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 一方その頃。


「どうする? ぼくがやる? お前がやる?」

「我らが父のご随意に」

「うーん。じゃあダイス振って出目が低いほうがやろう」

「承知いたしました」

「あ、ほんとだ。頭の中にダイス出てきた。じゃあせーので数字言って」

「はい」

「せーの!」

「32」

「59」

「なんか……、高め安定って感じだね、お前」

「技能は全て60以上取っております」


 黒い花が開いたようなヴェールの下、冷えた美貌をドヤ顔に変えたヨグ。それをなんとも言えない顔をして見ていたスクナだったが、切り替えて恐竜の方をちらりと見る。

 仲間だったワイバーンが噴水のように血を吹き出しながら、死後もなお殴られているのを見て、逃げ出そうとしていた。

 いや、そのでかい図体でどうやって逃げようとしてるんだよ、とツッコミを入れたいスクナ。だって一歩ごとに地面が揺れるのに、それでバレないように逃げるとか、無茶がすぎる。

 普通に歩いて近づいていくと、スクナの身体の真横を太い尾が地面を叩き割る。浮いているから問題ないと思ったが、その尾の一撃で泥が服に跳ねた。暴風も起こったがスクナには関係ない。

 それよりも、服が汚れた。そのことに苛立ちを覚えた。

 しかし、それも許そう。

 だって、横目に見た尾は震えていたのだから。恐竜が振り返り、スクナに向かいあい。また大きく口を開けた。鳴き声でも発しようとしたのだろう。

 でもそれを、スクナは許さなかった。


「可哀想に、こんなに震えて……さあ、抱きしめてあげよう」


 大きく腕を広げたスクナに、自棄になったのか小さく鳴き声を上げ、突っ込んできた恐竜。

 穏やかな微笑みを絶やさないまま、スクナは呟いた。


「〈悪夢の抱擁〉」


 強制的に相手を瀕死状態に追いやるアザトースの技である。

 大きく広げた手から、腕から、全身からおぞましくも恐ろしい薄黒い靄が滲み出す。それがじわじわと広がり大きな腕のようになり、恐竜に触れると。一瞬でなくなる。恐竜の中に吸収されたのだ。

 見かけ上は何も変化がないのに、急になにかが変わった自分に驚いたのか。いや、錯乱したのか。恐竜が不自然に暴れながら、足をもつれさせる。恐竜には『転んだら手をつく』という、人のような考えはない。故に。

 足をもつれさせてしまえば、待っているのは転倒だけ。中身だけ瀕死状態に追いやられていて、転んでしまったのなら。後に待ち受けるのは死だけだ。

 何かを考えることも、死を回避することも出来ずに、本能で怯えながら恐竜は死んだ。


「呆気ないですね」

「元々あんまり戦う気なかったみたいだし、それが理由じゃない?」

「……我らが父よ、ドロップアイテム落ちましたよ」

「あ、ほんとだ」


 軽快な音とともに、そこには赤い鱗に小山と肉、魔石が残っていた。

 なんだか複雑そうに肉を見ながら、スクナは。


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