082●大神島 その5
だめ!あのふたりを行かせてあげて!
月の巫女なんて、ただの伝説じゃない!
お父さん、みんなで松明なんかもって、どうするのよ?!
カズヨシさんとカズミさんが、島から出てもいいじゃない!
あの子も許せんって、やめてよ!
こっち、こっちだよ。静かに。
小舟があるの。
この島にいると、カズヨシさんも、アキラくんも殺される。
ともかく3人で逃げて!
水と食べ物はいれてあるけど。
ごめんね、本当にごめんね!
「思い出したよ・・・。これが頭痛の原因だったんだな。」
老婆に会って、意識を無くしたアキラ。
深い眠りから覚めたみたい。
何を思いだしたの?
ジンもココアちゃんも心配している。・・・でも、あなたはそれを言わないのね。
「一生をかけても罪を償う人がいる。一生をかけても罪を許せないという人もいる。そのどちらの人生にも、深い悲しみが刻まれる。俺はな、新しい悲しみを、もう、誰にも背負わしたくないんだ。」
取材で卑弥呼は「日巫女」であったとする説を聞いたことがある。
卑弥呼は太陽神に仕える巫女であり、
「ひみこ」は「日巫女」または「日御子」だと言う。
魏志倭人伝に記された「鬼道に仕え、衆を惑わす」というのは、
巫術やシャーマニズム的な宗教指導者としての卑弥呼の姿なのか。
政治と宗教を統合した霊的支配者であったのか。
あるいは何か特殊な能力を受け継いでいた?
陰陽に応じる表裏一体の月巫女はいたのか?
文献も遺跡も学者も、何も俺に答えてはくれない。
4人で船に乗る。
フェリーを見送る老婆がいる。
その後ろには、さらに老いた老爺がいる。
ふたりに手を振る。
俺は過去に戻ることはできない。
だが、今を未来に繋ぐことはできる。
憎しみは連鎖してはいけないんだ。
そうだろ、ジン・・・。




