(74) 決着
前を見てなくて柱に激突してしまったカイも二人に加勢し、足止めを何とかしてくれている。
「ルオ君、準備は良いかの?」
「ああ! 3人のためにやるしかない!」ルオは右手を前に出す。
ルオは9年ぶりにキマイラの力を完全発動した。
「ぐっ!」右手が全方向から何か重いもので抑え付けられ、それを何とか落とさないように押しているようだ。身体にも電撃のような痛みが走る。
「大気の魔力の狂度上昇率は約20%! 凄いぞルオ君!ギリギリセーフじゃ!」
「ギリギリか・・・。もう少し・・・!」
ルオは気を引き締め制御に集中する。右手が震える。
「18%・・・。さすがに一魔獣で狂度を10%以下にするのは難しいか・・・。よし!我の出番じゃな!
<魔力よ、崩れかけの理に従え>。」
ラジエルの協力により、ルオの負担が和らいでいく。
『邪魔ヲ! スルナァアアア!』
三人が何とか両手を抑えていたが、ゴーレムから手がもう一本生え、その腕を刃物のような鋭利な形状に変えルオに襲い掛かる。
「!?」
ルオは咄嗟に避けたが数ミリだけ間に合わず、長い髪が肩まで切られる。切り離された髪は宙を舞い床に落ちていった。
「!? ・・・似合ってるぞルオ君!」
偶然?のイメチェンにラジエルは驚き、新たな容姿をほめた。
「散髪代はこの狂化魔力の塊でいいですよね!」
ルオは再び襲い掛かろうとするゴーレムに向けて、魔力弾を発射した。
ドォオオオオン!!!
『アアアアアア!!!』
ゴーレムに浮かび上がっていた謎の文字に亀裂が入り、鋼鉄の身体は崩れていく。
『コンナトコロデ! マダ終ワレナイ! セメテ、<キマイラ>ダケデモォ!』
崩れていく腕がルオをつかもうとするが、
「させるか!!」
カイが頭上から槍で、ゴーレムの頭を突き刺した。
ゴーレムはついに光の粒子となり消え去った。
「レイグ副隊長・・・。」
剣を鞘にしまったファミラはつぶやいた。2年間副隊長であった者だ。クローギヌ以前は仲間としてともにいたのだろう。
(こうなったのも俺のせいか・・・。)
ツェルカはメラリア隊長の応急処置を行っている。メラリア隊長(本名はフィレスティナっだったか)はたとえ生還したとしても、精神的なダメージが大きいため目を覚ますのは時間がかかるだろう。
「・・・手ごたえがあったが無かった。初めての体験だ。」
「奴は何とかゴーレム化が解かれた瞬間に何処かへ転移したのだろう。じゃが安心せい。魔獣の魔力汚染で相当効いておるはずじゃ。
とどめを刺したカイは槍をやさしく撫でた。MVPはカイで決まりだろう。骨折関係の治癒魔術は習得していないが、出血の方は何とかできるだろう。
ドクンッ!
「な!?」
ゴーレム(レイグ)撃退の突破口であった力の後処理がまだだった。
「しまった!忘れておったわ!」
ラジエルがルオの元に駆け寄っていくが鈍足すぎる。
ルオの体から禍々しい気が溢れ出てくる。
(くそ!やっぱこうなるのか!)
ルオは隠し持っていた破魔の短剣で自分の心臓の魔狂石を刺そうと、短剣を持つ両手を大きく振りかざす。
「ルオ!? ダメ!!」
ファミラも異変に気付くがもう遅い。
(怖いけど、誰も死なないだけマシだ!)
ルオは目をぎゅっと瞑り、心臓を!
「は〜い。ストップね。」
「「「!?」」」
全く知らない声が部屋中に響いた。




