を済ませた。
レイディ・アマンダから入手した超磁性体の欠片、通称‘サイコロ’も提出した。
任務後の休暇を楽しんでいると、急に上司から呼び出しがあった。
「グレッグ大佐、休暇中に済まない。しかし、ことは重大だ。」
「なんでしょう、中将閣下。」
「貴官が持ち帰った、‘サイコロ’だが、再現できんのだ。」
「なぜです?組成分析すれば、同じものを作り出すことが可能では?」
超磁性体の存在は、医療、宇宙工学、日常家電のダウンサイジングと効率化、
エネルギー交換率の向上、シールド性能の進化、など様々な分野に影響する。
サンプルがあれば、分析して再現できるはずである。
「それがだ、大佐。組成・成分は分析をしたが、うまく製造ができん。現在の技術ではお手上げだ。これを見ろ。」
「未知の元素が含まれている?!なるほど。では、あの‘サイコロ’は貴重品ということで保管するしかないのですね。いわゆるお蔵入りですな。」
中将の目がキラリと光る。
「だが、実際にはあの‘サイコロ’と同じものが、大量に眠っているではないか。」
「えっ・・・・。ということは、あの連邦宙域外にある、隕石群のことですか?」
「そうだ。大佐、貴官は貴重なレアメタルの鉱山を発見したのだ。他のだれかに知られんうちに、我らで独占するのだ。」
「条約では、宇宙資源は共有するとなっていますが。」
「それは連邦の宙域内での話だ。今回は外だ。頼んだぞ、大佐!」
と、いうようなわけで、わたしたちチームは、
またしても連邦外宙域に向かっているのだ。
なんだが、今ひとつ、気乗りがせん。
脱出ポッドも乗員数の2倍確保している。今回は不良品なし、だ。
前回、ルナとふたりで乗ったポッド、結構よかったなあ。
そんな思いに浸っていると、‘その他’の声があがる。
「超磁性体隕石群らしきもの、発見!磁力反応、超大です!」
全員が大型モニターの長距離探知データを見る。
「艦長、これですな。多分、まちがいない。」
「クドー、作戦どおりに進めよう。まずは、確認だ。探査機射出せよ!」
「‘おまけ’了解!僚艦より探査機を射出。発進します!」
探査機から詳細データが来る。ノイズがある。あの時と同じだ。
「‘サイコロ’のデータと照合します。うーん、全く同じですね。」と‘その他’。
「それでは、ミッション‘タイト・ロープ’を開始する。総員、配置につけ!シートベルト着用を忘れるな!」
僚艦を一列に配置する。
先頭は司令艦。各隕石が反応して、後についてくる。
「よし、いいぞ!少しずつ予定宙域に運ぼう。」
「あっ、艦長!隕石に変化あり!縦に!連結したあ!」
「磁力増大!こんなことが?想定レベルを上回ります!」
「全艦、出力をあげろ!こっちが引き寄せられるぞ!」
調査艦隊が力づくで隕石群を捻じ伏せる。
傍からみれば、一直線の棒を引っ張っているように見えるに違いない。
うーん、綱渡りだな。
艦内時間で5時間が経過する。
交代で食事と休息をとる。状況は予断を許さない。
「司令部はどういっている?」
「はい、‘がんばれ’、とのことです。」
「それだけかぁ?ほんま、あてにならへんなあ。」
「艦長、流石にキツイですね。予定宙域までエネルギーが持たない確率、48%です。」
そら、あかんわ。どうしよ?
・・・あっ、そうか引いてダメなら、押してみな、や!
「作戦行動を一部、変更する。全艦、外殻に電流を流し、隕石群の極を特定せよ。」
「・・・特定、完了!でも、それでどうします?」
「我が艦隊は、巨大な棒状になった隕石群の背後へと回り込む。同じ極性の磁力や。これなら反発しあって、くっつかへん!棒状隕石群の後ろにつく!」
手のひらに棒を乗せて階段を登るような感覚や。
不安定やけど、隕石群が艦にくっつく心配はあらへん。
そろそろっと押して行ったらええねん。
これやったら推力を増やさんでもいけるやん。
「艦長、お見事!あれ?コンピュータがこの作戦を継続するには、微調整が必要と言っています!」
「‘おまけ’、そのデータ、わしのコンソールに転送してや。」
なになに?6つも選択肢があるんか?
どれ選んだらええんか、人口知能にも、わからへんて?!
このままやったら、作戦自体が崩壊するんかあ!
「艦長、どうします?6つものプランのどれかを選ぶかなんて・・・。」
うーん、まさに運頼みやな。・・・しゃあない、最後の手ぇや。
「よっしゃあ、プラン6や。入力してや!」
「‘おまけ’了解!プラン6を実行します!」
やったで、やってもうたで。・・・どうなるやろ?
「成功です、艦長!ステキ!」
「すごいですね、的中です。いやあ、おみそれしましたあ!」
「艦長、判断力、決断力、さすがですね!よかったあ、艦長が艦長で!」
「これはすばらしい!ずっとあなたについて来て、よかった!」
いや、それほどでもないねん・・・。
こっそり、コンソールの中でサイコロふったら、
6が出ただけやねん・・・。




