⑽ダンジョン攻略は準備が大事②
「数週間分の携帯食と、水筒と、緊急脱出ゲート、帳面と<魔力変換ペン>、あとテントと通信機と。これくらいかな。」
夕方、帝都の自宅に帰った二人は早速ダンジョン攻略の準備をしていた。
「着替えの方は良いのか? 期限がまさかの一年という長い期間になっておるし、清潔面にも影響が出るぞ?」
「その問題は大丈夫。魔導具<シャワー室>も入れてるからね。それに、ワープゲートで物資を輸送できるようにしてるし。」
「最近は何でもそろっておるなぁ~。ダンジョン攻略も楽になったのぅ。」
ラジエルは<シャワー室>を触りながら言う。この魔導具は稼働時以外はミニチュアのお風呂の椅子であり、それなりの広さでこれを置くとたちまちシャワー室になる優れものである。エネルギーは魔力で、濃度が高いダンジョンでは難なく使える。
「俺が数か月前に頑張って発明してみたものでね、今回のために魔力狂度60%までは耐えられるように改良したんだ。エネルギー効率もね。」
「お主がつくったのか!? すごいのぅ!」
「まだ商品化とかはしてないんだ、とりあえず特許は取っただけで、このダンジョン攻略が成功したら冒険者協会に相談しようかなって。」
七王はダンジョン攻略の方法も見ると言っていた。魔術師なら魔術に関連することを攻略中にするべきだろう。
「俺がつくった人生最高の発明といえるものは<シャワー室>と<虫よけ>かな?虫よけの方はちょっと魔獣の力が絡んでるから公表はしてないけど、マネできる人は数百年先以上だと思う。」
虫よけは、虫が物凄く宇宙一嫌いなルオの、虫対策として卒業前に作った疑似魔法である。これで3年前に<七王の読書会>に招かれてしまったのだが、ダンジョン攻略依頼を受けた今、これをつくっておいて心底良かったと思っている。
ダンジョンによっては虫型エネミーが発生したり、普通に虫などの節足動物が出てくることがある。こいつらのせいで気絶して攻略中断して、魔術師剥奪になるのはごめんである。
「我は連合本部のダンジョンサポートルームに行けば良いのじゃったか?」
「うん。ラジエルはそこで最悪1年間お世話になるかもしれなけど、本当にいい?」
ダンジョン攻略で1年は最長記録すればまだ短い方だが、あのモニターだらけの戦場は数か月いたが地獄であった。
「全然大丈夫じゃよ? ウィンデヘェルの言う通り我は戦闘力最下位の存在。一応知を司る身なら遠隔サポートの方が良いだろう。実はサポート職に興味を持っていての、なんとなく我にピッタリだと思うのじゃ。」
確かにラジエルは昨日の事で状況分析などに長けていると思っていたところだ。
「ありがとね。高難易度ダンジョンは、サポートなしでは攻略どころか命の危険にも関わるからね。自認コミュ障の俺にはありがたいよ。」
連合での知り合いはいるが、生憎誘える自信がない。
「そんなに褒められると、ニマニマで空に飛んでいきそうじゃ。」
ラジエルは自分の頭をなでながら体をくねくねと動かす。
(調子に乗ってヘマしないでほしいけど……。ラジエルは大事な時はちゃんとするってウィンデヘェルさんが言ってたっけ?)




