(77) 閉幕②
「俺はウィルベリーに帰る。町長に報告すべき件もあるしな。」
「うん、色々ありがとう。ケガとかは大丈夫?」
カイはあばらも数本折れているのだ、どう考えても一番重傷である。
「? 痛くはないぞ?」
カイは首をかしげる。
「噓でしょ・・・。」
ルオはドン引きする。魔術が得意な妖精族の肉体の頑丈さは友好種の中では一番低い。いくら格闘術が得意なカイでも動くのも苦痛であるはずなのに。
「心配されるとクレーネと町長を思い出す。むずかゆい新鮮な気持ちだな。」
「ここからウィルベリーは遠いだろうから気を付けて帰れよ。」
「ああ、ルオも帰り道は気を付けろ。」
カイはスタスタと帰っていった。
「カイ君は守護者の一族だそれも銀の。アレくらいの傷で重傷ではないからね。」
ウィンデヘェルは小さくなっていく彼の後姿を眺める。
「守護者・・・。」ルオは知らぬ存在の名をつぶやく。
「この世界には色々と愉快なものが居るのだよ。君もそのうちの一人だろ?」
ウィンデヘェルはルオにウィンクをした。
「さて! ファミラ君とツェルカ君、そしてメラリア元隊長は私が責任を持って騎士団本部に送り届けよう。本部は確かルキニア小大陸だったよね?」
「正しくはルキニア聖国なんですが、その認識で合ってます。すみません、別組織であるあなたに苦労を掛けてしまって。」
ツェルカは「よいしょ」とメラリア元隊長を背負う。
(俺が捕まっていたのはやっぱ聖国だったのか・・・。敵対組織ではないけど、魔術師として聖国の地に行くのはあまり好ましくないんだよな。)
ルオは処刑前までいた牢でのことを思い出す。
騎士団は謎が多く本拠地も小大陸とだけ判明しており、小大陸そのものが聖国であるということはウワサでしか知られてない。
「ルオはこの後どうするの?」
ファミラはルオに問う。
「俺?俺は魔術師剥奪云々が・・・。」
「じゃなくて、今日の事!」
「そっちか・・・。えっと、どうしよ。今は帝都在住だけど、地理的には帝国領のルージュ子爵領付近だし、どっちかというとレクテ王国が近いな。」
「じゃあレクテに一泊するの?」
「そうなるかな、連合本部は亜空間にあるから。」
レクテ王国は貴族と庶民との差が小さい国で庶民派ホテルも安い割に充実している。外国に泊まるのが無難だろう。
「レクテに行くのじゃとぉおおおおおお!?」
ラジエルは目をまん丸にして驚く。まさかまた犬猿の仲がいるのか・・・。
「あそこはだめじゃ! あそこには不届き者の悪魔がおるのじゃ! ルオ君が危ない目に遭う!」
やっぱりか・・・。
「セラフィエルみたいなやつではないんでしょ?」
「ま、まぁアレほどやばい奴ではないが・・・。」
「だったらレクテに泊まるよ。前に初めて来たときは普通に観光できたし。」
「な!? すでにあの悪魔のナワバリに入っておったのか!?」
悪魔って・・・。レクテに堕天使がいるのかよ。
「ラジエルは固いなぁ~。確かにレクテには私の知り合いにして腐れ縁の大悪魔がいるけど、話は分かるやつだから、私もノレス君の意見に賛成だよ。宿泊費用のことは私が今さっき支払ったから、はい、これが部屋の鍵(210号室)ね。」
ウィンデヘェルはルオに鍵を渡した。
「分身術ですか・・・。」
ルオは高度魔術の名を口にする。
「ご名答。さ、それぞれの道に帰ろうか。」
ウィンデヘェルは指をパチンと鳴らすとワープゲートが現れ、ファミラたち獣ノ隊と共に入っていった。
「俺たちも行くか・・・。」
「あの悪趣味悪魔と会うのか・・・。ルオ君の将来が心配じゃ~。」
「そんなに仲が悪いのか。」
ラジエルはとぼとぼとルオについていった。




