⑺ 七王からの提案
『一等星魔術師ルオ=ノレスよ、これを受け取るがよい。』
土星の老賢者の声が響き渡り(声だけで姿は七王の一人のウィンデヘェル以外見当たらない)、目の前に一枚の羊皮紙が現れた。
『そこに<本編>の内容が書かれてある。』
——先月ウィルベリー付近で発見された未開迷宮の攻略依頼について。——
「ダンジョン攻略ですか……。」
『その通り、そのダンジョンはゴールドクラスの冒険者でさえ手こずる難易度であり、一か月で十数人の死者が出た。かの砂漠の国にある<史上最悪の迷宮>の第二になってはならない。』
「それほどの災厄の可能性を秘めた高難易度ダンジョンに一魔術師である私が挑むのですか?」
ゴールドクラスの上であるプラチナクラスがいるはずだ。
「……成程。魔力狂度じゃな。」
今まで静かであったラジエルが口を開いた。
魔力狂度とは読んで字のごとく大気の魔力がどれほど狂っているかの指針である。20%を超えると魔狂石が発生し最悪の場合魔獣が誕生する危険性がある。
そして普通、ヒトにとっては猛毒である。たとえどんな武人でも無事では済まない。
『魔狂石を心臓とする魔獣の汝なら長期間でも何ともないだろう?』
「確かに、私にピッタリの案件ですね。」
(ダンジョンで長期滞在させるつもりか。相当階数があるんだな。)
『あなたは確か一度目の<読書会>の後日、実験として狂度40%越えの帝国領のダンジョン<タルタロス>に入ったと耳にしました。本件は狂度30%前後、そこまで難題ではありません。』
(あの一年間も知っているのか……。月の鍵主は連合のトップなのだろうか……。)
『ウィンデヘェルは例外として、通常七王の正体を探ることは禁忌です。身の程を知りなさい。』
「大変失礼いたしました。以後気を付けます。」
危ない、3年前もそうだが月の鍵主は規則に遵守している方で最も厳格である。(土星は、声は重いが好々爺な所がある。)
『話を戻します。期限は1年、それまでに舞台となるそのダンジョンを攻略し、あなたが魔術師として世に必要であることを私たちに証明しなさい。』
「かしこまりました。」
すると羊皮紙に鍵模様の印が押され、受注決定となった。
(1年か……。長いのか短いのか。)
『ではキマイラよ、健闘を祈る。』
『攻略楽しみにしてるで~。』
『攻略失敗もオモシロソウだね♪ 頑張ってね~。』
『全く、不謹慎な。<読了>派だが無事に帰ってくることを優先しなさい。』
『ようやく、終わったぁあああ~! 暇だから映画観に行こ♪ あ、昨日はホントにありがと。』
七王たちはルオに別れの挨拶をした後、<読書会>から去っていた。(とはいっても声だけなので本当に去ったかどうか分からない。)
『ルオさん。』
まだ帰ってなかった七王の一人がルオに話しかける。
(確か、この声と喋り方は代替わりした、木星の……。)
「貴方様は木星の鍵王でしたよね? 私に何か御用が?」
『はい、と言っても謝罪だけですが。』
(謝罪?)
ルオは思い当たる節が無く、首をかしげる。
『3年前の<タルタロス>での実験は、私の監督不足です。あのような事態になってしまい本当に申し訳ございません。』
「えっ、ちょっ!?」
『<タルタロス>はその危険性ゆえに皇族の許可なしでは立ち入り禁止としています。おそらく研究員が無断で行った実験です。失礼ながら声のみですが、不甲斐なき皇族を代表してお詫び申し上げます。』
(こ、皇族!?)
「あの、七王の正体の詮索は禁忌だと、月の方が……。」
『七王個別の許可があれば禁忌ではありません。先ほどは月の姫君の正体を詮索しかけた、許可の権利は彼女のみ。だから禁忌と言われたのです。』
「なるほど……。」
『改めて帝城で直々にお詫びを申し上げる日を取り決めたいのですが、残念ながらこの後所用がありますので、失礼します。ダンジョン攻略、貴方なら必ずできると信じております!』
こうして木星の鍵主は去っていった。




