(75) お前かよ
身体が一切動かすごとができない。というか魔獣の力もいつの間にか大人しくなっている。
「な、何が起きてるの!? まさか副隊長!?」
どうやら自分だけではなくファミラたちも同じ状態のようだ。
「セラフィエルではない。おそらくこれはあやつの術じゃ。スーパーナルシストな・・・。」
「スーパーナルシストでは無いよ。ナルシストであったのは昔の頃だし。今は謙虚なご隠居生活さ♪」
声の主が指をパチンと鳴らすと、身体が動くようになり前方に倒れかけ、「おっと!」とルオは右足を前に出して転倒を防いだ。
「みんなお疲れ様! ゴーレム化となった天使を倒してしまうとは! 想像以上の働きぶりだよ!」
ようやく声の主の方をみると、そこには紫の床に付きそうな長髪(床には何故か絶対に付かないように宙に数ミリ浮いている?)でいかにもお伽話に出てくる魔法使いのようなとんがり帽子とローブをまとった高身長の人物だった。
生物の方は男性なのか女性なのかよく判断できない。
「お前かよ。」ラジエルは静かに舌打ちをする。
「皆さん、お久しぶりです。序章と間章以来ですね! おや? もしかして私の事を忘れておりますかね? う~ん、私は第一部ではほとんど登場しない語り手として存在しているようなものですから、忘れられるのも当然でしょう。いや、しかし少し悲しいですね。」
その魔法使いのような人は空を、というかここにいる誰でもない誰かに向けて会話しているようだ。
「・・・あの~。」ルオが恐る恐る声をかける。ラジエルは後ろに隠れてルオの上着の袖をぎゅっと握っている。知り合いなのだろうか・・・。
「あら! いけない!つい語り手感覚でおりました!」ルオの声かあるいはもう一つの要因か、魔法使い?は頭の上に『!』のマークが飛び出て(新種の魔術?)ルオの方をようやく振り向いた。
「お久しぶりですね、ルオ=ノレス君♪ 魔術学園の卒業式以来ですかね。」
「卒業式・・・?」
ルオは卒業式のことを思い出す。しかし、思い出せるのは式の終わった後に元生徒会長に告白された大事件のみである。あの出来事のインパクトが大きすぎて他のことなど何一つ記憶に残っていない。
「すみません、どちら様ですか?」
「なっ、なんと! 私の事をお忘れですか!? 私は印象に残りやすい存在であるのに!」
魔法使い?は今度は頭上に『!?』を浮かべて、驚愕した。
「お気に入りに忘れられるとは、たぁ~いへん残念だったのぅ~♪」
ラジエルは魔法使い?を馬鹿にして大笑いする。
「知識くらいしか役立たない君には黙ってもらおうか。」
魔法使い?が手前でまるでラジエルの口をなぞるかのように指を回して、指をしまって拳を軽く握った。すると「むごごごっ!?」とラジエルの口が塞がった。
「腐れ縁の知り合いが黙ったところで、改めて自己紹介だ! 魔術連合の<金星の魔法使い>にして、魔術学園の学園長を務めるウィンデヘェル=レングミルだ! 君の卒業式に祝辞を述べたものだよ!」




