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056●新しい時代の第一歩
模擬戦は、あっけなく終わった。
100人の兵士が、30人に制圧された。
あの矢と剣の攻撃を受けると、誰も動けなかった。
マンジは、手当てを受け、水を飲み、訓練場の隅に座り込んでいた。
金属製の模擬剣は、地面に転がったまま。
手が震えて、拾う気にもなれなかった。
「なんだったんだ、あれは。」
誰に向けたわけでもない。ただ、声が漏れた。
隣にいる兵士は、まだ痙攣の余韻が残っているのか、指先が小刻みに動いていた。
矢が命中した仲間の姿が、脳裏に焼き付いている。
矢は刺さらなかった。ただ触れただけだった。
なのに、仲間は膝をつき、声も出せずに崩れ落ちた。
剣も同じだった。閃光が見えた。
筋肉が命令を拒絶し、体が止まった。
数で勝てると思ったが・・・。あれは前世のスタンガンと同じ仕組みなのか?
ツキカゼ教官が近づいてきた。
「マンジ、立てるか。」
「・・・はい。」
マンジはゆっくりと立ち上がった。足がまだ少し痺れていた。
「俺も・・・あの矢と剣を使えるようになるんですか?」
ツキカゼは少しだけ微笑んだ。
「そのために、今日の模擬戦があった。雷の力を知った者たちが、それを扱うのだ。」
マンジは、転がった模擬剣に歩み寄り、拾いあげた剣を握る。
雷の力・・・命を奪わず戦う時代。
その入り口に、自分が立っていることを初めて実感した、最初の一歩でもあった。




