054●雷牙(らいが)
「マイロード、こちらもほぼ完成です。」
「電撃剣か。エンジェルナイトが賢者の剣の殴打モードと共に、電撃を使う技を簡易化・一般化したのだな。」
ロイが剣を振るう。
試しに鎧を軽く打つ。斬れることはない。
電撃モードにする。打つ。鎧に青白い稲妻が走る。
「良い出来上がりだね。この剣を‘雷牙’と呼ぶことにしよう。」
雷牙。
ローレンスの賢者の剣’英雄’が、
殴打モードで地に刺さっていることに発想を得て、研究・製作が進んだ。
この特別な剣は、賢者の剣とは異なる。斬撃はできない。
しかし、その刃には科学という魔法の力‘電撃’が宿っている。
外見は、騎士が使うロングソードに酷似している。
成人男性の指先から胸の中心ほどまでの長さ。
両刃の直線的な形状で、鍔はシンプルながら実戦を想定した造りである。
剣の重心・重量バランスを考慮して設計されている。
一見すると単なる剣である。
内部に組み込まれた技術を想像することはできない。
柄には、交換可能なナノカーボンバッテリーが内蔵されている。
鞘は陽光を吸収し、バッテリーを充電する機能を持つ。
これにより剣は、百回以上の‘電撃’を放つことができる。
刃は二重構造で、外側は堅牢な合金、
内側には常温超電導素材で構成された高密度コンデンサ回路が埋め込まれている。
刃の先端には圧電素子が内蔵されており、
相手に触れた瞬間、衝撃を感知すると、昇圧回路が作動。
さらに、相手の装備に対する接触抵抗値を瞬時に解析し、
最適な電圧に自動調整する機能を備えている。
この剣は、雨の中でもその力を発揮する。
柄と刃の接続部には防水パッキンが施されており、
内部の精密回路を湿気から完全に遮断している。
また、刃の表面には疎水性コーティングが施されており、
水滴は水銀のように、刃の表面を滑り落ちる。
その様子は、まるで刃が水を拒む意志を持っているかのようだった。
この剣は打撃にも特化した堅牢さも誇る。
外殻は鍛冶神の炉で鍛えられたのではないか、という強度だ。
柄の内部には、衝撃を吸収する振動緩衝層が組み込まれており、
電撃回路を守るための設計が施されている。
そのため、例え、電撃を使わずに剣を振り敵の盾や鎧を打ち砕いても、
内部機構が損傷することはない。
重装備の相手でも、刃が鎧や剣、盾に触れれば、
プラズマ放電が防具の表面を迂回するように放電チャネルを形成する。
これにより、相手の筋肉を強制的に収縮させ、
命を奪うことなく、あらゆる攻撃対象生物を無力化する。
‘静雷’と並び、雷の力を宿す剣。
命を奪うことなく戦闘相手を沈黙させる、
非殺傷武器の誕生である。




