008●祭りに喧嘩はエドの華
「フェスティバル?今話題の、あれに行くのか?」
「警備よ、警備。浮かれちゃだめだからね。」
「いや、エイミー、浮かれないほうがどうかしてる!」
ラブリーエンジェル社をはじめ、
名だたる企業がスポンサーとなっている史上最大級のフェスティバル。
内容も豪華だ。パビリオン、施設、ショーに加え、ゲストがすごい。
メジャーリーグのあの‘二刀流’選手、
ピッチ外はいつもトレードマークの帽子を被るサッカーの生きる伝説のベレー、
バスケットのスター選手のエア・ジョーク等々。
そして芸能界でも、
国内からは、西郷隆美がセンターを務めるアイドルグループ「田原坂44」、
海外からは歌手レイディ・メガ、
伝説のグループ「メイ・クィーン」など、数えきれないほどの顔ぶれだ。
招待通知が届けば、入場可能、しかも特別招待ともなれば、
好きなゲストと握手、写真撮影に直筆サイン、
そこでしか入手できないグッズなど、特典が山ほどある。
だが、公共機関に登録済みの個人番号での無作為抽出だから、なかなか当たらない。
そして当日。会場はエド・パーク。たった3日間の開催ということもあり、会場はごった返していた。
特別招待者は優先ゲートから入場できる。
しかも、あらゆる列に並ばなくていい。
俺には招待通知さえも来なかったけど、警備として入れたのはラッキーだ。
「もしもし、そこの男の人たち!揉めないでください!」
あっ、声をかけると同時に、殴り合いが始まっちまった!
しょうがないな。身分を伏せて警備しろって言われてるし、ここは穏便に済まさないとな。
あれ?特別招待者じゃないか、ふたりとも?
なら、並ばなくていいんだから、横入りとかで喧嘩する必要はないぞ。
「はい、こちらの特別招待者用入り口からどうぞ。わたし?ラブリーエンジェル社の案内人ですよ。ほら、タキシード着てるでしょう?特別招待のお客様ですから、どうぞ、どうぞ。」
・・・なんか、見覚えがあるようなふたりだな?
「えっ?全員、捕まった?!あの指名手配で潜伏中の連中が、みんな?」
「アキラだって、2人捕まえたじゃない」
「いや、どういうことだ、エイミー?」
20世紀、アメリカで「スラッグシップ作戦」が実施された。
これは、指名手配犯にスーパーボウルの無料チケットが当選したと偽って通知を送り、会場に現れた犯人を一斉に逮捕するという作戦である。
通知を知った家族は、大喜びで潜伏する犯人たちに連絡したのだ。
警官たちはイベントスタッフに扮し、101人の逃亡犯を逮捕することに成功した。
喜びで自らの立場を忘れさせるという心理を突いた、巧妙な手法だった。
ナメクジ(slug)を船(ship)に追い込み、一網打尽にするという意味どおりの結果となった。




