(68) 予想外
ついこの間奥の部屋に居たというのに、初めて来た感覚になっている。気が付いたら奥に居たという状況だったから仕方が無いのだが。
「やっと来てくれた。」
聞きなれた声が響く。美声なのに鳥肌が立つほどの恐ろしさが含まれている。
「レイグ・・・。いや、セラフィエル・・・。」
本性を今まで隠し自分を騙した存在に怒りが出るかと思えば、疑問に近い感情が出た。
どうしてこんなことをしたのだろうと。
「怒らないのかい? てっきり扉を開けてすぐに身体強化の魔術で殴りかかるのかと思ったけど。」
「俺もどうして怒りが湧いてこないのかが分からない。・・いや、少し分かっている。この前の一件は自分が起こしてしまったことであるって。あの時抵抗していなかったら誰も人は死んでいなかった。」
「こらっ!」
「痛!!」
ファミラがルオの頭を軽く拳でぽこんと殴る。全く痛くも痒くもない。
「そういうのは止めてね。ルオは一応私の魔術の先生してるんだから。」
「ファミラ・・・。」
(そういえばそうだった。)
「夫婦喧嘩?」二人のやり取りを見てカイは言った。
「「違うから」」
「だー!話しが逸れた! ルオが怒らないなら私が怒るから! 副隊長! どうしてあんなことをしたのか白状してもらいますよ!」
「我の出番と台詞を奪うのでない!」
「あんたはお黙り。」
「むぅ~。」
ファミラとラジエル(ルオは彼?が居ることを忘れていた)はにらみ合った。
「ファミラとラジエルか・・・。うるさいな・・・。」
バンッ!!
「おっと!」「ぎゃぁあああ!」
レイグは二人に向けて魔術弾を撃った。ファミラはすっと避け、ラジエルは顔面にダイレクトアタックし衝撃でそのまま壁にぶつかった。
「ラジエル!?」
ラジエルは泡を吹いて気絶していた。
「魔法生物、特に天使はそんなことで消滅はしないよ。」
レイグはもう一発魔術弾をつくり、カイに撃った。
ガキンッ!
カイは無言で槍で魔術弾を斬った。
「守護者一族もいるのかよ。」
「あんとらる?」
「ルオ君は知らない方が良いよ。」
「俺も知らないのだが。」
「自分の家系のことぐらい知っとけ。」
カイも知らなかったことにレイグは自然にツッコんだ。
「くそっ、調子が狂う。銀の守護者ってやはり血は争えない一族なのか?」
「俺は争いというものが嫌いだ。」
「「(お前)カイは少し黙ってて。(ろ)」」
ルオとレイグはここだけ意見が合ってしまった。
「さて。二人くらい静かになったところで、ルオ君。君は魔獣であることから抜け出せると思う?」




