046●レッドカーペット
夜の街が、光に包まれている。
煌めくフラッシュの嵐。カメラのシャッター音が、
まるで祝福の鐘のように鳴り響く。
レッドカーペットは、まっすぐに会場へと続いている。
両脇には観客と記者たちが詰めかけ、熱気が空気を震わせていた。
ゴンタと一緒に歩く。
タキシードに身を包んだ彼は、少し照れくさそうに笑っている。
その笑顔は、協力隊から帰ってきた空港で見せた、
若い日のあの笑顔と重なる。
「争いは演劇の中だけでいい。その悲しみも葛藤も、表現するんだ。見た人たちが、現実では避けたいことだって、感じてくれるように。亜子、俺はそうしたいんだ。」
あの言葉が、今も胸に響いている。
ゴンタと一緒に歩く。
結婚して、子どもが生まれて。賑やかで、慌ただしい日々。
それでも、笑いの絶えない毎日だった。
老齢に達したゴンタが監督・主演をした
「サムライの時代」は、世界中で愛された。
彼の演技は、静かに、しかし確かに人々の心を揺さぶった。
その功績が認められ、今、アカデミー賞の候補としてこの場にいる。
レッドカーペットの上を、ゆっくりと歩く。
受賞できるかどうかなんて、もう関係ない。
この瞬間こそが、夢の証だ。
ゴンタと一緒に歩く。
スポットライトが、彼の肩に降り注ぐ。
観客の歓声が、まるで祝福の風のように吹き抜ける。
これからも、そうして歩いていきたい。
永遠は無理かもしれない。
でも、限られた一生を、共に歩くことはできる。
そして今・・・その一歩を、確かに歩んでいるんだ、わたし。




