宝箱とダンジョンクリア
「そういえば宝箱、開けてなかったね」
「集めただけですね」
「そういえばそうでしたわぁ」
「確かに! 開けなくていいんすか?」
「いや、開けるけどさ……じゃあ今から開けようか」
「わーいっす!」
「ちょっとまってて、キャラクターシートいじるから」
「え」
「え」
「え、いじれるんっすか??」
「ぼくはね。他の人のはいじったことないから知らないけど。〈天啓苛む邪悪の変数〉」
その言葉を唱えると、薄い半透明なボードにスクナが取っている技能が載っていた。
鍵開け、隠れる、投擲、目星、拳銃、こぶし、追跡、幸運、アイデア、応急処置。どれも満遍なく取られていてオールラウンダーといった感じだ。
そこから、拳銃(70)のうち、49を鍵開けに移動させて鍵開け(99)に。投擲(45)の中から19移動させて幸運(99)にささっと変えてしまうと、キャラクターシートを閉じる。
「さすが我らが父」
「素敵だわぁ」
「すごいっす!」
「いや、完全にズルだけどね。まあバレなければよかろうなのだ」
まず前提として。宝箱は鍵開けがないと開かないし、その中身も幸運値によって変わってくる。幸運値が高ければ高いほど良いものが、低ければそこそこなもの、という具合に。
スクナは杖の中から大量の宝箱を山にして取りだした。
ファンブルなど起こさず、後は流れ作業のように宝箱を開けまくり。良さそうな装備や道具は取っておき、他はどこかで売ることにした。とはいえ、装備も道具も良し悪しがわからないため、仕舞っておくかということになったのだが。
宝箱の中身は以下である。
魔石十九個、火の付与が付いた剣一振り、風の付与が付いた杖が一本、アイテム袋五つ、スキルジェムの「回復(特大)」「範囲魔法」が一つずつ。計二十八個だ。ブラックブックドラゴンの宝箱から「回復(特大)」が出たのは、ここが【回復系譜の小規模ダンジョン】だからだろう。とりあえずスクナの杖に宝箱から出たものを仕舞い直す。
魔石は、スクナがブラックブックドラゴンのものを食べた。他の十九個は喧嘩しながらも、他の三人で分けていた。といっても誰も譲らなかったため、砕いて三等分にしていたのだが。
不思議だったのは魔石の食感で、口にいれるとグミのように柔らかくなり。スクナはスパイシーな炭酸飲料、他は紅茶オレンジジュース烏龍茶、ミックスジュースに清涼飲料水、サトウに唐辛子、炭酸飲料など三人によると様々な味があったらしい。
「でも烏龍茶はなくないっすか」
「確かに」
「面白いわぁ」
「だから一つだけ早く飲み込んだんだ」
「だって食いづらいんっすよ!」
「わかったわかった、ダンジョン出たら美味しいラーメン食べに行こう。それで機嫌直せよ」
「わーい、やったっす!」
味の感想や雑談をしながらダンジョンを引き返そうとしたが、ブラックブックドラゴンが寝そべっていて見えなかった小さな洞穴に気づいた。
なんとはなしにそこに入ると、四人が全員入った瞬間。魔法陣のようなものが洞穴いっぱいに広がって光りだした。危険は感じないものの、一旦外に出ようとしたが、間に合わず。
起動した魔法陣によって、スクナたちは強制的に雪が吹きすさぶダンジョンの外へと放り出されたのだった。
「こんなポイ捨てみたいなの酷くない?」
「ひでえっす」
「我らが父にこの扱い、あり得ません」
「酷いわぁ」
ぽいっと雪の中に捨てられて、なんだか複雑な気持ちになったスクナは。ヨグを雪よけに、立たせ。召喚者のスマホで「ラーメン美味しい ホテル」と慣れた手つきで調べ。検索に引っかかったホテルに〈暗澹からの囁き〉で移動した。
満室だったらどうしようかと思ったが、幸い吹雪で予約キャンセルが殺到していたらしい。スクナたちは無事にホテルに泊まることが出来たのだった。
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