081●大神島 その4
もう夏も終わりか。カズミの案内でいろいろな所を見ることができる。
今日も岬に出かけた。海を見ながら、彼女の話を聞く。楽しいな。
「大昔、わたしたちの祖先は海を渡って来たっていう伝承があるの。」
「この島に?」
「ううん。多分、日本列島のどこか。月と太陽に関係する大陸の民族だっていう、ただの伝承だけどね。」
「なんでこの島に、渡って来たの?」
「一族の間で争いが起きて、わたしたちはこの島に逃れて来たっていうことなの。」
「ふーん。じゃあ、別れた人たちはどこかに残っているかもしれないね。」
「うん。日の巫女がそっちの集団を率いたって聞いたような。よくわかんないけどね。」
宿に戻ると主がギョロっと睨みながら言う。
「あんた、月の巫女に手えだすんじゃないぞ。」
月の巫女?日の巫女じゃなくて?何だ、それは?
主はそれだけ言うと、行ってしまった。
あっ、おねえさん。もう、おねえさんじゃない、って?
いや、いや!お若いですよ!
えっ、もう夕飯?!いつもおいしいです!
すぐ、降りて行きますね!ありがとうございます!
「あれっ、ひっかき傷だ。さっきの藪の中でひっかいたんじゃないか?傷テープあるよ、ちょっと待って!」
「平気よ。これぐらいの傷、すぐ治るの。ほら、もう血がとまった。」
驚いた。わずかな間に傷口に皮が張る。すごい回復力。
「すごいなあ。・・・この島には、同じ体質の人が他にもいるのかな?」
「ううん、もうわたしだけ。100年ほど前までは、何人もいたっておばあちゃんが言ってたけど。すばしっこくて、すごい力持ちだったんだって。」
「ふーん・・・。それは遺伝子が関係しているかもしれないね。」
「遺伝子?メンデルの?」
「そう、そう。どの遺伝子が、その回復力に関係してるか、わからないけど。」
「そうかあ。わたしたちは、島の中だけで婚姻を繰り返してきたけど、それが影響しているかもしれないよね。」
えっ!カズミ、子どもができたって!やったあ!
産まれたら島を出ようよ!
研究も一段落したし、大学にもどって成果をまとめるよ!
一緒に3人で暮らそう!籍をいれなくっちゃ!




