(65) 帰る者、逃げる者、手伝う者
「カノム、起きて~。」
「むにゃにゃ、母上ぇ~私は、おうぞくなのですから私にも職務を~。」
「カノムっ!」
ルオがカノムの頬を軽く引っ張る。「んむぅ!」と声を出しカノムは目を覚ます。
「あれ?私は何を・・・? 確かルオが私に嘘を・・。」
そう言いながらルオの方を向く。ルオはしまったと焦り、「えっと・・。」とどうすべきか考えだした。
「嘘?何のこと?多分夢でも見たんじゃないかな? カノム君、魔力の流れが乱れてたし。」
ギヌアがフォローに入る。
「そうなのですか?」
「そうなのよ。ツェルカ君のあの有様を直で見ちゃったからね、君はまだ子供だしかなりショックだったんじゃない?」
「確かに、あの光景が悪夢となっています。ですが!子供とはいえ私は地の隊長です!急に気を失ってしまい、大変ご迷惑をおかけしました!」
カノムがこの場にいる全員に謝罪する。(カイは地下に埋まったまま。)
(迷惑をかけているのは俺の方なんだけど。)
「私が気を失っている間について教えていただけませんか?」
「簡単にまとめると、レイグがなんかヤバいことしてるってことが分かったかな。」
ルオは遠回りない言い方で嘘はつかないようにした。
「ヤバいこと・・・。」
「うん、それでこれからどうしようかってなってる。俺的には騎士団長に報告すべきだけど・・・。」
「もう報告したよ~! 騎士団長に依頼されたときに<風のお香>貰ってたから。」
ファミラは服に留めてある緑色の宝石を見せた。
「今の団長は優秀だね~。今度遊びに行こうかな。」
ギヌアは嬉しそうに目を細めた。
「そういえば、カノム隊長に団長が言いたいことがあるんだって。」
「私にですか?」「うん。はい。」
カノムは不思議そうに通信機を耳に近づけた。
「な!?どうしてですか!? 私も関係者なのですよ!・・・。!? 兄上が!? ・・・そうですか、分かりました。今すぐ向かうと伝えてください。では、失礼します。」
カノムは静かに通信機をファミラに返した。
「何かあったの?」
ルオは友人に聞く
「・・・、私はここまでのようです。」
「え?」
「実家に帰るように言われたのです。」
「実家って、、まさか!?」
「はい、そのまさかです。一体の何の用かは分かりませんが、家族の言うことには従わないといけませんんので・・。」
カノムは悲しそうに身支度を始める。
「ルオ・・、おそらくあなたは今から件の遺跡に行くのでしょう。」
「うん、そだね。あいつを止めなきゃもっと犠牲が出るだろうから。」
「気を付けてくださいね。9年前のような思いはしたくありませんので。」
「うん・・・、分かってる。ちゃんと生きて帰るよ、俺はね。」
カノムは魔術で生み出した土の竜に乗り、空へ消えていった。
「残念だけど、私は遺跡に同行したくないわ。」
「ツェルカ先輩!? どうして?」
「馬鹿なの? 一度殺されかけた相手にまた会いたくないに決まってるでしょう! 身の安全が大事でしょーが。」
「そうなんだ・・・。先輩って変だな~。」ファミラはがっかりした。
「あんたの方がおかしいのよ。」ツェルカはファミラにツッコんだ。
「となると、戦力的に二人のみで向かうのか。」
「我がいるのじゃが?」
「ラジエルはノーカンでしょ?」
「ギヌア、このやろっ。」
ラジエルはギヌアの足ををポコポコと殴る。(しかしノーダメージ)
「じゃ、うちの犬を連れてくのはどうかしら?」
「いいのですか? 婚約者でしたよね?」
ルオはクレーネの提案に驚いた。
「婚約者=犬よ。そろそろ社会人としての振る舞いを教えなきゃならないからね。カイは座学がダメすぎるから実践で学ばないといけないから。あ、戦力なら大丈夫。<妖乱島>で一週間サバイバルしてたくらいの実力だから。」
「マジですか。」
「<ウィルベリーの野良犬>は強いのよ。」
クレーネは風の魔術でカイを引き上げた。引き上げられるカイは無表情のままだった。
「ありがとうございます。」
「命の恩人だもの。私がまだ解呪後の療養中で行けないから、妥協策よ。 カイ、迷惑かけたら<庭送り>にするからね。」
「了解した。ルオ、ファミラ、改めてよろしくだ。」
「うん、ありがとう・・・。」
ルオはクレーネを怒らせてはいけないと肝に銘じた。




