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007●平和と祭り

うす紫の地に、天使を図形化した文様の旗。

ラベンダー公国の新しい旗である。

従来の白地からの変更は、この一事のみ。だが、その意味は深い。


秋晴れの空の下、祭りは始まった。

仮設の店が並び、焼きたてのパンや香辛料の効いた肉料理が香る。

子どもたちはお菓子を手に笑い、音楽隊の陽気な演奏が街に響く。

見世物小屋では、曲芸や人形劇、コメディからシリアスまでの演劇などが人々を楽しませていた。


「いやあ、よかったなあ。シュダーピアって人の原作なんだな、あの‘オムレット’最高!」

「役者もよかった!‘行くべきか、行かざるべきか、それが問題だ’って、内面の葛藤がよく出てたよね。」

「この‘テリヤキ’って、なんですか?すごくいい匂いなんだけど?」

「エンジェラム王国の郷土料理の味付けですよ。試食してみて!」

「うまーい!じゃあ、2人前、お願いします!」

「まいどぉ!よければ豚骨ラーメンってのも、ありますよ!」


ビールやワインもふるまわれる。伯爵からの贈り物だ。

誰もが遠慮なく楽しむが、列を作ることはない。

公国の旗が掲げられた場所には、

いつでも十分にそれらが用意されていることを、住民たちは皆、よく知っているのだ。


だが、祭りには予期せぬトラブルがつきものだ。

公国外からの参加者で、酒に酔った男たちが口論を始める。


「なんだ、そっちからぶつかって来やがって!謝れよ!」

「ぶつかったのは、てめえだろ!やるってのか!」

「上等だ!このヤイヅのマンジ、知らねえ奴はいねえ、あだ名は暴れん坊将軍だ!」

「カザアナのヤハチとは俺のこと!天下のフクショー郡、それもチューナゴンの出身だぞ!」


その時、ひとりの老人が間に入った。

マンジとヤハチは、彼を見上げる。

「なんだあ、男同士のケンカにわりこむんじゃあ・・・ないですよ・・・。」

「そうだ、そうだ!余計なお節介は・・・やめてもらえませんでしょうか・・・。」

老人は鍛え上げられた両腕を組み、ふたりを見下ろす。

「ほっほぉー。儂の仲裁は受けられんというのか?お前ら、公国の住民ではないな?酔っぱらうのは祭りだから大目に見る。だが、迷惑行為はこの地では許さん。儂の言うことが聞けぬなら、まとめて相手をしてやろう。どうだ?」

周囲から声が飛ぶ。

「お兄さんたち、やめときなさいよ。敵いっこないよ。」

「将軍、この人たち、領外から来てるから、まだルールに慣れてないだけですよ。」

「勘弁してやってくださいな。」

「ヴォルおじさん、ゆるしてあげてよぉ。」

雰囲気がマンジとヤハチに伝わりすぎている。老人の威圧感に、すでに酔いも醒めていた。

「では、もう一度聞こう。祭りをおとなしく楽しむか、そうでないのか。それが問題だ。」

「楽しみます!おとなしくします!」

「すみませんでしたあ!もう暴れません!」


ふたりは這うようにその場を離れて行く。老人は苦笑いを浮かべる。

ヴァルター・グレイヴスは、傍らの少女に手を振り、ワインを取りに向かった。

平和な祭りは、まだまだ続く。


祭りとは元々、歴史的にも世界的にも信仰対象を明確にし、

行進や合唱などで闘争本能を発散させ、団結力を高める場である。

古来より、多くの文化圏で男性は共同体の守護者や戦士としての役割を担ってきた。祭りは、いざという時の心の拠り所となる神や聖人への儀式であり、

同時に戦士としての役割を再確認する機会でもあった。

その影響もあるのか、しばしば喧嘩が起きる。


男って、本当にしょうがないんだからあ。


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