(69) 断崖絶壁
レイグの言葉にルオは言っている意味が分からなかった。
「俺は魔獣であるけど(もう隠すことではない)、それを抜け出すことは出来ないってどういうこと?」
「言い方が悪かったみたいだね。君は人間と一緒に暮らすことができないって言ってるんだよ。」
「は?」「ルオが?」
「天使や堕天使たる悪魔と違って魔獣という魔法生物は狂ってるんだよ、何もかも。自分が存在できるのならなんだってする。大体の魔獣は人を喰ってるんだよ。分かるよね?」
「・・・。」
ルオの手は震えていた。それは怒りではなく、、
「怖いんでしょ?いくら特殊な受肉の仕方をしていても所詮は人喰らいの魔獣。家族や友人をいつか殺してしまうんじゃないかって。」
レイグはルオのもとにゆっくりゆっくと歩み寄っていく。
ルオは後ずさりしようとするが身体が動こうとしない。
「大丈夫。天使である僕なら君の恐怖も苦しみも無くすことができる。<黒血のビセア>だって起きてほしくなかったでしょ? 僕が起こそうとしてる<破空>ならそれができる。・・・さぁ、僕のところに・・・。」
「キモイ!!」
ザシュッ!
ルオの魔法にレイグの手が迫ったその時! ファミラの剣技でレイグの手を切断した。身体から切り離された手の一部は床に転がっていき、光の粒子となって消えた。レイグは切断されたことには気にせず、すぐさま防御魔術の術式を発動させる。しかし、
「っ!」後ろからカイが槍で術式を壊す。
パリンッ!
「くそっ!」レイグはバランスを崩す
「なんとなく情緒不安定なんですね!副隊長!」
ファミラはレイグがよろけた隙を逃がさず、剣技でレイグを攻める。
「アバターはいい加減黙ってろ!」
レイグは魔術で真っ黒な穴を生み出し、ファミラに目掛けて放った。
「ファミラ避けろ! よく分からないがアレは嫌な予感がする。」
「合点承知! って言ってももう間に合わな・・。」
ヒュッ!
ファミラの頬スレスレで棒状の物体が高速で通過し(ルオには一瞬見えた)、穴に吸い込まれ穴は消滅した。
「破魔の矢・・・。」
穴を消されたレイグはそうつぶやいた。
「手のかかるうちの後輩よりも、私の質問の方を優先してもらえないかしら? 隊員としての階級はあんたが上だろうけど、一応私の方が先輩よね? 一回くらい先輩としての弱い特権使わせてもらうわよ。」
暗闇から一人の騎士が現れた。ルオが部屋に入ってきた時からいたかのように。
「なんで・・・?」
レイグは現れた騎士に驚いていた。もう一人いたという事実ではない、現れた人物に驚いていた。
もちろんルオたちも驚いたがレイグ程では無かった。もしかしたら?という可能性があったためだ。
しかし、レイグは絶対にありえないであろう可能性であった。
「こういうの柄じゃないけど、助けに来たわよ。」
夜の闇に隠れるような弓を携えた少女だった。
「お胸断崖絶壁先輩!!」
「ツェルカ先輩って言え!!」




